HR総研:「多様な働き方」実施状況調査【3】高齢者活躍推進65歳定年に向けて緩やかに進行中。

日本経済は将来に大きな不安を抱えている。「人口の減少」と「少子高齢化」だ。特に労働力の主体である生産年齢人口(15〜64歳)の減少は致命的と言える。安倍政権では、この解決策として「高齢者の就業促進」を積極的に進めてきた。60歳以上の社員継続雇用や定年延長への取り組みは、日本企業にどこまで浸透したのだろう。
今回実施したHR総研の調査によると、全体の8割近くが「65歳まで(それ以上含む)の継続雇用」を進めていることが分かった。一方で、「定年制の廃止」は3%と非常に低い。
「高齢者活躍推進」の現状と課題について、詳細は以下をご覧いただきたい。

●役職定年制の導入企業は31%。メーカーと非メーカーで顕著な差がみられる。

役職定年制とは、「定年退職を迎える数年前に管理職の役職を離れ、特定の仕事を担当するスタッフになる制度」である。
30年前の日本では、「55歳定年」が一般的であった。ところが、1998年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)が改正・施行され、60歳未満定年制が禁止された。それに伴い、定年に到達した55歳の社員をさらに5年間継続雇用する必要が生じた。彼らの多くが管理職であり、高水準の給与をもらっている。その給与負担が、企業にとっては重荷となった。「役職定年制」は、こうした企業側の負担を軽減するために導入された経緯がある。
今回、この制度を導入している企業の割合を調査したところ、「導入している」(31%)、「制度ではないが慣行としてある」(13%)という結果となった。「導入していない」は56%である。
「導入していない」の割合をメーカーと非メーカーで比較すると、メーカー(45%)、非メーカー(65%)となり、20ポイントという大きな差がみられた。役職定年制には、企業の給与負担を軽減するほかに、若年層の起用による組織の代謝を促す効果もある。メーカーのほうが、役職者に若年層が多いことが予想される結果となり、大変興味深い。

【図表1】役職定年制の導入率

●「65歳まで(それ以上を含む)の継続雇用制度を導入」は77%。

2006年になると、再び高齢者雇用安定法が改正され、新たに「高年齢者雇用確保措置」が追加された。この改正法は2013年に施行され、段階的に希望者全員を65歳まで雇用することが企業に義務付けれられた。具体的には、定年を65歳未満に定めている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、次の(1)から(3)のいずれかの措置を講じることが同法で求められている。
(1)定年の引き上げ
(2)継続雇用制度の導入
(3)定年制の廃止
こうした法的義務も含めて、企業は高齢者活躍推進に向けて、どのような措置を導入しているのだろう。調査の結果、「65歳まで(それ以上を含む)の継続雇用制度を導入」(77%)がトップとなった。「65歳まで(それ以上含む)定年年齢を引き上げ」(10%)、「定年制を廃止」(3%)はいずれも低い。
日本の定年制度が55歳から60歳に移行した際も、企業の多くは継続雇用制度を導入して、結果として60歳定年制が一般化したことから、今後は65歳定年制の方向に、緩やかに進むことが予想される。

【図表2】高齢者活躍推進に向けて導入している措置

●継続雇用の場合、「給与が変更される」「雇用形態が変更される」がトップ。

60歳以降の継続雇用を選択した場合、雇用形態にどのような変化が出るのだろう。
最も多い回答は「給与が変更される」(84%)、「雇用形態が変更される(嘱託・契約社員など)」(84%)だった。「定年前の条件と変更はない」(7%)は低い水準だ。フリーコメントでは、「仕事の役割が軽減される」という回答もあった。
また、「給与が変更される」と回答した企業に、元の給与と比較してどのくらいになるか質問したところ、「60〜70%未満」(25%)、「80〜90%未満」(23%)、「70~80%未満」(23%)が上位を占めた。
企業規模別で見ると、従業員数1001名以上の大企業では「60〜70%未満」(35%)が最も多く、301〜1000名の中堅企業では「70〜80%未満」(30%)、300名以下の中小企業では「80〜90%未満」(30%)が最も多い。つまり、企業規模が大きくなるほど給与の減額率も高くなることが分かる。

【図表3】継続雇用後の雇用形態に伴って変更される勤務形態や条件
【図表4】元の給与と比較して、給与が変更される割合

●定年到達者のうち、継続雇用を選択する割合は「80〜100%未満」(44%)が最多

実際に継続雇用を選択する定年到達者は、どれくらいの割合で存在するのだろう。
調査の結果、「80~100%未満」(44%)がトップとなり、「60~80%未満」(18%)、「100%」(15%)と続いた。
ここまでの結果を見ると、企業は定年到達者の継続雇用に努力しており、高年齢者の就業意欲も非常に高いことが分かる。人生100年時代と言われる現代では、60歳はまだまだ人生の半ばを過ぎたばかりだ。老いて引退するには、まだ早い。

【図表5】定年到達者に対する実際の継続雇用の比率

●進まない「高齢者のキャリア採用」。求められる「高齢者への期待」とは?

