「育児・介護休業法」の改正により、2022年4月1日からいくつもの施策が順次施行される。共働きが当たり前な現代社会において、男性が育児に参加するための環境整備は大きな意味があると言えるだろう。そこで今回は、「改正育児・介護休業法」について、男性の育児休業取得に関する内容を中心にポイントを解説する。
「改正育児・介護休業法」が2022年4月から順次スタート! “男性の育休”のポイントおよび企業が検討すべき対応とは

「育児・介護休業法」改正のポイントと施行スケジュール

2022年4月1日以降、「育児・介護休業法」の改正が下記のスケジュールで順次施行される。

2022年4月1日~
●雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
●有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
2022年10月1日~
●産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
●育児休業の分割取得
2023年4月1日~
●育児休業取得状況の公表の義務化

産後パパ育休(出生時育児休業)の創設(2022年10月1日~)

男性の育児休業取得を促進するため、「出生時育休制度」(以下「産後パパ育休」)が新設される。これは、「原則、子供が1歳(最長2歳)まで」とする育休制度とは別に取得できるもので、「出生後8週間以内に4週間まで」育児休業を取得可能となる。

これまでは、ママの出産後8週間以内にパパが育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、再度パパが育児休業を取得できる「パパ休暇」制度があったが、今回の「産後パパ育休」は、このうち「出産後8週間以内の期間内」を別枠としたものとなる。

また、労使協定を締結すれば男性も休業中に就労が可能になり、男性の育児参加を促進する効果が期待できるだろう。

※ただし、就業可能日等には下記の通りの上限がある

●休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
●休業開始・終了予定日を就業日とする場合は、当該日の所定労働時間数未満

育児休業の分割取得(2022年10月1日~)

男性の育児休業取得促進のためにも、現行法では禁じられている育児休業の分割取得ができるようになる。分割の方法としては、下記の通りだ。

●産後8週間の間に最大4週間を2回に分けて取得
●その後も2回まで分割取得

つまり、合わせると最大4回の分割取得ができることになる。

男性の育児休業取得については各家庭の判断となるが、実際には育児休業取得には企業を含めた周囲の理解が欠かせないだろう。上記の他にも、雇用環境の整備や、男性の育児休業取得の周知・理解の促進が企業に義務づけられており、これらが実施されなかった場合は企業名が公表される等の罰則もある。これからは、男女ともに育児休業の取得は当たり前となることを見越し、環境整備(業務内容の見直し、育児休業を取得しやすい社内環境、就業規則の改定等)に取り組んでいくべきだ。

【PDF資料】雇用保険/老齢年期/パワハラ防止法/育児・介護休業法など改正法を網羅
【HRプロ編集部Presents】令和4年度(2022年度)版「人事労務 法改正まとめ」~社労士が12の法改正を解説~

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自社の事情や従業員のニーズにマッチした施策の検討

法改正に沿って社内体制を整備することは当然のことではあるが、それ以外でも企業が目を向けるべき対策は多く存在する。「育児・介護休業法」に基づく、男性の積極的な育児休業取得促進の前段、あるいは更なる推進策として、各社で取り組める内容について考えてみたい。

終業時間の繰り上げ

育児中のママにとって、「パパの帰宅が遅い」ことは、大きなストレスだろう。いわゆるワンオペの時間を可能な限り短くするために、定時、さらには定時前の退勤を推奨してみてはいかがだろうか。そのために、フレックスタイム制導入により出社時間を切り替える(例えば、早朝7時~)という方法もあるだろう。

業務内容の見直し(テレワーク対応)

男性の育児休業取得が進まない原因の一つに収入減があるだろう。育児休業取得による育児休業給付金の給付額は、月給の50%~67%程度だ。業務内容の見直しにより、育児期間中でも休業するのではなく、自宅からのテレワークで対応可能な業務に従事して収入を維持できるような仕組みを検討するのもひとつの方法だ。

今回の法改正により、子育て状況に合わせた柔軟な男性の育児休業取得が促進されることが期待できる。その一方で、子育てについては日々継続するものなので、男性の育児参加ができる環境整備の方がより重要なのではないか、という意見もあるだろう。企業が男性に育児休業を効果的に取得してもらうために、法改正による育児休業の取得促進ももちろん大事だが、より根本的な解決策として、自社にマッチした施策も積極的に検討してみてはいかがだろうか。

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