障がい者雇用を進めていくときに活用したいのが、障がい者雇用に関わる支援機関です。しかし、障がい者雇用に関わるサポート機関は複数あるため、それぞれの違いや、どのようなことに活用できるのかがわかりにくい、という声をよく聞きます。そこで、今回から5回にわけて、障がい者雇用で活用できるサポート機関の種類や役割、サービス内容についてお伝えしていきます。1回目の今回は、「障がい者雇用で活用できるサポート機関の概要」をお伝えしていきます。
企業が障がい者雇用で活用できるサポート機関とは【1】相談機関と訓練機関・学校

障がい者雇用について相談ができる機関

障がい者雇用を進めていくときに、雇用管理で必要な配慮といったアドバイスをもらえたり、地域にある関連機関の紹介や連携をおこなってくれたりする機関を見ていきましょう。 

●ハローワーク

「ハローワーク」は、障がい者雇用を進めるうえで中心的な役割を果たしている機関です。障がい者雇用の求人が出せたり、助成金の窓口になったりもしています。また、障がい者雇用にあるさまざまな支援機関の連携を取りまとめる役割を担っています。

各地域のハローワークには、障がい者専門の職業相談・職業紹介窓口(専門援助部門)があり、就職を希望している障がい者の多くが相談や、求人を探しに行っています。そのため就職を希望している障がい者の多くは、ハローワークに求職登録しています。

また、年に数回、求職活動中の障がい者と複数の企業が会うことができる場として、ハローワークが主催する「障がい者就職面接会」が開催されます。この障がい者就職面接会は、企業にとっては多くの障がい者の中から選考できるので、企業が求める人材が確保できる可能性があります。開催回数や時期は各都道府県で決められていますので、最寄りのハローワークに問い合わせてみるとよいでしょう。

仕事内容や、賃金、労働時間、雇用形態などの具体的な労働条件が決まったら、ハローワークに求人票を出すことができます。ハローワークを通して採用活動をすると、さまざまな助成金の対象となります。例えば、下記のようなものが挙げられます。

・トライアル雇用による助成金
「トライアル雇用」として、継続雇用(1年を超える期間の雇用)へ移行することを目指して、原則3ヵ月間(1週間の所定労働時間は 20時間以上)の試行雇用を行なうと、助成金が支給されます。ただし、トライアル雇用を適用したいときには、予め求人票にトライアル雇用を摘要することを記載しておく必要があります。トライアル雇用を考えて求人票を出すときには、忘れずにハローワークに伝えてください。

・特定求職者雇用開発助成金(特開金)
ハローワークからの紹介によって障がい者を雇用すると、その企業は「特定求職者雇用開発助成金(特開金)」の支給対象になります。条件を満たす必要はありますが、多くの企業で活用されている助成金なので、検討することができます。

●地域障害者職業センター

障がい者の職業的自立を促進・支援するため、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置・運営するセンターです。「障害者雇用促進法」に基づいて、職業リハビリテーションの実施・助言・援助などを行っています。

障害者職業センターには、「障害者職業総合センター」、「広域障害者職業センター」、「地域障害者職業センター」の3種類があります。このうち「地域障害者職業センター」は、都道府県ごとに1ヵ所以上あり、障がい者の就労に関する支援とともに、企業が障がい者雇用を行なうためのアドバイスを行っています。

「地域障害者職業センター」には、障害者職業カウンセラーや配置型ジョブコーチなどが配置されており、障がい者雇用の専門的な役割を担っています。障がい者本人に対しては、専門的な職業リハビリテーションサービス、企業に対しては、障がい者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています。

●障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

「障害者就業・生活支援センター」は地域の福祉を担っている、各市町村レベルで設置されている機関です。「障害者就業・生活支援センター」という名前にあるように、就業および、それにともなう仕事と日常生活の両方をサポートするセンターとなっています。

そのため、この機関には「就労支援員」と「生活支援員」がいて、「就職」だけでなく、「住居」や「役所への手続き」などのさまざまな「日常の支援」も行っています。就職を希望する障がい者、または在職中の障がい者が抱える課題に応じて、雇用および福祉の関係機関との連携し、就業面と生活面の一体的な支援を行っています。

障がい者の採用で活用できる訓練機関や学校

「障がい者採用を進めてはいるものの、なかなか人材が見つからない」という意見をよく聞きます。このように言われる企業の担当者の方は、「ハローワーク」や「ハローワーク主催の合同面接会」を多く活用しているようです。

もちろん、ハローワークや合同面接会も大切な採用窓口になりますが、その他にも働きたい障がい者に出会える機会はたくさんあります。次のような障がい者が就労を目指すために訓練を受ける機関や、学校などからも採用を検討することができるでしょう。

●就労移行支援事業所

「就労移行支援事業所」とは、「障害者総合支援法」に定められた障がい福祉サービスのひとつである「就労移行支援」を提供する事業所のことです。この法律で定める「障がい福祉施策」には、障がい者を対象としたさまざまなサービスが提供されています。

障害者総合支援法のサービスの内容は、「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの柱があります。この自立支援給付の中に就労移行支援事業所が含まれています。

就労移行支援事業所では、働く意志のある障がい者に、仕事をするうえで必要なスキルを身につける職業訓練や、面接対策などを通して、就職活動のサポートをしています。

また、行政やハローワーク、医療機関などの関連機関と連携しながら、安定的に働けるように環境を整えます。就職後も、雇用した障がい者がその企業に定着できるよう、事業所を訪問したり、相談に応じたりといった支援を行います。

●障害者職業能力開発校、国立リハビリテーションセンター

「障害者職業能力開発校」は、障がい者の適性にあった普通職業訓練や高度職業訓練を行うための公共職業能力開発施設です。「職業能力開発促進法」第16条に基づき、国および都道府県が設置しています。

障がい者に対する職業訓練は、ノーマライゼーションの理念に基づき、バリアフリー化を推進して一般の職業能力開発校で学べるように整備されてきました。また、都道府県立の一般校を活用して知的障がい者を対象とした訓練コースを設置し、一般校での受け入れが困難であった障がい者への職業訓練機会を提供しています。最近では、精神障がい者の障がい者雇用も増えていることから、精神障がいや発達障がいの受け入れも増えてきています。

障害者職業能力開発校は、国立が13校、都道府県立が6校で、全国に19校が設置されています。国立13校のうち2校(国立リハビリテーションセンター)は独立行政法人高齢・障害者・求職者雇用支援機構、 11校は都道府県に運営を委託されています。

●特別支援学校

「特別支援学校」では、障がいのある子どもたちの自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援する教育が行われています。特別支援学校にも障がい者枠で就職を希望する生徒がいて、特別支援学校高等部からの就職率は3割ほどになります。

特別支援学校に通う子どもたちは、同校卒業後に自立した生活を送って社会参加していくことを目指して、学校生活の中で就職に向けた準備を行っています。例えば、高等部では、企業と連携して現場実習といった就業体験ができる機会を設けたり、学校内の実習や作業訓練、企業関係者を講師とした授業を実施したりするなど、社会に出る準備をします。


今回は障がい者雇用支援機関の概要として、どのような機関があるのかについて見てきました。2回目以降は、ハローワーク、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)、就労移行支援事業所、国立リハビリテーションセンター、障害者職業能力開発校、特別支援学校について、それぞれの機関の「役割」と「サービス内容」を詳しくお伝えしていきます。
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