「プレイングマネージャー」とは、自ら売上を上げるプレイヤーとしての役割と、部下や組織を管理するマネージャーの役割の両方を持つポジションのこと。人材不足や成果主義の潮流、またVUCA時代において迅速で柔軟な意思決定がマネジメントに求められることなどを背景に、近年企業の中で「プレイングマネージャー」が増加している。本稿では、「プレイングマネージャー」の役割や求められるスキル、さらには多忙になりがちな「プレイングマネージャー」の働き方に生じるデメリットとその対策について解説する。
「プレイングマネージャー」の意味と役割とは? 必要なスキルとデメリット対策のポイントを解説

「プレイングマネージャー」の意味や管理職との違い

「プレイングマネージャー」とは、売り上げに貢献するための職務をこなすプレイヤーでありながら、部下の育成や管理、組織の指揮などのマネジメントを任される立場を指す。つまり、個人としての目標とチームとしての目標の両方を達成することが求められる。

◆「プレイングマネージャー」と管理職との違い

組織のマネジメントと個人の業績による貢献の両方を担う「プレイングマネージャー」に対し、「管理職」は、チームのマネジメントにおける責任者を指す。部下の目標管理や育成・指導、組織の方針決定、人材配置などを行う立場であり、自らが日常的に現場の実務を担当することは基本的にない。

「プレイングマネージャー」と「管理職」の違いは曖昧になりがちだと言えるが、注意しておきたいのが、労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかだ。

労働基準法第41条では、管理監督者を「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」と定義している。これは労働条件などにおいて経営者と一体的な立場を指し、管理監督者に該当すると、法定労働時間の枠が適用外となり、残業代は支給されなくなる。「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されるため、社内では管理職の扱いであっても、「プレイングマネージャー」としての業務内容によっては、労働基準法上の管理監督者に該当しない可能性もある。

もし、管理監督者ではないにもかかわらず残業代の支払いがない場合は、法的な問題となる場合があるため、社内で精査し適切な待遇をしているかを確認する必要がある。

「プレイングマネージャー」が求められる背景

近年増加している「プレイングマネージャー」のニーズが高まった背景を、詳しく見ていこう。

●景気後退に伴う企業の人件費削減
バブル崩壊以降の景気後退による経営難から、人件費の削減に踏み切る企業が増加し、その一環として、直接的に売り上げを上げることのない管理職の数が減少。結果、マネジメントを行いつつ現場の一員として売上に貢献する「プレイングマネージャー」の必要性が高まった。

●IT化、グローバル化などの社会の変化
テクノロジーの発展、グローバル化などの影響から、企業をめぐる社会の変動は激しく、経営にも意思決定の速さが求められるようになった。そのため、現場をよく知り、その実情をマネジメントに活かしつつ、経営陣の意向も理解した上で迅速に現場を動かすことのできる「プレイングマネージャー」の役割は重要性を増している。

●成果主義の広がり
景気後退や企業の業績悪化の背景から、コストのかかる年功序列型ではなく、成果によって報酬を決定する「成果主義」を取り入れる企業が増えてきたことも、自身も成果を上げて業績に貢献する「プレイングマネージャー」が増加している要因といえる。

「プレイングマネージャー」の役割と必要なスキル

◆「プレイングマネージャー」の役割とは?

プレイヤーとしての成果と、管理者としての成果の両方が求められる「プレイングマネージャー」。役割は多岐にわたり、下記のようなものがあげられる。

●個人の業績目標の達成
「プレイングマネージャー」の仕事として、売り上げの増加や顧客の獲得など、個人目標の達成も重要課題となる。担当する職務のスキルアップに努め、成果を上げる必要がある。

●チームの業績目標の達成
チーム全体の業績目標を達成するべく統率することも「プレイングマネージャー」に課せられている役割である。

●マネジメント
メンバーの業務の管理・監督、チーム全体のリスク管理などを行いながら、組織として成果を上げるための働きも求められる。

●人材育成
チームメンバーの得意分野と苦手分野を把握し、現場で力を発揮できるよう、それぞれに合った方法で成長に導くのも「プレイングマネージャー」の役割である。

◆「プレイングマネージャー」に必要なスキルとは?

「プレイングマネージャー」には、プレイヤーとして個人の成果を上げる能力と、マネジメント業務を行うための管理能力の両方が必要となる。役立つスキルを具体的に紹介する。

●コミュニケーション能力
「プレイングマネージャー」は、チームの方向性を決めて統率するとともに、部下の育成も担う必要がある。そのため、日頃からメンバーと積極的にコミュニケーションを取り、仕事の進み具合、将来のビジョン、物事に対する考え方を知ることが重要になる。

また、「プレイングマネージャー」は、チームメンバーはもちろん、他部署の管理職や取引先など、社内外のさまざまな相手と交流する機会がある。意見を明確に伝え、相手の話を柔軟に理解すること、また、より成果を得るための交渉力も必要となる。

●時間・タスク管理能力
「プレイングマネージャー」は、個人と組織、両方の業務を進めながら組織の管理も行うため、タスク管理能力が必要である。「どのタスクが重要かを見極めて優先順位を付ける」、「部下の能力を見極めて仕事を割り振る」といった業務は、「プレイングマネージャー」ならば必ず行う仕事といってよいだろう。

