2030年のありたい姿を「事業や人材を創造し続ける総合商社」と定める双日株式会社では、データドリブンな人的資本経営の実現に向けて目指す方向や優先課題を人材KPIとして設定し2021年7月に社内外に開示した。会社を動かすためには社内の理解浸透・共感を得ることは重要であり、可視化ツールを用いてリアルタイムでの進捗開示を進め、データに基づいた対話を促進させている。本講演では、その取り組みで第8回HRテクノロジー大賞の『大賞』を受賞した双日株式会社 人事部部長 小倉 茂氏が、人材データ活用に関する具体的な取り組みなどを紹介する。後半には同賞の審査委員長を務める慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授 岩本 隆氏とのパネルディスカッションも行われた。

第8回 HRテクノロジー大賞『大賞』

双日株式会社

「データ×対話」を重視した人的資本経営の実践
~可視化ツールを活用した双日の挑戦!~

価値創造モデルに沿った人事施策を展開し、人材KPIを明確に設定・開示することで、目指す経営戦略の実現を推進。デジタルHR推進室の新設による、データドリブンな人事推進体制の整備や、可視化ツール”人事総合表”を用いたリアルタイムでの人材KPIの進捗把握等に取り組みました。これによりKPI達成に向けた主体的なアクションを促し、女性総合職の海外・国内出向経験割合や、男性の育児休暇取得率・取得日数などのKPIにおいて明確な向上が見られるなど、総合的に優れた取り組みであると高く評価されました。

プロフィール

  • 小倉 茂 氏

    小倉 茂 氏

    双日株式会社
    人事部部長

    1992年に日商岩井株式会社(現 双日株式会社)に入社、自動車第二部に配属以降、海外の自動車ディストリビューター事業を担当。1998年から2005年の7年間半マレーシア駐在を経験し、2011年から2015年にモスクワ・デュッセルドルフ駐在、2016年から2018年にマニラ駐在と、主に海外事業会社経営を歴任。2018年に人事総務部 副部長、2020年に自動車本部自動車第三部 部長に就任、2023年4月より人事部部長として人材戦略をリードしている。

  • 岩本 隆 氏

    岩本 隆 氏

    慶應義塾大学大学院
    政策・メディア研究科特任教授

    東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。 日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)特任教授。 KBSでは産学連携による「産業プロデュース論」「ビジネスプロデュース論」などの研究を実施。2023年4月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科講師。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授。山形大学では文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラムの事業プロデューサーとして山形地域の事業プロデュースを統括。2023年4月より山形大学学術研究院客員教授。2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科では「SFC 地域イノベーション共同研究」に従事。

「データ×対話」と「人材KPI」を重視した双日による人的資本経営の取り組み

双日の「人的資本経営の考え方」と「人材データ活用の具体的な取り組み」
双日株式会社 人事部部長 小倉 茂氏

データをもとに、より経営・現場から「共感・納得感」を得られる取り組みを開始

本日はデータを活用した双日の試みの一部をご紹介させていただきます。当社では従来、人事戦略や施策を考えるうえで、勘、記憶、経験を頼りにしてきた場面もありましたが、客観的データを読み解いて、より経営・現場から共感・納得感を得られる取り組みを始めました。人事部内にデータを扱う専門組織を設置し、社内で縦割りで管理されてきた人材データに横串を刺し、外部を含む多様なデータと掛け合わせ、実態をデータから多角的に見る取り組みを実践しています。課単位で組織データを可視化、課長がリアルタイムでその情報にアクセスし実態を把握することで、現場での対話の質向上に繫げています。また、経営戦略と連動しながら、価値創造に資する人材戦略を推進すべく、価値創造フレームワークに沿った人材KPIを設定し、人事施策の浸透度や効果を定量的にモニタリングしながら人づくりを実行しています。

本中期経営計画の人材KPI策定過程においては、双日が目指す方向性と現状のギャップ、2030年に向けて取り組む優先課題を経営と時間をかけて議論し、経営戦略、事業戦略と一体となった人事戦略とアウトプット(KPI)やアウトカムの設定に努めました。引き続きアウトカムの解像度を上げ、より効果的なKPIの見直しに繫げていくことが今の課題です。

また、激しい外部環境変化や浸透状況に応じて柔軟に見直し可能な動的KPIとしており、サーベイで調査した社員の声や現場への施策浸透度を定量的にモニタリングし、改善につなげるサイクルを実施しています。KPI進捗状況は、半期ごとに取締役会や経営会議へ報告するとともに、社外取締役を含む役員研修や管理職研修において議論・対話の重要テーマとして活用しています。
「データ×対話」と「人材KPI」を重視した双日による人的資本経営の取り組み

この後、下記のトピックで、講演録が続きます。
続きは記事をダウンロードしてご覧ください。

【講演】
双日の「人的資本経営の考え方」と「人材データ活用の具体的な取り組み」
双日株式会社 人事部部長 小倉 茂氏

●多様性を活かす「人材KPI」を設定
●「エンゲージメントサーベイ」から読み解く、双日らしい企業文化

【パネルディスカッション】
「データ×対話」を重視した取り組みの現場と得られた成果
双日株式会社 人事部部長 小倉 茂氏
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授 岩本 隆氏(ファシリテーター)

●データ活用のきっかけは「非財務情報の開示」や「経営層との対話」
●データやデジタルを「社員同士の対話」にうまく活用したい



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