はたしてAIは人間から仕事を奪うのか!? 衝撃的論文『雇用の未来』著者を招いたセミナーレポート

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

「AIの発達によって今後なくなる仕事がある」との予測が世界に波紋を広げた論文『雇用の未来』。その共著者であるマイケル・A・オズボーン博士を招いたセミナーが東京・渋谷にて開催された。登壇者の講演およびパネルディスカッションからは、急速にAI化が進むいま、働く人々や企業経営者に求められる心構えや取るべき行動が見えてきた。

世界中で急速に進むAI化。もはや、その波は止められない

2013年に発表された論文『雇用の未来(THE FUTURE OF EMPLOYMENT)』が世界に与えた衝撃は、いまだ記憶に新しい。いわく、急速に進化する人工知能(AI)はやがて人間の代替を務めるようになり、多くの人が職を失う……。さらに論文では“AIの発達によって10年後になくなる仕事”として、データ入力係や予約受付係といったすでに自動化されつつある職種だけでなく、スポーツの審判、運転手、モデル、レストランやカフェの従業員……など身近な職業も数多くリストアップされていたことから、大きなセンセーションを巻き起こしたのである。

この論文の共著者である英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士を招いたセミナー「雇用の未来〜AI(人工知能)がもたらす未来と人間との共存〜」が、2019年3月19日(火)、東京・渋谷のTECH PLAY SHIBUYAにて開催された。主催は株式会社エクサウィザーズ。「AIを利活用したサービス開発による産業革新と社会課題の解決」を事業内容に掲げるAIベンチャーだ。

はじめに登壇したオズボーン氏は、Amazonのレコメンド機能やウェイター/ウェイトレスに代わるタブレット型注文端末など、AIによって実現したサービスが我々の日常にすっかり溶け込んでいる現状と、アルゴリズムを用いた顔認証、Googleの「Contact Center AI」(サポートセンターへの電話にAIが応対するシステム)など、論文執筆当時よりもさらにAI技術が進化していることを示す事例を紹介。

また米アリゾナ州フェニックスで始まった自動運転車による配車サービス「Waymo One」や、患者に薬や食事を配送するロボットなど、まだ1つの町や病院といった限られた空間内ではあるものの「AI + 物理的なボディ」というシステムの実用化が進んでいることにも触れた。
こうしたAI進化シーンの最先端を歩んでいるのがイギリスだと胸を張るのは、セミナーを後援する駐日英国大使館のコリン・メーソン氏(国際通商部 テクノロジースペシャリスト)だ。イギリスでは、税制の優遇や規制緩和をはじめとするAI関連事業への支援やAI専門の博士(Ph.D.)を公費で育成する取り組み、ビッグデータやAIの研究を行うアラン・チューリング研究所への投資などが政府の施策として積極的に実施され、産学官の協力体制も確立。その結果、金融、ヘルスケア、広告など多分野で、またコアテクノロジーから応用技術に至る各段階で、多くのAIベンチャーが生まれているという。

いっぽう日本でも、情報通信研究機構(総務省所管)、理化学研究所 革新知能統合研究センター(文部科学省所管)、産業技術総合研究所 人工知能研究センター(経済産業省所管)といったAI研究機関の連携がスタートしている。その1つ、人工知能研究センターの辻井潤一センター長は「AIと人間の協働が必要」との主旨で講演。膨大なデータから規則性を抽出してモデル化することを得意とするAIと、観測できないものや限定的な情報からも暗黙知・経験則・規則性を導き出す人間、双方の得意分野を複合させて次のステップへ進む、という姿勢が求められるとした。

株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長・石山洸氏による講演は、日本におけるAI研究の意義を再認識させるものとなった。「高齢化によって労働人口は減少している。この問題を解決するためにAIを活用すべき。超高齢化が進む日本は、こうした取り組みの実験場になる」というのだ。また高齢化と直結する問題=介護についても言及。「介護関連の映像・行動データをディープラーニングで解析し、“より良い介護”のエビデンスを積み上げていくことで、介護初心者をAIでコーチングできるようになる」という取り組みを紹介した。

著者プロフィール

HRプロ編集部

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