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HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

人生100年・仕事人生80年を、豊かに生き抜くために。中高年のキャリア再設計を後押しする「ライフシフト大学」

「人生100年・仕事人生80年といわれるこれからの時代、どう生きていけばいいのか」
今まで企業に依存してきたキャリアやスキルを、自身でどうアップデートすべきか、自身の強み・弱みは何か、分からずに途方に暮れる中高年は少なくないだろう。また、企業の人事としても、人生100年時代を生き抜くために、従業員にどう学び直しを促すのか、人材不足のなかでミドル・シニアを企業成長の大きな労働力に転換するための最適解を模索している。

そうした状況を打開すべく、中高年を対象としたキャリア再設計を後押しすることに専門特化した学校「ライフシフト大学」が2019年10月に開講する。人生100年・仕事人生80年を見据えた中高年の学び直しの場を提供するほか、転職先とのマッチングも行う。同学は就業者たるビジネスパーソンや経営・人事たる雇用側はもとより、少子高齢化という日本全体の雇用課題に向けた社会的意義を果たす。

働く個人、企業、社会、“三方よし”の世界を目指す

少子高齢化や労働力の減少といった日本社会の課題、そしてグローバル経済の不透明性など、世の中が目まぐるしく変化する中で、定年延長や副業解禁、そして若手アントレプレナーの台頭など様々なイノベーションが加速する動きがある現代社会。「1つの企業で定年の60歳まで勤め上げる」というのはもはや過去の話となり、ビジネスパーソンにおいてはさまざまな活躍の選択肢が広がっている。一方で、自らのキャリアをどう活かすべきか、あるいはそうしたミドル・シニアをどう確保・活用すべきか、労使のみならず日本全体の課題ともいえる。

ライフシフト大学の理事長は、株式会社ライフシフトのCEOで「40代からのライフシフト実践ハンドブック」(東洋経済新報社)の著者である徳岡晃一郎氏だ。40~50代の中堅層が短期間で変身資産をしっかり身に着け、定年前後にスムーズにライフシフトできる準備の場が必要と、ここ数年ずっと構想を温めてきたという。その具現化とカリキュラムへの落とし込みを担ったのが、CSOである佐々木弘明氏だ。
「誰もが、自分が変わろうとするきっかけや原動力となる資質や人脈といった魅力、すなわち『変身資産(自身でも気づいていない、今後にも生かせるキャリアや人間的魅力など)』を持っています。しかしながら、それを認識できていない人も多い。ライフシフト大学では、自身の『変身資産』への気付きと強みの再発見、そして学び直しによる市場価値の向上を目的としています。座学で概念を学ぶだけではなく、『実学』を重視していることも大きな特徴です。」佐々木CSOは、そう設立の目的について語る。

世界的なイノベーション研究者である一橋大学名誉教授 野中郁次郎氏に師事した徳岡CEOと、リーダーシップ研究の第一人者である神戸大学大学院教授 金井壽宏氏の教え子である佐々木CSO。大企業人事の経験もある両氏の出会いが、ライフシフト大学の誕生を一気に加速させた。
「私自身、これまで4社の上場企業で働き、転職のたびに履歴書や職務経歴書を書いてきました。企業の破綻や、M&A、早期退職といった大きな波も経験しています。そこで実感したことや、抱えていた迷い、そして道を拓いてきた経験を活かして、実践的なカリキュラムを策定しています。」

バラエティ豊富な講師陣もライフシフト大学の魅力だ。徳岡CEOと佐々木CSOが自ら教鞭を取るほか、モチベーションやイノベーション、コーチングなど、所属大学や企業の垣根を越え、各分野のトップランナーが顔を揃える。徳岡理事長の掲げるビジョンや社会的意義に共鳴し、手弁当で協力を申し出たという講師も多い。さらに、様々な企業や組織とのタイアップも進めていくという。