業務が多岐にわたる以上、時間管理能力も必須である。自分だけでなく、部下がどのくらいの時間で仕事をこなせるかの見極めもある程度必要だろう。

●バランス感覚
「プレイングマネージャー」は、プレイヤーでありながらマネージャーの役割もこなさなければならない。どちらか一方に偏らず、両立させていくために、バランス感覚は必須となる。

●成長意欲
「プレイングマネージャー」として、個人の目標と組織の目標の両方を達成するためには、職務に加えてマネジメントに関することも含め、多くの知識を身に付けなければならない。知識を得るためには成長意欲を持ち続けることが重要だ。「プレイングマネージャー」が積極的に学ぶ姿を見せることで、部下も自然と成長意欲を持つことが期待できる。

●指導力・リーダーシップ
「プレイングマネージャー」には、組織全体の目標達成が課せられている。部下の意欲を高め、能力を発揮してもらうためにも、指導力、リーダーシップは重要な能力といえるだろう。

「プレイングマネージャー」のデメリットと解決のポイント

プレイヤーとして成果を上げながら、部下・チームを管理する「プレイングマネージャー」は、一人二役をこなして組織の生産性を高める貴重な存在だ。しかし当然、配置におけるデメリットもある。解決方法とあわせて解説する。

◆「プレイングマネージャー」が抱えやすいデメリット

●業務を抱えすぎる
「プレイングマネージャー」になれるのは、プレイヤーとしても優秀な人物が多い。そのため、「他人に任せるより、自分が仕事をした方が早い」と考え、部下に仕事を割り振れない恐れもある。結果、「プレイングマネージャー」自身が業務を抱えすぎることとなり、ひいては組織全体の業務が滞ってしまう可能性がある。

●マネジメント不足になりやすいが、周囲から気づかれにくい
「プレイングマネージャー」は自身も売上を上げる必要があるため、プレイヤーとしての側面が大きくなりすぎて業務のバランスが偏ると、部下・組織の管理が難しくなる。また、もともとプレイヤーとしては高い能力を発揮していた人材でも、必ずしもマネジメント能力が高いわけではない。マネジメントの機能不足をプレイヤーとしての実務能力で補っている場合、マネジメント不足に気付かれにくく、その状態が続けば、チームがまとまらなくなってしまうことも考えられる。

●評価基準が定めにくい
自らも現場に立つプレイングマネージャーの場合、「自分の目標は達成したが、組織の目標は達成していない」という状況が発生することも考えられる。反対に、「組織の目標は達成したが、自分の目標が達成できなかった」という場合もあるだろう。そのようなとき、プレイングマネージャーの評価は非常に難しくなる。プレイヤーとマネージャー、どちらの評価を重視するか基準を設けておかなければ、評価が大きく異なってしまう可能性がある。

◆「プレイングマネージャー」能力を発揮しやすくするためのポイント

上記のようなデメリットをふまえ、「プレイングマネージャー」が能力を発揮しやすくするためのポイントを解説する。

●タスクを細かく洗い出して把握する
タスクが多くなりやすい「プレイングマネージャー」の仕事では、タスクを細かく洗い出し、他者に任せられるものや効率化できる部分を整理していくことが肝要だ。どのタスクにどれほどの時間がかかっているかを把握しておけば、タイムマネジメントもしやすくなる。

●業務配分の方針を決めて周知する
プレイヤーとマネージャーという2つの仕事を、常に均等にこなすことは難しいだろう。また、関わる相手の多い「プレイングマネージャー」は、さまざまな相手から仕事を振られやすい。仕事の抱えすぎを防ぐためにも、どの仕事に重点的に取り組むか方針を定め、周囲にも業務の割合を認識してもらうようにしたい。

●スケジュールに余白を作る
「プレイングマネージャー」の仕事は多岐にわたるため、突発的に発生する業務も多い。それらに対応するため、また他の仕事に影響が及ぶのを防ぐためにも、スケジュールに余白を作っておくとよい。

●自律的な組織環境を整える
「プレイングマネージャー」は、プレイヤーとして優秀な人材であることが多いため、マネジメント分野については不慣れな場合もあるだろう。対策として、研修など、会社全体で成長を支援できる制度が必要となってくる。また、チームの各メンバーが自律性を高めることは、「プレイングマネージャー」の管理業務の負荷の軽減につながる。マニュアルや情報の共有、メンバー一人ひとりの業務範囲や裁量の拡大など、自律的に働きやすい環境を整えることも「プレイングマネージャー」の業務の一助となるだろう。


「プレイングマネージャー」は、プレイヤーでありながらマネージャーとして部下や組織を管理するポジションであり、現場と経営をつなぐ存在であることからも、企業の中で重要な役割を果たしている。

ただし、多岐にわたる業務をこなす負担も大きく、業務過多や、水面下でのマネジメント不足に陥りやすいといったデメリットもある。また、適切な待遇を受けているかなど、運用上の法的なチェックも忘れてはならない。会社として、「プレイングマネージャー」の働き方の精査、研修でのフォロー、評価基準の設定などを行い、「プレイングマネージャー」が働きやすい環境を整える必要がある。
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