ProFuture代表の寺澤です。
7月2日に発表された産業能率大学 総合研究所の「2021年度 新入社員の会社生活調査」によれば、今春の新入社員に就職活動を振り返ってもらったところ、「かなり大変だった」32.6%、「思ったより大変だった」51.4%で、これを合計した「大変だった」の84.0%は、これまで最高だった就職氷河期の1995年度(76.8%)をも大きく超えて過去最高だったとのことです。
第124回 「学生の内定率」や「企業の内定充足率」上昇の裏側では何が起こっているのか
大卒求人倍率(リクルートワークス研究所)は、バブル末期の1991年卒に2.86倍を記録した後、翌年から毎年求人数の大幅減少を受けて、1995年卒ではたった4年間で1.20倍まで落ち込む事態となりました。求人倍率だけを見れば、翌年の1996年卒は1.08倍まで低下し、翌1997~1998年はいったん回復傾向になったものの1999年から再び下降しはじめ、2000年卒で記録した0.99倍が過去最低の数字となっています。ただし、就職氷河期という言葉自体が定着していたからか、新入社員の感想では「大変だった」の割合が1995年卒を超えることはありませんでした。

2021年卒の求人倍率は1.53倍ですから、1995年当時よりも数字上は学生優位だったわけです。それでも「大変だった」との感想を持つ学生がこれだけ多かった理由について、本調査では「合同会社説明会などの中止や延期が相次いだ」(54.9%)や「就職活動をする他の学生の動向が分かりにくかった」(50.7%)などとなっていますが、その根底にあるのは数字には表れてこない、「就職活動のやり方自体が大きく変化したこと」「過去の先輩の情報がほとんど参考にならなくなったこと」だと思います。

この後、今回紹介する採用担当者の感想もこれに近いものがありそうです。本編に入ります。

オンライン化が採用条件にも変化を

今回は、HR総研が2021年6月7~14日に、企業の採用担当者を対象に実施した「2022年&2023年新卒採用動向調査」の結果の中から、2022年卒採用の現状について紹介します。

まずは、事業や採用活動を取り巻く環境が激しく変化する中で、ターゲット層となる学生の条件がここ数年で変化してきているかどうかを聞いてみた結果からです。全体では。「変化していない」(「全く変化していない」と「あまり変化していない」の合計、以下同じ)が45%、「変化している」(「大きく変化している」と「やや変化している」の合計、以下同じ)24%と、「変化していない」とする企業のほうが大きく上回っています[図表1]
第124回 「学生の内定率」や「企業の内定充足率」上昇の裏側では何が起こっているのか
ただし、従業員規模別に見ると、1001名以上の大企業では「変化していない」は34%なのに対して、「変化している」が29%とそれほど大きな開きはありません。一方、301~1000名の中堅企業では、「変化している」は大企業と同じく29%であるものの、「変化していない」が52%と半数を超えています。

では、「変化している企業」には、どんな理由で変化が起きているのでしょうか。フリーコメントから幾つかご紹介します。

・生まれたときからデジタルデバイスがあり、情報にアクセスがしやすい環境が整っていたなど、学生が育ってきた環境が以前と大きく変わっていることに加え、キャリア教育が大学でも行われたり、終身雇用制度が継続できなくなっていたりするなど、就業に対する意識も変化しているため(1001名以上、食品)
・オンライン採用が主流になり、地方学生をターゲットに入れることができたため(1001名以上、情報処理・ソフトウェア)
・webを活用できる環境が整ったため、地元学生採用から全国採用へシフト(301~1000名、その他メーカー)
・より即戦力として使える人材が求められているため(301~1000名、機械)
・就職状況が厳しい中で、これまで当社には来なかった層からの応募がある(300名以下、食品)
・従来、電気・機械系の学生に絞っていたが、採用が難しくなってきたため(300名以下、電子)

大企業でも4割は「個別採用」を導入

次に、就職ナビや合同企業説明会等を通じて大量の採用母集団を形成し、エントリーシートや適性検査、面接選考等を通して一括して絞り込んでいく「マス型採用」と、ダイレクトソーシングやインターンシップで目立った学生などを一本釣りしていく「個別採用」のウエートを聞いてみた結果が[図表2]です。
第124回 「学生の内定率」や「企業の内定充足率」上昇の裏側では何が起こっているのか
採用人数の多い大企業では、「マス型採用に注力した」が60%にも達していますが、中堅企業では42%、300名以下の中小企業では32%と、その割合は企業規模が小さくなるにつれて低下していきます。一方、「個別採用に注力した」は、中小企業では40%にも及びますが、中堅企業と大企業はそれぞれ6%、9%と割合はそれほど高くはありません。

採用人数の少ない中小企業では、大きな母集団を形成する必要もなく、「個別採用」のほうがかえって効率的なのでしょう。ただ、見方を変えれば、大企業でも「マス型採用に注力」する企業は6割に過ぎず、残りの4割はなにがしかの「個別採用」を取り入れているということです。採用しづらい職種や、極めて能力・スキルが高いと判断した場合には、「個別採用」も併用していかないと、「マス型採用」だけでは採りきれないということなのでしょう。

具体的な内容についても見てみましょう。

・インターンシップに参加した学生のうち、優秀な学生に対して個別に接触をし、早期選考の案内を行った(1001名以上、食品)
・逆求人型就職サイトを活用した。会ってから決める運用(1001名以上、情報処理・ソフトウェア)
・大学内に限らず、自社HPでは通年で募集を行っていますので、基準に合致すれば採用する場合もあります(301~1000名、医薬品)
・説明会は基本個別対応(301~1000名、住宅・インテリア)
・実際に話してみないと分からないことが多く、型にはまった就活ノウハウを大学のキャリアセンター等で教示されてしまっている。自社の採用者を見極めるというスタンスより、若者の理解、納得のいく就職をしてほしいという意識で関わっている(300名以下、コンサル)
・半年以上インターン生として働いている方は、インターン期間の成果も考慮した採用を行っている(300名以下、医療・福祉関連)

オンライン化対応できていない企業は大きく減少

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