ビジネスのニーズとアカデミアの知の架け橋に 「組織変革のためのダイバーシティ(OTD)研究会」が発足

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

今や多くの企業が掲げるダイバーシティ推進の施策。成功している企業がある一方で、「まったく効果が出ない……」と嘆く声も聞こえてくる。ダイバーシティを実現することで、人手不足を解消したい、イノベーションを創出したい、そんなニーズがあるにも関わらず、多くの企業でなかなか浸透しきれていないのは、なぜだろうか。それはビジネスのニーズとアカデミアの知見の間にギャップがあるからだという。そうした中、両者を繋ぐ役割を担うべく、「組織変革のためのダイバーシティ(OTD)研究会」が設立された。同会では、東京大学バリアフリー教育開発研究センターと連携し、ダイバーシティに関する学びの場を提供。すべての人が活躍できる組織作りの促進を目指していく。実際にどのような活動がされるのか、3月14日に開かれたキックオフ・カンファレンスを取材した。

ダイバーシティがビジネスの鍵になる

グローバル競争が激化し、変化のスピードが加速する現代において、企業が生き残っていくためには、既存の枠組みを捨て去り、新しいビジネスモデルを生み出すこと、つまりイノベーションの創出が不可欠である。そこで大きな鍵となるのが、異なる背景や価値観を持つ、多様な人材を活用するダイバーシティという考え方だろう。

近年その重要性が叫ばれているダイバーシティは、まさに企業や組織が競争力を高めていくための戦略と言えるだろう。実際この数年、多様化推進や女性活躍推進等に積極的に取り組む企業も増えてきており、ダイバーシティは少しずつ日本社会に浸透しつつある。だが一方で課題も少なくはない。ダイバーシティの重要性を認識しつつも、それを効果的な施策に繋げられないケースや、単に表面的・形式的な取り組みで終わらせてしまうケースなども見られる。そもそもダイバーシティの本質的な価値はどこまで正しく理解されているのだろうか。そこに正しい視点や認識がなければ、本当の意味での組織変革など起こり得ないのだ。

こうした中、ダイバーシティの学びを通じて組織変革の実現を目指す、「組織変革のためのダイバーシティ(OTD)研究会」が発足した。同会の目的は、女性・障害者・外国人・LGBTなどのマイノリティも含めた組織内のひとり一人が、活き活きとそれぞれの良さを活かし合うことで、企業が新たな価値を生み続ける――その後押しをすること。また今回の立ち上げには、東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センターの星加良司准教授、飯野由里子特任助教、西田玲子特任研究員も参加し、東大の持っているアカデミアの知と、ダイバーシティに関わる企業側のニーズを繋ぎ合わせる場にもなる。特に星加氏は、自らも全盲というハンディキャップを持つ当事者としての立場から、よりリアルかつ実践的な知識・知見をもたらしてくれるだろう。

去る3月14日に、東京大学本郷キャンパスで開催されたキックオフ・カンファレンスには、企業のダイバーシティ推進や人材開発、採用などに関わる大勢の方々が参加。盛大な雰囲気の中で、幸先のよい船出となった。以下、カンファレンスの内容の一部をご紹介する。

【キックオフ・カンファレンス第1部】ゲームを通じて多様性の不均衡を体感

第1部のワークショップは、参加者約80名と当初の想定よりも増えたため、急きょ2つの教室に分かれて行われた。まずは「ダイバーシティとは何か?」について、グループ毎に意見交換。その後、ダイバーシティの基本的な考え方として、「表層的多様性」(人種・民族、ジェンダー、言語、社会階級、年齢など)と「深層的多様性」(個性、知識、価値観・信念、教育歴・職歴など)について、ファシリテーターを務めた星加氏より説明があった。さらに星加氏は、ダイバーシティを考える際の重要なポイントとして力の不均衡の問題にも言及、「実は社会の中ではあらかじめ、あるものは非常に優位な位置に、またあるものは非常に不利な位置に置かれています。多様性の中にあるこの不均衡というものを踏まえて考えないと、ダイバーシティを活かした組織を作っていくことはできません」と語った。
続いて、世の中のほとんどの人が車椅子ユーザーであると仮定した、『車椅子の村の寓話』という動画を鑑賞。マジョリティの作る社会の障壁を理解し、公平性の観点からダイバーシティについて考えた。さらにワークショップのメインとなる、グループ対抗のクイズ&ギャンブルゲームでは、各グループが与えられた持ち点を賭けながら、合計3問のクイズに挑戦。ゲームは白熱し、多いに盛り上がるも、一方で多様性の中に含まれる立場の違いを疑似体験し、冒頭で星加氏が指摘した不均衡の問題についても考えさせられた。

このワークショップを通じて、マジョリティとマイノリティは数の問題ではなく、有利・不利の問題(力の不均衡の問題)であること、そしてマイノリティが困難な状態に置かれやすいのは、マイノリティ側に特殊な性質があるからではなく、マジョリティに合わせた社会環境が無自覚的に作られているからである、という視点を参加者全員が共有できた。

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HRプロ編集部

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