従業員を「人的資本」と考え、人材投資により企業価値の向上を目指す「人的資本経営」が世界的に注目されている。その普及においては「人的資本に関する情報開示」と「人的資本経営の実践」の好循環が課題とされているが、これらを進める上での指針となるのが「人材版伊藤レポート2.0」である。本講演録では、その生みの親である伊藤 邦雄氏と経済産業省の島津 裕紀氏が、同レポートを読み解きながら企業が取り組むべき課題を明らかにしていく。7月20日に行われた株式会社リンクアンドモチベーション主催オンラインイベント「HR Transformation Summit 2022」の模様を一部お届けする。
伊藤教授と経産省島津氏が語る、人的資本経営のカギとなる「人材版伊藤レポートの実装」と「経営戦略と人材戦略の連動」

「人材版伊藤レポート」を実装するためには何が必要か

【講演】一橋大学 CFO教育研究センター長 伊藤 邦雄氏

「人材版伊藤レポート」と「人材版伊藤レポート2.0」を世に出すために、様々な方とディスカッションを重ね、「日本の未来に繋がる、とても太い道が見えてきている」と感じています。しかし、まだ不都合な現実がいろいろと横たわっているのは確かです。それでも、勇気を持ってそういった現実を直視し、未来志向で価値基軸の人的資本経営を実践すべき時が来ていると考えています。

いまや企業価値は、無形資産で決定される時代です。残念ながら、日本は無形資産投資競争において世界の中では劣勢にあります。米国S&P500のデータを見ますと、アメリカの市場価値に占める無形資産の割合は年々上昇し続けております。無形資産投資率と有形資産投資率の時系列推移を見ても、アメリカでは有形固定資産投資が、時代の移り変わりに伴ってどんどん下がっています。対して、無形資産投資率は右肩上がりで、1993年前後に無形資産投資率と有形資産投資率が逆転しました。

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