テレワークが急速に広まるなど、多様化が進む働き方について、企業は、どのような方針で社員の働き方の多様化に対応し、組織の在り方にどのような影響が出ているのだろうか。また、企業と社員がともにメリットを得られる働き方の多様化とは、どのような形なのだろうか。
日経リサーチとHR総研の共同調査として、企業の人事担当者(人事、以下同じ)と管理職から一般職までの正社員として働く人(従業員、以下同じ)の双方に対する自社の働き方の多様化に対する重視度や、それに付随するマネジメントの状態に関するアンケートを実施した。
現状の傾向を把握するとともに、今後、企業の発展に繋がる新たな働き方を検証した。以下に、フリーコメントを含めて調査結果を報告する。

<概要>
●コロナ禍以降の「多様な働き方」の重視度、「上がった」が6割
●「多様な働き方」の重視度は、企業のレジリエンス力に関係か
●コロナ業況良化の企業では、働き方のスタイルの自由度を高める制度の導入
●業況良化の企業でのメリットは「生産性の向上」「社員満足度の向上」「エンゲージメントの向上」
●利用状況においてもコロナ業況による差異が顕著
●キャリア形成の支援に向けた取組み等のメリットは、業況良化の企業で「優秀人材の確保」「従業員エンゲージメントの向上」など
●「オンライン会議ツール」「チャットツール」の活用が業況良化に貢献か
●業況良化の企業ほど、「社員の多様な働き方」と「人事評価制度」が働き方の多様さに適合
●企業の状態により従業員エンゲージメントが変化、特に従業員の所感で差異が顕著
●今後、社員の働き方の多様化を推進する方針の企業が6割以上

コロナ禍以降の「多様な働き方」の重視度、「上がった」が6割

まず、自社における「多様な働き方」への重視度については、「どちらとも言えない」が最多で41%となっている。次いで「やや重視している」が29%、「重視している」が19%で、これらを合計した「重視派」は48%と半数近くとなっている。(図表1-1)。
「コロナ禍以降の多様な働き方」の重視度は、「重視度がやや上がった」が最多で45%、「重視度が上がった」が16%で、これらを合計すると61%で6割を超える。一方、「重視度がやや下がった」と「重視度が下がった」の合計は僅か1%で、コロナ禍において、社員の安心安全の確保を目的とした、テレワーク推進が急速に拡大する社会の動きを、この数値からもうかがうことができる。

【図表1-1】「多様な働き方」の重視度
【図表1-2】コロナ禍以降の「多様な働き方」の重視度

「多様な働き方」の重視度は、企業のレジリエンス力に関係か

コロナ禍以降の業況(以下、コロナ業況別)は、「変化なし」が34%で最も多く、次いで「悪化したが回復傾向にある」が32%、「悪化し、回復していない」が17%などとなっている(図表2-1)。
また、コロナ業況別に「多様な働き方」の重視度について、「重視している」の割合を見ると、「良化している」企業群では50%、「やや良化している」企業群では24%、次いで「悪化したが、回復傾向にある」が23%などで、「変化なし」(10%)より高い割合となっている(図表2-2)。この結果から、「多様な働き方」の重視度は、企業のレジリエンス力に関係していることが推測される。

【図表2-1】コロナ禍以降の業況(以下、コロナ業況)
【図表2-2】コロナ業況別 「多様な働き方」の重視度

コロナ業況良化の企業では、働き方のスタイルの自由度を高める制度の導入

多様な働き方の中でも、「時間、場所に関わる働き方の多様化」に関わる導入制度や取組みの内容を、コロナ業況別に見てみると、すべての企業群において最も多いのが「テレワークの導入」で、やはりコロナ禍の強い影響がうかがえる。
「良化している」と「やや良化している」企業群(以下、良化した企業群)では、その他企業群と比較して「多様な勤務時間の導入」と「柔軟な勤務制度の導入」が高い一方、「悪化したが、回復傾向にある」と「悪化し、回復していない」企業群(以下、悪化した企業群)では、「残業時間の削減」や「有給休暇の消化促進」に取り組む割合が、比較的高くなっている(図表3)。
コロナ業況が良化している企業群では、働き方のスタイルの自由度を高める制度導入を進め、悪化した企業群では、勤務時間の削減に関わる取組みを進める傾向にあることを推測できる。

