日本における「人的資本投資」の実態と経済成長に向けた課題
学習院大学 経済学部 教授 滝澤 美帆氏
マクロ経済学から見る「人的資本投資」の重要性
今野氏 最近、日本政府が「学び直しや人的投資は、日本企業や日本経済の成長にとって非常に重要な条件である」というメッセージを打ち出しています。人事をずっと専門にしてきた身からすると、昔から人材育成や教育投資が重要だと考えてきました。それにもかかわらず、日本企業の成長は順調ではない状況が長い間続いているわけですから、もう一度、人材育成や人的投資のあり方を考えてみる必要があるだろうと感じております。この問題をマクロの視点から考え、解決のヒントを得たいと思いますので、学習院大学の滝澤教授に「日本の人的資本投資と経済成長」という観点からお話をいただき、その後に議論をしたいと考えております。それでは滝澤さん、よろしくお願いいたします。滝澤氏 よろしくお願いいたします。今、今野先生のお話にありました通り、私の専門はマクロ経済学で、具体的には企業のビッグデータを使って生産性を計測し、どういった要因が生産性に影響を与えるのかという研究に取り組んでおります。最近は生産性に影響を与える要因として、無形資産、特に人への投資に注目した研究を行っております。本日は、「日本の人的資本投資と経済成長」という観点から、経済学における人的資本の捉え方や、人的資本と経済成長の関係について、以下の3つのアジェンダからお話をさせていただきます。
(1)人的資本計測方法と計測結果の国際比較(マクロ的視点からの分析)
(2)人的資本投資に関する企業アンケート調査結果の紹介
(3)人的資本投資に関する雇用者アンケート調査結果の紹介
- 1