社会人は業務経験を通じて成長していきます。また、経験を通じて成長するためには、“他者”という触媒が欠かせません。とはいうものの、単に他者との接点を増やすだけでは、意味がありません。若手・中堅社員が成長できる“かかわり”とは、どのようなものなのでしょうか。また、そうした“かかわり”を育む組織は、どうすれば作れるのでしょうか。国内企業37社の若手社員2,304人への定量調査結果をもとに、周囲とのかかわりを通じて部下を成長させる方法を説明します。
なぜ部下が育たないのか

ケース(前編)

和田実は、ある製造業の生産管理部門のマネジャーである。
生産管理の仕事は、生産スケジュールを作成し、スケジュール通りに生産が進むよう、ヒト(作業工数)、モノ(部材の調達)、カネ(生産原価)をコントロールすることである。そして、この企業の生産管理部門には、製品特性で分けられた3つの課がある。和田はそのうちの1つの課を任されている。
昨年マネジャーに昇格した和田は今年で33歳であり、出世がかなり早い方である。能力も高く、これまでいくつもの困難を、難なく乗り越えてきた。

和田には部下が3人いる。1人目の部下は元木英介で、今年で30歳になる。優秀な社員で、生産管理業務にはかなり精通している。しかし、入社して5年目ぐらいまではぱっとしない存在だった。もがき苦しみながらも徐々にコツをつかみ、今ではなくてはならない存在になっている。周囲からの信頼も厚く、2~3年後にはマネジャーに昇格すると目されている。
2人目は、入社4年目で25歳の北村孝太である。そろそろ独り立ちをしてもらいたい頃である。北村が入社した4年前はちょうど業績が悪く、採用が極端に絞られていた。技術や製造にはそれなりの人数が配属されたが、生産管理部には北村1人しか配属されなかった。そういう意味では、貴重な人材である。
そして最後は、22歳の岡田真治である。今年入社した岡田には、サポート的な業務をしてもらっている。なんでもそつなくこなして、物覚えも早い。
生産管理部の組織はフラット化されており、この3人の間には上下関係はない。和田の下では、3人は対等な立場であり、お互いに頼ることはない。

部下3人の育成は、すべて和田に任されている。
元木はまったく手がかからない。上司が教えることはほとんどない。また、岡田にもまだ手がかからない。それほど複雑なことをさせていないからだ。
しかし、北村には少し苦労している。マニュアル的には対応できない業務や、イレギュラーな対応も、北村には期待されている。和田もできるだけ細かいノウハウを教えているが、なかなかコツをつかんでもらえない。例えばスケジューリングでは、過去の類似の製品をベースにすることだけでは立てられない。製造部門や技術部門の負荷状況を勘案することも必要である。毎年10月から11月にかけて生産が重なることが多いので、特に注意しなければならない。あるいは部材の調達タイミングについては、A社とB社から納期を先延ばしして欲しいという要望がくることが多いため、納入日を少し早く設定するとともに、進捗確認の電話を適度に入れることなどというちょっとした注意点なども、北村に一つひとつ教えた。

北村は覚えが悪いわけではない。和田に教えてもったことは、すぐに吸収する。しかし、教わったやり方では対応できない事態に直面すると、ミスが増える。しかも、同じミスを繰り返す。なかなか視野が広がらず、視点も高まらない。基本的な業務はできるものの、トラブル対応となるとまったく動けなくなってしまう。トラブルにはトラブルの数だけ解決方法があり、さすがに和田も、そのすべてを教えることはできない。

和田のやり方には、どんな問題があるのか。どのような育成スタンスに変えればよいのだろうか。

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部下育成は、マネジャーにとって重要な業務の1つです。しかし、部下の育成が得意だというマネジャーは少数派でしょう
どうすれば効果的に部下を育成することができるのでしょうか。それを考えるに当たっては、社会人はどのように成長していくのかを知ることが欠かせません。そこで、調査結果を踏まえて若手・中堅社員の成長要因を整理した上で、ケーススタディを基に考えていきます。

社会人の成長には経験が必要であり、経験から学ぶために...

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