近年、日本においても企業価値向上のカギとして重要視されている「人的資本投資」に関し、その概念や生産性との関係について、経済学のアプローチからさまざまな研究成果が発表されている。本講演では、マクロ経済学を専門とする学習院大学 経済学部 教授 滝澤 美帆氏が、人的資本投資に関連した各研究成果を解説するとともに、滝澤氏と学習院大学 名誉教授/学習院さくらアカデミー長の今野 浩一郎氏がディスカッションを行い、日本の生産性の低迷の要因や、今後日本企業に求められる人的資本投資について語った。
経済学からアプローチする「人的資本投資」と「生産性向上」の関係性
滝澤 美帆 氏
講師:

学習院大学 経済学部 教授 滝澤 美帆 氏

2008年一橋大学博士(経済学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、東洋大学、ハーバード大学国際問題研究所日米関係プログラム研究員などを経て、19年学習院大学准教授。20年より現職。現在、中小企業審議会、国土審議会、財政制度等審議会など複数の中央省庁委員や東京大学エコノミックコンサルティング株式会社のアドバイザーを務める。主な著書に『グラフィックマクロ経済学第2版』や『資金制約下にある企業の無形資産投資と企業価値』など。
学習院大学

今野 浩一郎 氏
講師:

学習院大学 名誉教授/学習院さくらアカデミー長 今野 浩一郎 氏

1971年3月東京工業大学理工学部工学科卒業、73年東京工業大学大学院理工学研究科(経営工学専攻)修士課程修了。73年神奈川大学工学部工業経営学科助手、80年東京学芸大学教育学部講師、82年同助教授。92年学習院大学経済学部経営学科教授。2017年学習院大学名誉教授、学習院さくらアカデミー長。主な著書に、『正社員消滅時代の人事改革』(日本経済新聞出版社)、『高齢社員の人事管理』(中央経済社)、『同一労働同一賃金を活かす人事管理』(日経BP・日本経済新聞出版)など多数。

日本における「人的資本投資」の実態と経済成長に向けた課題
学習院大学 経済学部 教授 滝澤 美帆氏

マクロ経済学から見る「人的資本投資」の重要性

今野氏 最近、日本政府が「学び直しや人的投資は、日本企業や日本経済の成長にとって非常に重要な条件である」というメッセージを打ち出しています。人事をずっと専門にしてきた身からすると、昔から人材育成や教育投資が重要だと考えてきました。それにもかかわらず、日本企業の成長は順調ではない状況が長い間続いているわけですから、もう一度、人材育成や人的投資のあり方を考えてみる必要があるだろうと感じております。この問題をマクロの視点から考え、解決のヒントを得たいと思いますので、学習院大学の滝澤教授に「日本の人的資本投資と経済成長」という観点からお話をいただき、その後に議論をしたいと考えております。それでは滝澤さん、よろしくお願いいたします。

滝澤氏 よろしくお願いいたします。今、今野先生のお話にありました通り、私の専門はマクロ経済学で、具体的には企業のビッグデータを使って生産性を計測し、どういった要因が生産性に影響を与えるのかという研究に取り組んでおります。最近は生産性に影響を与える要因として、無形資産、特に人への投資に注目した研究を行っております。本日は、「日本の人的資本投資と経済成長」という観点から、経済学における人的資本の捉え方や、人的資本と経済成長の関係について、以下の3つのアジェンダからお話をさせていただきます。

(1)人的資本計測方法と計測結果の国際比較(マクロ的視点からの分析)
(2)人的資本投資に関する企業アンケート調査結果の紹介
(3)人的資本投資に関する雇用者アンケート調査結果の紹介
気になる続きは、下記をダウンロードの上ご覧ください!

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