「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」の違いとは? 特徴とメリットを解説

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新卒一括採用の見直し、専門職の人手不足、国際競争力の低下などによる背景から、日本の企業の間で、従来の雇用形態を見直そうとする動きが活発になっている今。これまで国内企業で主流だった、仕事に人をつける働き方の「メンバーシップ型雇用」から、人に仕事をつける働き方の「ジョブ型雇用」へ切り替える企業が増えてきている。本記事では、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いを深掘り、それぞれのメリットとデメリットを紹介する。

「ジョブ型雇用」とは?

「ジョブ型雇用」とは、事前に勤務地、報酬、職務の内容などの労働条件を細かく定め、その内容を「職務記述書(Job Description)」と呼ぶ文書にまとめ、企業が労働者と合意して雇用契約を締結する雇用の形を意味する。端的に言えば、人に仕事をつける働き方を指す。欧米では広く普及している雇用形態となっている。

ジョブ型雇用が近年注目されるようになったのは、2019年の経団連による「1つの会社でキャリアを積んでいく日本型の雇用を見直すべき」という提言があったことが大きい。

背景には、国際競争力の低下や専門職の人手不足などがある。専門スキルのある人材育成の強化や人材確保が急務となっているため、ジョブ型雇用の必要性が問われているのだ。また、少子高齢化に伴う労働人口の確保に向けて、多様な人材を積極的に活用する動きも活況になっている。時短勤務や在宅勤務など、勤務地や勤務時間を限定しながらスキルを発揮したいという働き手のニーズが、ジョブ型雇用拡大の一つの要因となっている。

実際に、KDDIや資生堂、富士通などの企業はジョブ型雇用を取り入れる方針を打ち出している。日立製作所は2020年5月26日に、「ジョブ型の人材管理」を全従業員対象に導入すると発表。国内企業でもジョブ型雇用の広がりを見せている。

「メンバーシップ型雇用」とは?

「メンバーシップ型雇用」とは、人に仕事をつける働き方を意味する。日本型雇用とも呼ばれ、仕事内容や勤務地に限定はなく、候補者の潜在能力や人柄を評価して採用する雇用の形だ。メンバーシップ型雇用は、新卒一括採用型の雇用システムと言え、終身雇用や年功序列などの特徴を持っている。

メンバーシップ型雇用を取り入れる企業は、新卒社員を教育する際、社内のさまざまな部署を経験させる「ジョブローテーション」を実施する。長期的な育成を前提に、キャリアに応じた研修も行い、自社で活躍する人材を育て上げていく。その結果、所属する企業内の仕事なら何でもできる「ゼネラリスト」を育てることができる。

メンバーシップ型雇用は、長期的な労働力が欠かせない高度経済成長期において、機能を果たしていた。労働人口の減少や国際競争力の低下といった課題に直面している現在の日本においては、合わない雇用スタイルになってきている。

「ジョブ型雇用」のメリットとは?

「ジョブ型雇用」を導入するメリットは、大きく分けて企業側で2つ、従業員側で3つある。

企業側
・雇用のミスマッチを防げる
・専門人材を採用しやすくなる


雇用のミスマッチの例としてよく挙げられるのが、従業員のスキルについて、こんなはずじゃなかったと企業側が入社後に感じる点だ。ジョブ型雇用であれば、事前に仕事の詳細な内容を把握して求職者側は入社するため、企業の求めるスキルとのズレは生じにくい。また、業務範囲を限定することによって、より専門性のある人材を採用しやすくなるメリットもある。


従業員側
・専門スキルを磨くことができる
・自分の専門分野の仕事ができる
・スキルを磨くことで給与がアップする


入社者は職務記述書や契約内容以外の仕事を行う義務がないため、安心して専門スキルを磨くことができる。細かく職務が決まっているため、例えばAIやブロックチェーンなど、自分の専門分野の仕事ができる職に就けるメリットもある。また、スキルが評価の基準となるため、自分の能力を磨けば磨くほど給与は上がっていく。スキルを高められれば、厚待遇の会社へ転職できるのも魅力だ。

「ジョブ型雇用」のデメリットとは?

