採用全般
HRプロ編集部スペシャルインタビュー

OBOG組織「ベネッセ アルムナイ」が目指す“終身信頼関係”とは。「よく生きる」の企業理念を持ち続け、新たな価値を創造する

ベネッセコーポレーションのOBOGで組織された「ベネッセ アルムナイ」は、一般的なアルムナイの概念とは異なる、新しい形のコミュニティだ。単なる同窓会組織でもなければ、退職者の再雇用を目的とした制度でもない。目指すのは、ベネッセの理念「よく生きる」をベースにした新しい価値創造。そのためにアルムナイ同士はもちろん、ベネッセの社内有志団体「One Benesse」や現職社員たちとも連携し、さまざまなコラボレーションを行っている。今回は「ベネッセ アルムナイ」のメンバーである杉山亮介氏と安藤崇文氏、ベネッセコーポレーションで人財開発部長を務める後藤礼子氏に、アルムナイの取り組みや意義、ビジョンについて語っていただいた。

新たな価値を生み出すコミュニティに

――まずは「ベネッセ アルムナイ」を立ち上げられた経緯や、活動の狙いについて教えてください。

杉山
 アルムナイの立ち上げは、もともとあったベネッセのOBOG会が2016年に活動を休止した際、辞められた方々とのパートナーシップをなくしてしまうのは、会社にとって損失なのではないかという声が社内から持ち上がったのがきっかけです。

一方でそれまでのOBOG会は、ベテランの方々を中心とした同窓会のような雰囲気にもなっていました。そこで若手が主体となり、単なる同窓会としての機能だけではなく、新たな価値創造にも繋がるようなコミュニティを作っていこうと、当時すでに退職が決まっていた後藤照典さん(現アイディール・リーダーズ株式会社COO)を中心に、会社側からも「One Benesse」の佐藤徳紀さん(※1)や、当時まだベネッセのグループ会社に在籍していた私などが参画し、発足させたというのが経緯です。約1年の準備期間を経て、2017年12月に第1回アルムナイ交流会を開催。以降、半年に1回くらいのペースで交流会をメインとした活動を行っています。
安藤 私たちは、同じ考えや理念に基づいて一緒に働いたことのある仲間。そういう仲間同士で協業したり、連携したりしながら、一緒に価値を作ることができるのではないか、というのが活動の狙いです。辞めたからこそ見えること、気づくこともたくさんありますので、そういった視点や現在の仕事で得た知見などを活かしながら、古巣を応援できればと思っています。

――アルムナイが発足するという話を最初にお聞きになったとき、会社として、あるいは人財開発部としてどのように感じられましたか?

後藤
 従来のOBOG会は、福武書店の時代から活動に対して会社から寄付金を出すぐらい大切にされてきた文化だったので、解散については慎重に検討しましたし、解散が決まった後も、何かしらの形で残していきたいと考えていました。またその際は、会社や人事の冠はつけずに、本当にやりたい人たちが集まって輪が広がっていくような形のほうがベネッセの精神に合っている、とも思っていました。ですから最初にアルムナイのお話を聞いたときは、イメージしていたものに近いなと感じましたし、実際会社として何か後押しをするというより、私自身、賛同している一個人として関わらせていただいています。

――近年退職者を再雇用するアルムナイ制度が注目されていますが、御社では、そもそもそういった部分にはあまり期待されていないのでしょうか?

後藤
 おっしゃる通り、採用難のご時世ですから、退職者を再雇用するというのは、人事的にはとても関心のあるところです。ただ再雇用に関しては、退職時に任意で登録していただくOBOGリストやリファラルなどの仕組みがあるので、そちらで十分足りるでしょう。「ベネッセ アルムナイ」は、そういった人事的な観点や仕事のやり取りとは違う、参加者が立場を超えて新しい価値を一緒に共創していく場だと思っています。



※1 ベネッセの社内有志活動「One Benesse」が目指す社内改革に迫る。“ナナメ”の関係づくりは会社にどんなプラスをもたらすのか

第5回アルムナイ交流会『ホームカミングデイ』の目的は?

――アルムナイ交流会では具体的にどのようなことをされるのでしょうか?

杉山
 アルムナイ交流会には決まりがあり、毎回参加者の中から次回の幹事を選ぶんです。もともとこのコミュニティは、リンクトイン創始者のリード・ホフマンが提唱する“終身信頼関係”という概念がベースになっているのですが、そのフレームから外れなければ、基本的には幹事のやりたい企画ができます。よって内容は毎回変わり、例えばアルムナイ同士を交流させるための企画、アルムナイで活躍している人をフィーチャーした企画など、そのときの幹事の想いが強く反映される傾向にあります。

――1月に開催された第5回アルムナイ交流会は、安藤様が幹事だったそうですが、どのような企画だったのでしょうか?

安藤
 『ホームカミングデイ』と題し、アルムナイが古巣の多摩本社に帰ってきて、現役社員と交流を図りました。アルムナイと現職社員との交流をメインにした企画は今回が初めてのことです。具体的な内容としては、アルムナイとベネッセによる連携事例の発表がメインでした。

久しぶりに同期や大好きだった先輩・後輩と再会できることは、もちろん嬉しかったのですが、それだけで終わってしまっては、それこそ同窓会と変わりません。交流会が終わっても、その先に何か繋がるものがないと意味がないと思うんです。私たちは退職しても、やはりベネッセのことが好きだし、何かしら貢献したいし、応援したい。実際にそういう想いを持って活動しているアルムナイと、ベネッセとのコラボレーションの事例を紹介し、現職社員に向けて価値提供ができたのではと思っています。

――つまり現在ベネッセで働いている社員を意識した企画ということなんですね。

安藤
 第5回はそういう意味合いが強かったです。今まではアルムナイ同士の交流が中心だったのですが、古巣に何か恩返しができないかと企画したのが今回でした。これまでの交流会は都心で開催していたのですが、この回は現役の方々にもたくさん参加いただきたかったので、集まりやすい多摩の本社ビルでやらせていただけないかと思い、相談させてもらった次第です。
――参加者はどのようにして集めるのですか? また参加者の顔触れとしてはどのような方が多いのでしょうか?

