こんな“地方大学就活生あるある”をご存じでしょうか? 地方大学に通うやや意識の高い3年生が、上京してインターンシップイベントなどに参加し、首都圏の学生との差に気づいてカルチャーショックを受ける、ということは以前からありました。ですがこの数年で、上記の内容とは別の部分で「就活における地方と首都圏での情報格差」が広がっているなあ、と感じます。今回は、この「就活情報の地域格差」について触れてみたいと思います。
第81回	地方の学生と首都圏の学生の間に横たわる「就活情報の地域格差」とは?
その前に、カルチャーショックについて、もう少し詳しく話しましょう。就活のため、この時期に地方から上京する大学3年生は、所属している学校の中では、かなり意識も意欲も高いつもりでいます。そうした自負を持ってイベントに参加するのですが、そこで首都圏の学生と一緒になると、自分が圧倒的に立ち遅れていることに気づいて落ち込む、という状況に陥るのです。

以前から言われていますが、これはレベルの差というより、慣れているか慣れていないかの部分が大きいです。首都圏にある企業に対しての就活の経験量が違うため、首都圏の学生が当たり前にできている質問が全然できない、といった場面に遭遇し、パニックに陥ってしまいます。ですが、慣れてくると自分もできるようになって「大したことないな……」と思うようになるようです。

次に、ここ数年で起きている「就活情報の地域格差」に話を移します。私が感じている格差は、情報収集のためのツールと、そこで得られる情報の“質”の違い、と言ったらいいでしょうか。困ったことに、たとえ地方の学生が首都圏で就活しても、その格差は以前よりもさらに生じやすくなっているように思います。

まず情報ツールの部分ですが、地方では相変わらず就活サイトが企業情報収集の中心となり、最後まで主役として機能している印象が強いです。一方の首都圏では、学生間の口コミや、就活専用SNSなどによる集客イベントなど、就活サイト以外の手段が増えてきています。人材採用競争が激化する中で、採用手法が多様化しているのでしょう。

地方学生にとって厄介なのは、そうしたツールを使っていない企業もあるため、大手就活サイトだけでもそれなりの情報が得られることです。ですから、よほど熱心に首都圏の就活生と情報交換をしないと、就活サイト以外を利用する場面にすら辿り着けないのでは、と感じています。

次に情報の“質”の問題ですが、これはSNSの特性そのものが影響しています。SNSは広く浅く情報を集めるツールというより、個人の好みや価値観に合った情報がどんどん集まってくる仕組みになっています。情報感度の高い学生(=優秀な学生という仮説にもとづく)を獲得したい企業(例えばスタートアップ企業など)が、そのあたりを狙ってSNSでプロモーションを仕掛けます。すると、そうしたプロモーションに反応する学生を介して情報が伝播し、リアルなコミュニティ形成へつながってきます。

しかしこの仕組みだと、いつの間にか首都圏の学生の間でコミュニティが形成され、地方の就活生は後から入っていきにくいのです。何らかのきっかけで、コミュニティの情報が取れるようなネットワークに入れるとよいのですが、それもそう簡単にはいきません。

加えて、情報の地域格差を生む理由はもう一つあります。それは、「スタートアップ」や「ゲームチェンジャー」といわれる企業のほとんどが首都圏に集中していることです。したがって地方の学生には、SNSで採用プロモーションを仕掛ける企業の動きが、ほとんど伝わってこないのです。

こんな話を書くと「じゃあお前が大学側でそうしたガイダンスをやればよいじゃないか」と、お思いになる方も多くいらっしゃるでしょう。実際すでに実施しているのですが、なかなか難しい状況です。

と言うのも、これらのことは実際に経験しないと理解できない部分が多く、ガイダンスで説明しても、学生自身があまりピンとこないのです。事実、こうした話は首都圏での就活を終えた4年生にはとてもよく響きますが、これから就活する3年生は、ただぽかんと口を開けて聞いているという状況です。そうした姿を見て、改めてこの問題について伝える難しさを感じました。
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