高齢者活躍推進に向けて導入している措置として、「60歳以上高齢者のキャリア促進」を挙げた企業は、わずか6%しかなかった。しかし、60歳以上高齢者のキャリア採用は、継続雇用以外の新たな選択肢として、今後の日本社会に必要な措置だろう。
では、企業は高齢者に何を求めているのか。求められる高齢者の資質とは何か。実際に高齢者のキャリア採用を進めている企業にその目的を聞いたところ、「熟練した技術や知見に対する期待」(56%)、「社会的信用や人脈に対する期待」(36%)、「経営やマネジメントの経験に対する期待」(31%)が上位を占めた。
継続雇用を選択しない高齢者は、定年と同時に「自らが培ってきた市場価値」という課題に直面する。定年までにいかに社員の市場価値を高めるか。企業経営を守る意味でも、人事に課せられた使命は大きい。
高齢者のキャリア採用について、フリーコメントを募ったところ、多くの意見を頂いた。肯定的な意見が多い反面、高齢者雇用特有の懸念も見受けられる。以下、いくつかを抜粋してご紹介する。

【肯定的なコメント】
・肉体的な労働での限界は否めないものの、若い世代以上に生産性の高い結果を創出できるシニアは、たくさん存在していると感じている。(1001名以上/メーカー)
・能力や意欲が条件に合致していたら、65歳超の方にも働いて欲しい。(301〜1000名/サービス)
・熟練した技術・経験・知見を持つ技術者であれば、70歳まで働くことが可能であると思う。(301〜1000名/メーカー)
・新入社員の育成担当として期待している。(300名以下/メーカー)
・多くの知識技術を持った方が多いので、若手のマネジメントに期待している。取引先の人脈も増えることにも期待できる。(300名以下/不動産)

【高齢者キャリア採用に対する懸念】
・受け入れる部門の側としては、本人が本当に業務についていけるか、健康状態は問題ないかなどの懸念があり、なかなか積極的に採用できない。(301〜1000名/情報・通信)
・健康のリスク等を伴うため、新規で採用するのは難しい。(300名以下/金融)

【図表6】60歳以上高齢者をキャリア採用する目的

●高齢者活躍の最大の課題は「高齢者のモチベーションの維持」(58%)

役職定年、継続雇用、高齢者のキャリア採用など、高齢者雇用の実態について見てきたが、高齢者活躍推進の課題はどこにあるのだろう。
調査の結果、「高齢者のモチベーションの維持」(58%)が最多となった。60歳定年後に継続雇用を選択した場合、高齢者には給与の減少、役職の解任、嘱託としての再雇用など多くの変化が押し寄せる。モチベーションの維持は、確かに大きな課題だろう。
以下、「世代交代の停滞」(37%)、「高齢者を部下にもつ年下管理職の能力」(33%)、「高齢者の健康管理」(30%)、「高齢者受け入れ組織のモチベーション維持」(30%)などが続く。
これらは高齢者受け入れ側が抱える課題だ。「高齢者の人件費」を挙げる企業は15%と低い。
高齢者が活躍できる環境作りとともに、高齢者のモチベーションを高め、高いパフォーマンスを発揮してもらう取り組みが求められている。

【図表7】60歳以上高齢者の雇用に関する課題
最後に、高齢者活躍推進について、各社の取り組みを伺った。いくつかを抜粋して紹介する。ぜひ参考にして欲しい。

・生産ラインにおいて、高齢者でも作業しやすい「シニアライン」を一部設置。(1001名以上/メーカー)
・56歳時(役職定年直前)での、「キャリア棚卸&今後の生き方を考える研修」の実施。(1001名以上/メーカー)
・ポストについて60歳以前と以降に差を設けていない。本人の能力、やる気と所属組織の後継者の有無によって、以前どおり部課長を続ける者もいる。本人のモチベーション維持と円滑な組織運営のために必要な措置だと思う。(301〜1000名/サービス)
・70歳定年制度を検討中。(301〜1000名/メーカー)
・ライフプランセミナーを30代から定年前まできめ細やかに進める。(301〜1000名/商社・流通)
・基本はラインオフして同じ職場で勤務継続。(300名以下/情報・通信)
・専門性の高い、お客様対応等経験が必要な業務に配置することで、後輩を育成。(300名以下/情報・通信)
・業務時間内に管理職として、若手に対する勉強会の時間を設けていただいている。(300名以下/不動産)

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「多様な働き方」実施状況に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2018年2月16日〜2月22日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び未上場企業の人事担当者・働き方改革、女性活躍推進等担当者
有効回答:213件

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