佐々木CSOは、ライフシフト大学の社会的意義についてこう話す。
「大企業の早期退職で多くのミドル・シニア層が市場に放出されていますが、残念ながらミスマッチも多く見受けられます。それは、短期間で決める必要に迫られ、自身でもよく分からないまま次の仕事先を決めているからです。ライフシフト大学で学び直し、自らの市場価値を高めていけば、そういったミスマッチも軽減できると考えています。これまでの経験を磨きなおした人が活躍し、企業の業績向上に貢献する。それによって、今の日本が抱える社会課題解決に近づく。働く個人、企業、社会に対する“三方よし”を目指しています」
働き盛りのミドル・シニア層をターゲットにしているため、勤務を継続しながら学べるように、講座は基本的にはオンラインでの受講および夜間と週末の開催となる。また、キャンパスは、品川にある株式会社富士通ラーニングメディアの共創スペースCO☆PITを利用する予定だ。CO☆PITは、「1人ひとりが自分らしく挑戦できる創発社会を創る」ことをコンセプトに場を提供している。同会場は開放的な空間で、いわゆる研修施設といった趣はない。
「リラックスしながら自由な発想でアイデアや知に磨きをかけられるような仕掛けが随所に施されている。たとえば、壁やテーブルなど「白い」部分は思いついたアイデアやメモを書き残せるようになっているほか、大人が持続的に楽しく学べるように至るところに遊び心を演出している。」(CO☆PIT城能氏)

自身の「変身資産」への気付きを得、知識やスキルを磨き直す、半年間のプログラム

カリキュラムとしては、半年間で「基礎コース」「教養コース」「専門プロフェッショナルコース」の3コースを受講するという建て付けとなっている。
まず5日間の「基礎コース」では、自分の現在の市場価値を知ることからスタートする。その上で自身の「変身資産」を浮き彫りにし、進む道を模索していく。つまり、“己を知る”ところから始まるのだ。社会人ともなると、企業の中での位置付けなどは認識をしていても、市場全体で自身を客観視する機会はなかなか得られないため、貴重な機会といえよう。市場価値は、株式会社企業変革創造の「市場価値測定テスト」により、ビジネス基礎能力や性格特性など、多角的かつ詳細な評価・分析レポートが得られる。そして、自分がどのような強みや資質を持っているのかを把握し、長期のライフシフト計画を立てていく。

「基礎コース」にて己を知り方向性を見据えた後は、「個別カウンセリング」を受ける。ここでは、自身のライフシフトビジョンを元に「専門プロフェッショナルコース」の中でどのような科目群を選択して学んでいくか、じっくりと相談した上で具体的な学びの道筋を立てていく。

続いていよいよ、5カ月間の具体的な学び直しのフェーズだ。「教養コース」と「専門プロフェッショナルコース」は、5カ月間並行して走る。

「教養コース」は、オンライン学習を主体に長期キャリア形成のための足元を固めることを目的とする。これまでの仕事経験の言語化や、学び直しへのきっかけづくり、そして進みたい道を発見するためのコーチングセッションを提供。コンサルタントによるコーチングの他、AIコーチによる学習最適化機能で、きめ細やかなサポートが可能だ。自宅にいながら学びたいという方のためにSchoo(スクー)によるオンライン学習やその他のe-ラーニングも豊富に用意している。修了後に続く新しいキャリアの土台づくりともいえよう。

「専門プロフェッショナルコース」では、「知の再武装」「市場価値アップ」「ライフデザイン」という3つの専門分野があり、ライフシフト大学の理念に共鳴して集った著名プロフェッショナル講師陣によるミニMBA講座や、資格取得支援を提供する。

「知の再武装分野」は、現在勤務している組織で長くバリバリと活躍するための“社内活躍”を想定した科目群。具体的には、マーケティング、ヒューマンリソース、イノベーション、コーチングなどを提供する。

「市場価値アップ分野」は、定年を待たずに社外に出て、80歳まで現役を目指して活躍するための競争力を磨く“社外活躍”のための科目群。アカウンティング、クリティカルシンキング、デジタルイノベーション、対人関係力等を磨いていく。

とはいえ、人生は仕事だけではない。そこで、「ライフデザイン分野」では、マネープラン、コミュニケーション、ストレスコーピングなどの科目で、人生100年を見据えた安心の人生設計をデザインする力を身に付ける。

