「女性活躍推進法」(正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)は、女性が職業生活で活躍することを目的とした法律で、2015年8月に成立、2016年4月1日に施行されました。「職業生活での活躍」が目的のため、企業に対し、女性活躍のための様々な対応を義務付けています。今回は、「女性活躍推進法」の概要を解説します。法律制定の背景や企業の義務などの全体像を一緒に押さえましょう。
【女性活躍推進法ガイド・1】さらなる法改正も検討中。まずは目的や企業の義務など“概要”の再確認を

「女性活躍推進法」の目的・背景

日本では、職場において女性の力が発揮できているとは言えない状況にあります。女性の就業率は上がっているものの、就業を希望しているものの働けていない女性も数が約156万人(2023年)いるとされており、出産を機に離職を余儀なくされた女性も未だ一定数存在しています。

また、出産・育児を終えて再就職する場合には、フルタイムではなくパートタイムでの復帰になるケースも多い状況です。管理職の女性比率の低さも1割程度にとどまり、国際的にも低い水準にあります。

日本の人口減少による労働力不足、生活の多様化やグローバル化といった社会の変化に対応するためには、女性が職場で活躍できるようにすることが重要です。

そんな中、第二次安倍内閣で、「女性の力が最大限に発揮されると多様な価値観や創意工夫をもたらし社会全体に活力を与える」と女性の活躍推進が日本の経済成長戦略の主要施策の1つに掲げられました。これらの背景により、2015年に「女性活躍推進法」が成立、2016年に施行されたのです。

働く上で女性の様々な機会を保障する法律には「男女雇用機会均等法」もあります。この法律の主眼はあくまで均等な機会を保障したものであり、女性に対する従来からの慣習や価値観、家事・育児等の負担を前提にした女性活躍という観点も含まれてはいるものの、限定的であると言われています。

一方で、「女性活躍推進法」では、女性が妊娠、出産、育児、介護をはじめとする家庭に関する事由でのやむを得ない離職が多いことを踏まえた上で、女性が活躍できる環境整備を基本原則にしている点がポイントです。

実は、「女性活躍推進法」は期限のある時限法と呼ばれるもので、2026年3月31日に失効する法律です。しかし、2025年3月15日現在、「女性活躍推進法」の10年間の期間延長や、内容の拡大が盛り込まれた法改正が検討されており、改正案が成立すれば、より女性活躍のための施策が盛り込まれる見込みです。本記事では、あくまで現行の内容のみを取り上げます。

「女性活躍推進法」による企業の義務

さて、「女性活躍推進法」では、企業に以下の対応を義務付けています。

(1):自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
(2):(1)を踏まえた一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部への公表
(3):一般事業主行動計画を作成した旨を労働局へ届け出
(4):女性の活躍に関する情報の公表(公表項目のリストの中から選択し公表)


企業規模により義務化されているものが異なるため、以下にまとめました。元々はすべての項目が常時雇用労働者301人以上の事業主に対してのみ義務付けられていましたが、2022年4月1日施行の改正法により、義務化の対象が拡大されています。
「女性活躍推進法」による企業の義務

「女性活躍推進法」による認定制度

「女性活躍推進法」では、「えるぼし」「プラチナえるぼし」という認定制度が設けられています。

「えるぼし」認定を受ける前提条件は、前述(1)~(3)の状況把握から一般事業主行動計画の策定・労働局への届出までを行っていることで、その中でも女性の管理職比率や採用倍率の男女差など、一定の数値基準をクリアしている企業が申請により認定を受けられます。

そして、「えるぼし」認定を受けている企業の中でも、女性活躍の取組み状況が優良な企業が「プラチナえるぼし」認定を受けることができます。2025年1月末時点で「えるぼし」は3,307社、「プラチナえるぼし」は72社が認定を受けていると公表されています。

いずれの認定も、認定を受けると以下のようなメリットがありますので、企業イメージの向上、優良人材の確保等にも寄与するでしょう。

●厚生労働省のホームページで企業名が公表される
●認定マークを自社商品、名刺、広告、求人票等に利用することができる
●各府省での公共調達等の際に加点評価になる


いかがでしたか。職場での女性活躍推進は、少子高齢化、労働力減少の進む日本では不可欠と言えるでしょう。「女性活躍推進法」に定められた義務をきっかけに、男女共に活躍できる職場をつくっていきましょう。
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