【図表3】コロナ業況別 「時間、場所に関わる働き方の多様化」の導入制度・取組み

業況良化の企業でのメリットは「生産性の向上」「社員満足度の向上」「エンゲージメントの向上」

次に、「時間、場所に関わる働き方の多様化」の取組み等によるメリットをコロナ業況別に見ると、最も高水準にあるのは「コロナ感染リスクの低減」で、コロナ禍における「テレワークの導入」の目的として、当然の結果となっている。それ以外のメリットを見ると、「生産性の向上」「社員満足度の向上」「エンゲージメントの向上」については、良化した企業群での割合が高く、悪化した企業群で低い傾向が顕著に出ていることが分かる(図表4-1)。
「時間、場所に関わる働き方の多様化」の取組み等による課題については、すべての企業群で「社内コミュニケーション不足」が圧倒的に高く、「やや良化している」企業群では86%と9割近くに上っている。コロナ業況が悪化するほど高い割合の課題は「生産性の低下」で、「悪化し、回復していない」企業群で50%に上っている(図表4-2)。
「時間、場所に関わる働き方の多様化」への取組み等は、コロナ業況が良化した企業群では「生産性の向上」というメリットに繋がる一方、悪化した企業群では「生産性の低下」という課題となっており、影響が真逆の形で表れている。

【図表4-1】コロナ業況別 「時間、場所に関わる働き方の多様化」取組み等によるメリット
【図表4-2】コロナ業況別 「時間、場所に関わる働き方の多様化」取組み等の課題

利用状況においてもコロナ業況による差異が顕著

「時間、場所に関わる働き方の多様化」に関する制度の利用状況について「利用されている」割合をコロナ業況別に比較すると、「良化している」企業群で57%と6割近くに上る一方、「悪化し、回復していない」企業群では23%と2割にとどまり、利用状況においてもコロナ業況による差異が顕著となっている(図表5-1)。
利用されない要因については、「職場に利用しにくい雰囲気がある」「業務の特性上、利用できない状態にある」「管理職層の意識が薄い」がともに43%で上位に挙がっている。制度導入や取組みを企業が行うだけでなく、従業員に利用されるものとして運用するには、職場の風土や意識の変容も併せて行う必要があるだろう(図表5-2)。

【図表5-1】コロナ業況別「時間、場所に関わる働き方の多様化」に関する制度の利用状況
【図表5-2】利用されていない要因

キャリア形成の支援に向けた取組み等のメリットは、業況良化の企業で「優秀人材の確保」「従業員エンゲージメントの向上」など

多様な働き方に関連して、「キャリア形成の支援に向けた導入制度や取組み」について見てみると、良化した企業群では「自己申告制度の導入」(64%)、「ジョブ型雇用」(50%)、「個人のキャリアプランに合った研修プログラムの提供」(36%)などの割合が他企業群より高くなっている。
一方、悪化した及び「変化なし」の企業群では、「特にない」が良化した企業群より顕著に高くなっている(図表6-1)。
導入制度や取組みによるメリットとしては、良化した企業群において、「優秀人材の確保」「自立的な業務遂行の推進」「従業員エンゲージメントの向上」「専門性の高い人材の確保」が上位に挙がっている(図表6-2)。

【図表6-1】コロナ業況別 キャリア形成の支援に向けた導入制度や取組み
【図表6-2】コロナ業況別 キャリア形成の支援に向けた導入制度や取組みによるメリット
これらの結果から、「時間、場所に関わる働き方の多様化」及び「キャリア形成の支援」に向けた導入制度や取組みは、いずれも「社内コミュニケーションの活性化」に関する直接的な効果に繋がっている傾向は見られていない。

しかし、コロナ業況が良化した企業群では、社内コミュニケーションの状況が「良い」と「やや良い」を合計した割合が、それぞれ71%、53%と半数以上に上っている一方、「悪化し、回復していない」企業群では24%と低い水準にとどまっている。したがって、コロナ業況が良好であるほど、多様な働き方への重視度が高いだけでなく、社内コミュニケーションの状況も良いことが推測される(図表6-3)。

