今回のタイトルですが、もしかしたら歴史的な状況ではないかと思っています。少子高齢化、大手企業の地方大学生への積極的なアプローチなどで若者の中小企業離れに歯止めがきかない状況ではないでしょうか?いやいやそんなことはない、また景気が悪くなって大手企業の求人数が減ってくれば採用できるようになるのでは……。そのようにお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし私自身は今の求人難についてはこれまでの好景気時の求人難とはいくつかの点で意味あいが異なると考えております。
一つはこれからさらに進む少子高齢化のために若者の絶対数がさらに少なくなっていくという事です。2020年以降の国内景気の動向について個人的にはとても不安に思っていますが、とはいえ、若者の人口がどんどん減っていく中で新卒の学生数も減っていきます。そうすると新卒においては急激な買い手市場に代わるようなことはないのでは、と考えています。

二つ目はAIの進化による労働の質の変化です。これからAIが既存の人間の仕事を奪うという話があちこちで聞かれますが、では人間の仕事がなくなるかというとそんなことはないと考えております。ただ、現在人間が行っている仕事の一部は間違いなくAIに置き換わると思っております。端的には言われたことを言われたとおりにする作業的な仕事や、これまでに蓄積された情報の中から最適な解を見つけるような知的な作業はAIのほうが人間よりも優れているので、そうした仕事はいずれなくなるのでは、と思っています。そうした仕事に就くことが将来の労働市場での自分の価値を下げてしまうことはすでに地方の事務職の求人で顕在化しております。
※ご興味のある方は小職の第53回のコラム「事務職採用の罠」をご参照ください。

三つ目は現在の若者の気質の変化です。今の学生を見ていると優秀だなと思える学生ほど企業規模は気にしなくなっており、そうした学生は10年くらい前に比べると大手企業を志望しなくなってきているように感じます。創業したばかりのベンチャー企業にも平気で飛び込む学生も増えています。これまでは優秀層から順番に企業規模の大きな会社に入っていった感じなのですが、今は「企業規模を気にしない層」→「大手企業」→「中小企業」…というように全体の階層が一つ増えたような印象があります。この1〜2年の売り手市場では、これまで大手では難しいかなという学生も大手で採用されるようになっている部分もあり、それは中間層の学生の中小企業離れに拍車をかけている印象があります。優秀層は自分のやりたいこと重視で会社を選びますが、そうでない学生はどうしても規模を重視してしまいます。面白そうな会社だけど規模が小さいだけで不安になってしまうような学生が実は増えているといえるのでは、と考えております。

四つ目はこうした変化に対する中小企業の対応力です。変化に対応できている会社とそうでない会社との二極化が進んでいる中で、地方企業はこうした変化に対応できている企業があまり多くないのでは、という印象があるのです。優秀な人材を採用することは企業の今後の成長に大きな影響を与えることは言うまでもありませんが、「優秀な人材」の自社における明確な定義づけをせずに、学校名などのあいまいなパラメータで採用担当者が右往左往している会社や、こうした環境変化に対してあまり危機感を持たずに、従来通りの考え方で人材を採用育成しようとする会社が地方の中小企業には多いのでは、という印象があります。

一方で、自社に合う人材のスペックを明確化し、経営TOP自らが熱心に採用に取り組む企業も増えているのではないでしょうか?こうした会社が先述した企業規模にとらわれず自分のやりたいことや価値観を重視して会社を選ぶ層の学生をうまく捕まえているように感じます。学生時代からよく知っていて「こいつは優秀だな」と思える学生が、私も聞いたこともないような会社に入社している。そのあとも「いろいろ大変そうだけど社員に対してのフォローがとてもしっかりできているなあ」と感心させられるような話を時々聞くのですが、残念ながらそのほとんどが地方企業ではないという残念な現実があります。

いずれにしても、様々な形で人材の採用と育成の分野での大きな変革が起きつつあるのかなあ、と感じております。現在、地方では地方創生の流れで、地元に地元出身の若者を定着させ、若者の人材流出を防ぐ取り組みを官民挙げて行っているのですが、こうした取り組みにあまり有効な施策が取られていないように感じています。地方自治体がこうした地方企業の採用支援を行うこと自体は悪いことだと思いませんが、どちらかというと「与えるもの」「与えてもらうもの」という昔ながらの関係性が変わっていないように思います。劇的な環境変化が起こっていると想定すると、自助努力以外に生き残る術はありません。一生懸命支援をされている自治体の方々には申し訳ない言い方になってしまいますが、そうした中で自治体に何かを期待するというスタンスでは立ち行かないでしょう。自治体としてもこれまでのように広くあまねく公平に!という視点で支援を行うべきではなく、生き残る可能性の高い企業に積極的に支援し、そうした企業の事例を紹介し、本気で生き残りを考えているところに徹底的に肩入れし、あるいはそうした考え方を持つ企業の成長を支援すべきであり、端的に言うと企業の新陳代謝を促す政策をとるべきでないかと考えます。

いずれにしても何かを変えないとこのままでは総崩れになってしまうのではと危惧しております。
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