障がい者雇用を進めようとしているのに、応募がない……という状況は、採用担当者にとって大きな課題です。働きたい障がい者はたくさんいるのに、なぜ自社には応募がないのかと不安になると思います。「給与などの待遇が低いことが原因ではないか」「知名度がないから応募がないのではないか」と考えている担当者も少なくないかもしれません。本稿では、思うように障がい者採用が進まないときに、採用活動を改善するためのポイントについて見ていきます。
障がい者採用に応募がないときに見直すべきポイント3点を解説

求人票に具体的な業務内容を記載する

障がい者が求人情報を知る機会として最も多いのは、ハローワークに提出する求人票です。就労を希望する障がい者のほとんどは、ハローワークで求職登録をおこなっています。そのため、最も求職者の目につきやすいのが求人票だといえます。採用に難航している場合、この求人票を見直すことが大事です。

障がい者の業務内容として多いものは、「事務」や「事務補助」があります。しかし、事務や事務補助といっても、求められる業務内容には、それぞれの企業でかなり違いがあります。データ入力や資料整理などの定型的な業務が中心の企業もあれば、総務部などで、その時々の状況に合わせた対応や業務を求められる企業もあります。

求人票を出す企業側としては、いろいろな業務に対応してもらうことがあるかもしれないと、「事務補助」のように大きな括りで業務内容を提示するほうが都合がよいかもしれませんが、これは応募する側からすると、実際にどのような業務を任せられるのか分かりにくく、「自分が応募してもよいのだろうか」と迷わせてしまうことがあります。そのため、業務内容が事務や事務補助である場合は、主にどのような業務を担当するのかをあわせて記載しておくとよいでしょう。

事務的な業務では電話対応が求められることがありますが、電話対応と一言で言っても、業務内容によって求められる能力に大きな違いがあります。例えば、外部からの問い合わせを含め会社の代表番号への着信に対応するような電話対応もありますし、内線の取り次ぎが中心の電話対応もあります。内線の電話対応であれば、業務内容がある程度想定されるので対応しやすいかもしれませんが、外部からの様々な問い合わせへの対応になると、より臨機応変さが求められるでしょう。このように、職場で求められる事務的なスキルがどの程度なのか想定できるような情報を記載すると、応募者は実際に働くことをイメージしやすくなります。

また、これは障がい者求人に限りませんが、大手企業や有名な企業の求人と比較すると、中小企業の求人はどうしても埋もれがちです。たしかに、待遇面などでは大企業のほうが整備されていることが多いですが、中小企業では業務や制度を柔軟に対応しやすいという強みもあります。勤務時間やテレワークの導入など、働き方に関して相談に応じられることや、職場の雰囲気を詳細に伝えることで、自社の魅力を効果的に伝えることができます。就職を希望する障がい者の中には、「理解ある職場で働きたい」というニーズも多いので、このような対応が可能である場合には求人票に記載するとよいでしょう。

最近では、テレワークを希望する求職者も増えています。テレワーク勤務が可能であれば、場所を問わずに採用ができるので、地方在住者や通勤が難しい障がい者からの応募も受けやすくなり、採用枠が広がります。リモート業務が可能であれば、テレワークの可能性も考えていくことをおすすめしています。

新型コロナをきっかけにテレワークを実施している企業では、「ストレスの少ない職場環境が作りやすい」「情報の整理がしやすい」といった理由で社員からの好意的な反応があったため、現在も導入を継続しているという企業は多いです。

「ストレスを感じやすい」「疲れやすい」という特性がある人にとっても、通勤や職場の対人コミュニケーションにおけるストレスを減らすことができます。また、予期しないような場面で指示を受けたり、同時に複数の業務を振られたりすると、マルチタスクの苦手な障がい者にとって仕事の内容が理解しづらいことがあります。しかしテレワークでは、事前に打ち合わせの時間を決めるため、情報を受け取る準備がしやすくなります。加えて、メールやチャットで文章化されて入ってくる情報は、自分のペースで理解しやすく、同時に情報が入ってきたとしても順番に処理しやすくなると感じる人もいます。これらのことから、障がい者にとって情報の整理がしやすい環境といえるでしょう。障がい者雇用におけるテレワークについては、参考リンク記事で解説しています。

障がい者の訓練機関や学校にも求人を周知する

ハローワークに出した求人票は、ハローワークのサービスを活用している求職者が閲覧します。また、障がい者の就労支援をしている支援機関のスタッフも、障がい者に紹介できる案件がないかを確認していることが多いです。しかし、たくさんの企業が求人票を出しているので、目に止まりにくいこともあります。そのため求人票を作成したら、ハローワークの他にも、就職を希望している障がい者がいる学校や訓練機関などに周知していきます。

障がい者の訓練機関としては、「就労移行支援事業所」「特別支援学校」「障害者職業能力開発校」「障害者職業センター」などがあります。これらの機関や学校では、働きたい障がい者が就職を目標として職業訓練や就職活動を行っています。これらの機関や学校に求人票や会社案内などを届け、就職を希望する人がいれば紹介してもらうように周知を図ります。マッチングできそうな人がいれば、会社見学や実習などを通して、より会社を知ってもらうように働きかけます。障がい者採用で活用できる支援機関については、参考リンク記事でも紹介しています。

障がい者雇用では、採用する前に職場実習(インターンシップ)を実施することがあります。職場実習(インターンシップ)を行うことは、企業にとっても求職者の障がい者にとっても有益です。企業にとっては、実務面での業務スキルに加え、面接だけではわかりにくい面がわかるほか、例えば「コミュニケーションが苦手でも業務スキルがある」というように、応募者の適性に気づくことができるからです。また求職者側も、社内の雰囲気、状況などを事前に把握しやすくなります。職場実習については、参考リンク記事でも解説しています。

ハローワークの主催する合同面接会やミニ面接会に参加する

ハローワークは、求人票を公開するだけでなく、障がい者雇用を促進するために合同面接会やミニ面接会などを開催しています。障がい者採用を行っている企業は、このような機会に参加することができます。

合同面接会では、さまざまな企業がブースを用意して会社説明と面接を行います。参加する企業が多く(都内では200社近く出展することもあります)、いろいろな企業の面接を受けたいという障がい者が参加するので、大規模に開催されています。そのため企業が多くの求職者と出会える場となります。合同面接会の出展はハローワークで募集を受け付けているので、参加したい企業は早めにエントリーするとよいでしょう。

また、ハローワークによっては、合同面接会よりも規模を小さくしたミニ面接会を開催していることもあります。合同説明会よりもアットホームな形の開催ができますので、関心がある企業は参加を検討するとよいでしょう。


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