杉山
 基本的には人海戦術です。できるだけ多くの人に声をかけるようにしていますが、無理矢理お誘いするようなことは絶対しません。人数はそのときの企画にもよるのですが、毎回だいたい40名前後は集まりますね。

参加者の特徴としては、やはり幹事の同期や年齢の近い人たちが集まりやすい傾向はあると思います。また、忙しい中わざわざこういうイベントに参加するくらいですから、好奇心の旺盛な人や、“Give”の精神を持った人が多い印象もあります。

――アルムナイの活動に人財開発部は関わられているのでしょうか?

後藤
 人財開発部としては関わっていません。あくまでもアルムナイの主役はアルムナイ自身であるべきで、そこに会社が入っていくことには違和感を覚えます。ただ、やはりOBOGとは切っても切れない関係ですので、人財開発部の立場である私が相談をさせていただいたり、情報を提供していただいたりすることはあります。また、辞めた方々との関係性をどのように作っていくのか、ということに関しては、人財開発部にとって重要なテーマだと思いますので、アルムナイの取り組みや連携事例などを部員に伝え、共有しています。いずれにせよ、会社としてではなく、私個人として参加させていただき、ベネッセがもっとよくなるためのアイディアや刺激をいただいているという関わり方です。

アルムナイはベネッセの理念を社外で実践し、広めてくれる存在

――取り組んでこられた結果、アルムナイ、ベネッセの双方にとって、どのような成果やメリットがもたらされたと感じていらっしゃいますか?

杉山
 アルムナイの活動自体が5回も続いてきたということが大きなエビデンスであり、実績だと思います。また、第5回の交流会では連携事例が発表されましたが、こうした事例は実は他にもたくさんあるのに、なかなか表層に上がってこないんですね。実際アルムナイ同士でも知らないことが多々あります。そういう意味では、お互いのことを知るきっかけにもなりましたし、刺激を与え合う場にもなったでしょう。また、こうして絆を深めることで、結果的にビジネスの相談がしやすくなるなどのメリットも出てきています。

後藤 ベネッセにとってもメリットは少なくありません。特に重要なのは、「よく生きる」という企業理念を社外にきちんと広めてくれているところではないでしょうか。私たちはこの理念を非常に重要な価値だと思っていて、社内だけにとどまらず、世の中に対しても広く発信していきたいと考えているのですが、アルムナイの方々は辞めた後もこの理念を大切にし、リアルに実践してくださっています。

また人事の観点で言うと、アルムナイの皆さんが転職後、どの業界でどのように活躍されているのか、どんな風にキャリアを転用されているのかがわかるので、事例として参考になっています。

――会社として今後のアルムナイの活動に期待することはありますか?

後藤
 現職の社員と卒業された方々が一緒にフラットな立場でコミュニケーションを取る場があるというのは、とても重要なことなので、今後もずっと継続してほしいと思います。その中でお互いに知見を出し合い、学び合いながら、ベネッセに関わってきた人がみんな生き生きと仕事ができるようになればいいなと期待しています。
――アルムナイとして今後目指していきたいこと、ビジョンなどがあれば教えてください。

安藤
 私は日本企業によく見られる、「退職者=敵」のような風潮がとにかく嫌なんです。もちろん中には会社のことが嫌いで辞める方もいるとは思いますが、昨今は「違う目標ができた」、「キャリアプランに合わない」といった理由で辞める方のほうが多いでしょう。そういう辞め方なら、お互いに協力したり、応援したりしたほうがいいじゃないですか。幸いにもベネッセにはそういうカルチャーがあるので、私たちのこの取り組みが世の中にもっと波及していけばいいですね。そうすればきっと、閉鎖的な日本社会に風穴があいて、生み出せる価値もより一層大きくなると思います。

杉山 とてもよいコミュニティになってきたと思うので、先ほど後藤さんがおっしゃったように、とにかく継続させることが重要だと思っています。みんなが無理せず、負担なく、ある種の心理的安全性を保った状態で続けていければ、そこから先は面白い企画が自然と湧き出てくるでしょう。重要なのは、そのための箱をきちんと用意しておくこと。そして「新たな価値を提供する」というコンセプトを崩さないことです。創立メンバーの熱い想いを持ってインキュベーションしてきたコミュニティですので、私自身それを守り続けていきたいと思っています。
【ゲスト】
株式会社タスタス エヴァンジェリスト/プロダクションマネージャー 杉山亮介氏
(グループ会社プランディットでプロダクションマネージャーを担当。2018年7月に退職)

シンプレクス株式会社 ヒューマン・リソーシーズディビジョン 安藤崇文氏
(ベネッセコーポレーション高校営業部で営業を担当。2018年1月に退職)

ベネッセコーポレーション 人財開発部 部長 後藤礼子氏
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著者プロフィール

HRプロ編集部

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