「ジョブ型雇用」を導入することによるデメリットは、企業側と従業員側でそれぞれどのようなものがあるのだろうか。

企業側
・会社都合による異動や転勤が実施できない
・新卒社員の活躍の場が減る
・従業員の転職リスクが高まる


ジョブ型雇用では入社前に勤務地や職務範囲が定められているため、急ぎの欠員補充や人材育成のニーズが社内で発生しても、異動や転勤を従業員に命じることができない。また、各部署で専門スキルが求められる職場になると、自ずと新卒社員が活躍できるフィールドは限定される。ジョブ型雇用では、従業員のスキルが高まることで、やがて厚待遇の企業が見つかれば転職されるリスクも生じる。

従業員側
・自己研さんが日々求められる
・仕事がなくなった際の退職リスク


専門スキルの高い仕事をする従業員は、AIやブロックチェーンなど、日々進化する技術をインプットし続けなければならない。積極的に社内や外部の研修を受け、業務と並行して自己研さんに取り組まなければ、仕事の成果を出せなくなるリスクが生じる。また、景気悪化や会社の都合によって、専門スキルを活かした仕事が社内でなくなれば、退職せざるをえないデメリットがある。

「メンバーシップ型雇用」のメリットとは?

一方、「メンバーシップ型雇用」は企業側と従業員側それぞれでどのようなメリットがあるのだろうか。

企業側
・長期的な人材育成が可能
・柔軟な人材の配置や異動が実施できる
・帰属意識の高い人材育成が可能


メンバーシップ型雇用は終身雇用が前提となるため、ジョブローテーションによって、従業員に多様な経験やスキルを積ませることができる。長期的にバランスの良い幹部候補を育成することができ、安心して重要なポジションを任せられる。

また、企業側は会社の方針変更、欠員補充、育成などの様々な理由で、異動や転勤を従業員に命じることができ、柔軟な組織づくりが可能となる。メンバーシップ型雇用では、終身雇用や年功序列の働き方となるため、将来の安定を感じながら従業員は働くことができ、在籍年数が長くなるにつれて帰属意識が高まるメリットも生まれる。

従業員側
・多様なスキルが身につく
・新鮮な気持ちで仕事に取り組める


営業やマーケティング、人事など、定期的なジョブローテーションによって、従業員は多様な能力・知識を身につけることができる。また、環境が変わることで、新鮮な気持ちで仕事に取り組むことができ、従業員のエンゲージメントが向上する。

「メンバーシップ型雇用」のデメリットとは?

「メンバーシップ型雇用」を取り入れることで生じるデメリットは、企業側と従業員側でそれぞれ大きく分けて2つある。

企業側
・生産性が低下する可能性が高まる
・人件費の増加


終身雇用や年功序列の特徴を持つメンバーシップ型雇用では、成果を出さなくても安定した給与がもらえるのが実情としてある。職場に緊張感が生まれにくく、従業員の生産性に影響が出る可能性は高い。また、年齢や勤続年数を重ねるごとに賃金が上がる仕組みのため、企業の人件費が増加していくデメリットが生じる。

従業員側
・会社都合の転勤や異動が発生する
・長時間労働につながりやすい


メンバーシップ型雇用では、勤務地や仕事内容に明確な取り決めがないため、会社都合の転勤や異動に従業員は従わなければならない。また、ジョブ型雇用と違って業務範囲が限定されていないため、仕事の幅が広くなることで長時間労働につながりやすい側面がある。
近年、「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」へ切り替える企業が増えてきている。世間ではジョブ型雇用が注目されてはいるが、メンバーシップ型雇用を取り入れるほうが機能する企業も中にはあるだろう。ただ、経済状況や労働人口は確実に変化しており、これまでのやり方が通用しなくなってきているのは事実としてある。組織戦略と照らし合わせながら、今一度、自社で導入している雇用形態を見直してみてはいかがだろうか。
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著者プロフィール

HRプロ編集部

採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。

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