2020年以降の新卒採用の多様化時代を占ううえで、押さえておきたいキーワードをピックアップする。
●通年採用
一般的には「新卒・既卒にかかわらず、年間を通じてエントリーを受け付ける」というスタイルとして認識されている方法論。就職活動の時期がずれてしまう留学生や、いったん就職したものの短期間で転職を志望する“第二新卒”などに対応しやすい。事業の進展度などに応じて必要な人材を採用できるメリットもある。ただ、企業によってとらえ方は様々で、「いつからでも活動を始められる新卒採用」と考えている企業が少なくない。
●インターンシップ
現場での職業体験。企業にとっては採用候補者の確保、優秀人材の発見、認知度アップなど、学生にとっては業界・企業の研究、社風の把握など、双方にとってミスマッチの回避といったメリットがあるとされる。ただ、現在では、実質上の採用活動になっているケースが多い。HR総研による各種調査では以下のような傾向が明らかとなっていて、インターンシップによる採用の活発化と早期化がうかがえる。
[企業側](※3)
・2021年卒採用でより重要になる施策として46%の企業がインターンシップをあげている
・8~9月のサマーインターンシップが激増
・大半の企業が複数回のインターンシップを複数の拠点で実施
[学生側](※4)
・95%の学生がインターンシップに応募
・インターンシップ参加後、正式に応募した企業から、文系52%、理系64%の学生が内定を取得
●採用オウンドメディア
企業が独自に開設する採用情報を発信するWebメディア。就職ナビや採用ホームページとは違い、ターゲットは就活期の学生だけではなく、採用に関心のあるすべての人たちになる。社員の働き方、各事業部・事業所の実際の様子、従業員のキャリア形成パターン、育成の実際、ダイバーシティや働き方改革への取り組み、社員のコラム、インタビュー記事など、多彩なコンテンツとなっていることが多い。
●ダイレクト・リクルーティング
応募者の中から選考するのではなく、「欲しい」と思える人材に対して企業側から能動的に接触する採用活動。ミスマッチの回避、個別最適なアプローチが可能といったメリットがある。新卒採用においても、学生が自身のプロフィールを登録し、それを見た企業が「面接に来ませんか」などと連絡する『OfferBox』(株式会社i-plug)、『キミスカ』(株式会社グローアップ)など“逆求人型サイト”が増え、重要な就活/採用手段として存在感を高めている。
●リファラル採用
「リファラル」とは紹介・推薦を意味する英語で、「リファラル採用」は文字通り自社の社員やその人脈を通じ、人を紹介・推薦してもらう採用手法のこと。アメリカでは主流の採用手法で、近年日本でも活用する企業が増えている。求人サイトや人材紹介などのサービスを利用しなくて済み、採用コストを削減できる。また、社風や仕事内容を理解した社員が、自社に合った人材を紹介することにより、企業や仕事と候補者のマッチング精度を高められるほか、定着率の向上や内定辞退率の低下も期待できる。企業のリファラル採用導入をサポートするサービスとしては、『Refcome』(株式会社リフカム)や『MyRefer』(株式会社MyRefer)などが挙げられる。
●オムニチャネル採用(採用マーケティング)
もともと「オムニチャネル」はマーケティング用語。実店舗やECサイト、SNSなど複数の販売チャンネルを用意し、各チャンネルの情報(ユーザーの嗜好、購入パターンなど)や在庫を統合・連携して管理することで、より効果的な販売戦略を実現する手法。採用活動にもマーケティングの考え方を取り入れ、自社サイトからの応募、就職ナビサイトからの応募、インターン参加者、逆求人型サイト経由でのオファーなど、オンライン、オフラインのあらゆるメディア、セミナー等での接点をつくり、計画的に複数のチャンネルを統合して採用活動に結び付ける手法が注目されはじめている。
※3 HR総研:「2020年&2021年新卒採用動向調査(6月)」結果報告【2】
※4 HR総研×就活会議:2021年卒学生の就職意識調査結果報告【1】