座学のみならず、フィールドワークを設けていることも特徴的だ。中小企業での転職トライアルのインターンシップ、会社見学会、ライフシフト実践者のロールモデル講演会などが体験できる。
「単なるキャリアリプランではなく、実際にライフシフトを実践している経験者の話を聞き、その人生や情熱に直に触れることで感動を共に味わい、ライフシフト=人生の糧として再構築して欲しいと考えています」と、佐々木氏はロールモデル講習会の狙いについて語る。

インターンシップや転職マッチングといった“出口支援”も強み

自身の強みや市場価値を再認識し、学び直しをするだけではなく、卒業時にマッチした進路を高い確度で見つけられる“出口支援”もライフシフト大学の強みだ。インターンや会社見学会といった実技科目をカリキュラムに含み、中小企業・地方企業・海外進出企業などと連携していく。ライフシフト大学で学び直すような意識の高い優秀な人材は、多様なシーンで必要とされることは間違いない。すでに、各方面から非常に高い期待を寄せられているという。

ライフシフト大学が構築しようとしているスキームは、企業の人事にとっても救世主となり得る。「これからの時代に生き残るのは、“人材輩出企業”です。企業が社員に対して自律や選択、キャリアオーナーシップや学び直しの機会を提供できなければ、人材の惹きつけは難しくなる一方です。」(佐々木CSO)

インターンシップにおいては企業の抱える事業課題など具体的なテーマをもとにプロジェクトを組み、解決策を検討する。そこで優秀なプランを提案できれば、その企業に入社して引き続き当該プロジェクトに取り組む。そういったスキームの構築も行っている。

地方を中心とした中小企業でのインターンも、中小企業の協力を仰ぎながら、実施する。役職定年が迫るシニアマネジメント層や、U/Iターンを検討しているが仕事の伝手がない大企業のシニア層を、後継者不足で廃業の危機にさらされている中小企業に提案、うまくマッチした場合は後継者として迎え入れる。

さらにアジア圏を中心とした海外企業の現地インターンも行う。徳岡CEO、佐々木CSOの持つ海外進出企業のネットワークを活用するほか、海外進出企業と提携してマッチングを図る。

企業内でさらなるパフォーマンスを発揮するキャリア支援としても期待

しかし、転職だけが選択肢ではない。福利厚生や事業フィールドによっては、今いる企業に残った上でさらなる活躍を目指すことがベストという可能性もある。自らの市場価値やスキルの棚卸しを通じて、キャリアを見つめなおすことでミドル・シニアの新たな可能性を模索することができるだろう。また、様々な座学を通して自らのキャリアの可能性を再発見することや、インターンシップを通じた広い視野と新たな価値観の醸成にも期待できる。
今後はバブル世代がミドルからシニアに差し掛かってくることから、企業人事におけるミドル・シニア活用は大きな課題の一つに挙げられている。こうした世代をいかに活躍してもらい続ける人材にするか、制度とあわせてキャリア支援が重要になってくるだろう。

ライフシフト大学が目指す将来の姿を、佐々木CSOは「日本全体の人事部」と表現する。
シニア世代が知の再武装によって多方面に活躍の場を広げ、各企業も良い意味で早期退職を促すことでプロフェッショナル雇用の流動化を図るというものであるが、それだけでなく企業に留まり活躍するキャリアも、新天地で挑戦していくキャリアも、出来るだけ選択肢を広くミドル・シニア層には持ってほしいという想いの表れであろう。

「進む道に悩む中高年に対して、市場価値を提示した上で、『こういうことを学んだ方がいい』と提案できます。そして、今の仕事に留まってキャリアアップを図るのがいいか、外に出て新たな活躍の場を求めるのか、もしくは起業するのか、そういった選択肢を具体的に示す。企業内の人事部にはできないアドバイスを、私たちは行うことができるのです。」

どのような人材が集い、そこからさらに新しいキャリアが生まれるのか。ライフシフト大学の今後の動向に注目していきたい。

■ライフシフト大学 オフィシャルHP
https://lifeshift-univ.com/
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著者プロフィール

HRプロ編集部

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