リクルートキャリアが、会員の十分な同意を得ないまま個人情報を販売していたことを認めて『リクナビDMPフォロー』サービスを廃止した事件について、各所でいろいろな方が話をしています。そのひとつひとつの意見について、私が個人的に思うところを4つのテーマに分けて書き綴ってみます。

>>学生の個人情報を販売していた『リクナビDMPフォロー』問題で、個人情報保護委員会が是正勧告
第82回『リクルートDMPフォロー』事件について、大学の就職支援室から思うこと

ただより高いものはない

リクルートのサービスは、利用者である学生は、ただで利用できるわけです。それだけに、単に「ユーザー」と呼んでいいのかという点が、私としてはすごく気になっています。

個人の利用目的とは異なる形で個人情報が使われていたため、学生側から「裏切られた」、「だまされた」といった声が挙がっていることも理解はできます。ですが、あまりに神経質になっているのを見ると、「いやいや、それなら使わなければいいのでは?」という印象を持ってしまうのです。

就活サイトのビジネスモデルは、基本的には“新聞の折り込みチラシ”のような発想から始まっていると思われます。ですが、リクルートが大きなシェアをとったことで、話がややこしくなってしまっているように感じます。

就活サイトは、GAFA(ガーファ:Google、Amazon、Facebook、Apple)と同じように、“ただで使えるサービス”で集客した個人情報をもとにビジネスを行っているわけですよね。この手のWEBサービスを無料で使う場合は、そうしたリスクをきちんと自覚して使いましょう、ということなのだと思います。

ただのサービスにどこまで求めるべきか?

これについては、最近よく話題になる“モンスタークレーマー”とも関係するかなあ、と思います。要は、「お客様は神様!だから何でも言うこと聞け!」という感覚ですね。

実際は、お客様は「神様」なのではなく、「価格に見合ったサービスを受ける権利を持っている」ということに過ぎません。価値に見合わないと判断すれば、別の商品に乗り換えればよいだけの話です。

逆に言うと、「ただなのだから、そういうものでしょ」ということを、学生に伝える良い機会なのかなあ、と。ですから、あまりこうした「お客様は神様!」という意見に対して過剰に反応する必要もないのでは、と感じています。

ただなのには裏がある

なぜ就活サイト各社が、大学で学生向けのさまざまなガイダンスを無料で実施してくれるかというと、それには当然ながら“裏”があります。要は、学生のエントリー数を稼ぐために行っているわけですよね。

大学側は就活サイト各社に、練りに練ったわかりやすいコンテンツで、学生への就職ガイダンスを無料で実施してもらう。その代わり、サイト登録に学生を誘導することを了承する、という形になっていると思います。

今回の件で、大学のキャリアセンターの皆様が、かなりお怒りになっていらっしゃいます。ですが、就活サイト各社も単なる好意でそうしたサービスを行っているわけではなく、“バーター取引”を前提に展開しているという事実を、もう一度思い起こす必要があるのではないかと思います。

ちなみに本学の場合、就職支援室で主催するガイダンスは、ほぼ自分たちで行っています。ひとつだけ、「就活ナビの使い方」というガイダンスのみ就活ナビ会社に依頼しているのですが、その場でのエントリー登録はお断りした上で実施しています。

「学生の心情への配慮が足りなかった」という言葉の背景...

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