HRテクノロジーの進化などさまざまな要因を背景に、今や世界ではHR情報開示の流れが急速に進んでおり、それと同時に、世界初のHRM国際標準「ISO 30414」も大きな注目を集めている。ISO 30414は投資家から最低限の情報開示ガイドラインとして位置付けられ、今後ガイドラインに準拠したHRレポートが国内外で増えていくことが予想されている。そうした中、2021年1月28日に国内に先駆けて「ISO 30414」に関するオンラインシンポジウムが開催された。本記事では、「ISO 30414」を制定したISO組織(Technical Committee 260)主要メンバーのザヒッド・ムバリク氏による基調講演をはじめ、三井住友銀行 人事部 上席推進役 樋口知比呂氏、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授 岩本隆氏、HRテクノロジーコンソーシアム代表理事 香川憲昭氏によるパネル討議など、当日のシンポジウムの内容をお届けする。

ISO 30414の意義と世界のヒューマンキャピタルマネジメントのトレンドとは

【基調講演】
ザヒッド・ムバリク氏

HRが生み出す価値とそのためのフレームワーク

本日私がお話させていただくテーマは、「ISO 30414」です。これは人的資本管理の国際規格であり、社内外への人的資本報告のためのガイドラインになります。では本題に入る前に、まずはグローバル経済の観点から見ていきましょう。昨今主要なグローバル経済は製造業からサービス業へとシフトしており、グローバル全体で63%がサービス業を占めています。そしてこれからは、人材開発がHRにとって重要になります。製造業の場合、工場、機材、設備の投資に注力しますが、サービス業の場合、スキル、コンピテンシーなどに注力する必要があるからです。ここで一つ、アメリカの企業の分析を紹介しましょう。S&P500の企業における有形資産(機械、原料、設備など)と無形資産(人材の専門性など)の構成に関する調査によりますと、45年前には17%に過ぎなかった無形資産が、2020年には90%を占めるようになりました。まさにこれは人的資本マネジメントが重要になってきている証です。

続いて、HRの価値創造におけるフレームワークについて、HRのアナリティクスの父と呼ばれる方が書いた本をもとにお話したいと思います。仮にあなたが銀行員で、口座開設の決済を仕切る仕事をしているとします。業務のパフォーマンスを分析したい場合、口座開設のボリューム、コスト、開設にかかる時間を見るでしょう。そして実際に口座を開設したら、一体何人がその口座を持ち続けるのか、あるいは閉じるのかといった質、さらに顧客の満足度なども注視します。つまり収益やロスといったものは、こうした「ボリューム」、「コスト」、「時間」、「質」、「満足度」という5つの次元から判断されるのです。これら5つの要素がプラスであれば利益が創出でき、これらの要素がマイナスになると、減収、減益に繋がります。これは日用品、通信、エネルギー、ITなど、どの分野にも当てはまることであり、どの企業もこの5つの次元からパフォーマンスを見ています。そしてあらゆるHRの業務がこのフレームワークを使って変換できます。

このフレームワークには3つのバケツがあります。1つ目のバケツは、「効率性」。ここには先ほど申し上げたボリュームと時間、コストが入っています。2つ目のバケツは、「有効性」。ここには品質とユーザー満足度が入っています。そして3つ目のバケツは、「影響」あるいは「成果」です。ここで大切なのは、何にとって重要なのかということ。組織の中にはさまざまなステークホルダーがおり、例えば、投資家やCEO、CFOといった人たちは、プロセスにはあまり関心がなく、成果や結果に関心を持ちます。採用責任者は、採用した人材が優秀かどうかに関心を持ち、予算を管理する人は、コストや予算内で運用できているかに関心を持つでしょう。

この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。

HRプロ会員の方はこちらから

まだ会員でない方はこちらから

登録無料!会員登録された方全員に 「人材育成マニュアル」をプレゼント!

HRプロとは