大きく変わるデジタル時代のリーダーシップ。 大規模調査から注目すべき分析結果が示された 「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2018」

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

世界最大手の人材コンサルティング会社、DDI社が1999年から実施し、リーダーに関する世界規模の動向調査として知られる「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト」。その最新版である「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2018」は、日本を含む世界54カ国、2,488の組織の人事担当者およびリーダーからデータを得るという過去最大規模の調査となった。HRプロでは、この調査を開始した当初から、調査、分析、執筆に携わったDDI社の上級研究員、リチャード S. ウェリンズ博士にインタビューを実施。デジタル時代のリーダーシップの重要性をはじめ、本調査から明らかになった最新のリーダーシップに関する世界および日本の状況や課題についてお聞きした。

「次世代リーダーの育成」はCEOの最優先課題

寺澤 本日はインタビューをお受けいただき、ありがとうございます。まずは、日本の人事の方々にDDI社とウェリンズさんについてご紹介いただけますか。

ウェリンズ DDI社は、1970年の設立以来、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としており、これらに関するサービスを、現地事務所や提携先を通じ、20カ国以上の言語で世界93カ国に提供しています。私はアメリカン大学で心理学の博士号を取得し、アメリカ国防総省で研究心理学者としてリーダーシップの研究を行った後、DDI社に入社し、グローバル調査やグローバル・マーケティングの責任者として仕事をしてきました。

寺澤 今回の「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2018」では、前回調査の約2倍となる世界54カ国、約2500社の人事担当者、約25,000人のリーダーからデータを得て、それを基に分析されたとお聞きしています。リーダーに関する調査としては世界最大規模ではないでしょうか。

ウェリンズ その通りです。今の時代、リーダーシップについて、世界中の企業の方々がそれだけ強い関心を持たれているということだと思います。

寺澤 確かにそうですね。「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2018」の調査結果を拝見しましたが、CEOに現在の課題を質問すると、回答数が最も多かったのは「次世代リーダーの育成」で64%にも達しており、次が「優れた人材の獲得/定着の困難さ」で60%でした。リーダー育成は、以前から変わることなくCEOの最優先課題であり続けているようです。

デジタルリーダーシップのコンピテンシーを定義

寺澤 今回の「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2018」の調査結果からは、リーダーシップに関する6つのメガ・トレンドが、次のように導き出されています。

・デジタルにより人材とその定義が再形成される
・データの力は無限に広がる
・組織文化はきわめて重要な位置を占める
・「本人任せの学習」は機能しない
・ポテンシャル・プールの対象は広がる
・人事(HR)は困難な前途をうまく進めるよう誘導する


 デジタル化があらゆるビジネスを変えつつある今の状況は、リーダーシップのあり方に大きく影響しているのではないかと思います。まずはデジタル時代のリーダーシップについてお話しいただけますか。

ウェリンズ 今回の調査で明らかになりましたが、デジタル化が進んだ組織とリーダーは、テクノロジーに精通していない同業他社よりも、すでに優れた業績を上げています。一方、テクノロジーに精通していない組織は、後れを取るリスクにさらされているのです。今や、AIやロボット、ブロックチェーン、3 Dプリンティングといったテクノロジーは、あらゆる国において、すべての業界のビジネスに大きな影響を及ぼしています。私は、5年後にはいわゆるリーダーシップとデジタルリーダーシップと呼ばれるものに差異はなくなっているだろうと考えています。それだけ、ビジネスにおいてデジタル変革が常に起こっているということです。「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2018」の調査では、このようなデジタル変革を牽引するリーダーシップ・スキルを、16のリーダーシップコンピテンシーに整理しています。その中でもデジタルの進歩に最も大きな影響を与えるコンピテンシーは、次の6つです。

・デジタル化を活用したリーダーシップ
・慣習にとらわれず変化に対応する「適応力」
・変化に対応するための新しいアイデアを実現させる「戦略実施の推進」
・縦割り組織の壁を取り払い、一丸となって問題を解決するための「緊密な協働」
・デジタルに精通した「将来の人材の特定と育成」
・多様な視点から考えをまとめる「全方位型思考(360度の思考)」


 私たちは、16のコンピテンシーの重要度とリーダーの準備度を、「自社はデジタル変革において初期/中途/後期のどの段階にあると思いますか」と尋ねることによって測定しました。その結果、デジタル変革が進んでいる企業には、この6つのコンピテンシーを持つリーダーが多く存在するという相関関係が見られたのです。しかし、残念ながら、グローバルのリーダーと日本のリーダーの回答を比較すると、日本のリーダーはこれら6つのコンピテンシー全てにおいて後れを取っています。
寺澤 日本の多くのリーダーについては、デジタルのリテラシーそのものが高くない傾向があることは従来から指摘されていますが、他にも、デジタルの重要性の認識や、大きな変化にさらされながら意思決定をする経験が必ずしも十分でないということも関係があるでしょうか。

ウェリンズ そうですね。ただ、日本人のリーダーに限らず、世界的に見ても、まだリーダーたちがデジタルマインドセットをもってリーダーシップを発揮しているとは言えない状況です。デジタルリーダーというと、とかくデジタルリテラシーが高いことや、デジタルエキスパートであることが必要だと誤解されがちですが、そうではありません。真に問われるのは、デジタル化によって何が脅威になるのか、何が可能になるのかといった、ビジネスに与える影響を理解でき、予測できるかということです。ですから、デジタル化を活用したリーダーシップ、全方位型思考という2つのコンピテンシーが最も重要になってくると考えています。

この後、デジタル時代のリーダーに求められるもの、次世代のリーダー育成、人事部門のリーダーシップにおける課題などについてもお話を伺っています。続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。


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著者プロフィール

Richard S. Wellins, Ph.D. Senior Research Associate, DDI

DDIのグローバル調査やグローバル・マーケティングの責任者として、35 年間務め、現在は、HR.com、DDI、EY で上級研究員として活躍中のリーダーシップ分野の第一人者。近年刊行された『Your First Leadership Job(世界基準のリーダー養成講座)』をはじめ、6 冊の書籍を執筆。世界各地で開催される主要な会議で講演を行い、これまでに50 以上の記事を発表。『The Wall Street Journal』、CNBC、『Fortune』、BBC に寄稿。

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