【図表6-3】コロナ業況別 社内コミュニケーションの状況

「オンライン会議ツール」「チャットツール」の活用が業況良化に貢献か

社内コミュニケーションで活用される手段については、「良化している」企業群で「オンライン会議ツール」が最も高く86%、次いで「チャットツール」(71%)が挙がっており、「社内コミュニケーションに関するアンケート2021」(HR総研、2021年1月実施)の結果においても、効果的な社内コミュニケーションツールとして「チャットツール」と「オンライン会議ツール」が上位2つとなっている。これらの結果を踏まえ、コロナ禍以降においてテレワーク導入などの働き方の多様化が進む中、これらの手段が社内コミュニケーションの活性化に繋がっており、さらに業況の良化にも貢献していることが推測される。(図表7)。

【図表7】コロナ業況別 社内コミュニケーションで活用される手段

業況良化の企業ほど、「社員の多様な働き方」と「人事評価制度」が働き方の多様さに適合

続いて、自社における社員の働き方の多様さに対して、社内コミュニケーションや人事評価の在り方が適合しているかについての傾向を見てみる。
まず、社内コミュニケーションの適合については、コロナ業況が「良化している」企業群で「そう思う」(適合していると思う)が50%、「ややそう思う」と合わせると79%と8割に上っている。一方、「悪化し、回復していない」企業群では「そう思う」は僅か3%、「ややそう思う」と合わせても48%と半数未満となり、「そう思わない」と「あまりそう思わない」の割合は18%で、コロナ業況別では最も高い割合となっている。
したがって、業況が良化した企業群ほど、社内コミュニケーションが「社員の働き方の多様さ」に適合している状況がうかがえる(図表8-1)。

【図表8-1】コロナ業況別 社内コミュニケーションが「社員の働き方の多様さ」に適合しているか
次に、人事評価制度の適合について「そう思う」の割合をコロナ業況別に見ると、「良化している」企業群が最も高く36%、次いで「やや良化している」企業群で10%、その他企業群では3%となっており、コロナ業況が良化する企業ほど人事評価制度が「社員の働き方の多様さ」に適合している傾向が見られる(図表8-2)。
ただし、社内コミュニケーションより働き方の多様さに適合している企業の割合が全体的に低いことが分かる。

【図表8-2】コロナ業況別 人事評価制度が「社員の働き方の多様さ」に適合しているか

企業の状態により従業員エンゲージメントが変化、特に従業員の所感で差異が顕著

ここまでに、コロナ業況が良化した企業ほど働き方の多様化を重視し、そのメリットとして「従業員エンゲージメントの向上」や「生産性の向上」を挙げる割合が高く、さらに、社内コミュニケーションや人事評価制度の内容が「社員の働き方の多様さ」に適合していることが分かった。
そこで、現状の従業員エンゲージメントと企業全体の生産性の状態をコロナ業況別に把握するとともに、これらの向上に必要な企業の状態を検証してみた。
従業員エンゲージメントと企業全体の生産性ともに、コロナ業況が良化する企業ほど良い状態にあり、「良化している」企業群では従業員エンゲージメントの平均値はともに3.64であり、その他の企業群では3.19以下となっている(図表9-1)。

【図表9-1】コロナ業況別 従業員エンゲージメントと企業全体の生産性の状態(平均値)
従業員エンゲージメントと企業全体の生産性の関係を散布図で見てみると、従業員エンゲージメントの状態が上昇するほど、企業全体の生産性の状態も上昇するという関係性が表れている(図表9-2)。
したがって、図表9-1と9-2の結果から、従業員エンゲージメントの向上と企業全体の生産性の向上には正の相関があり、さらには業況の良化に繋がる関係性が示されている。

【図表9-2】従業員エンゲージメントと企業全体の生産性の関係
そこで、業況の良化に繋がる「従業員エンゲージメント」に、企業の状態がどのように関係しているかについて、「多様な働き方の重視度」、「社内コミュニケーションの適合度(取りやすさ)」、「人事評価制度の適合度(満足度)」の3要素を抽出して検証してみた。
企業の状態を下表に示すA〜Eの5タイプに分け、従業員エンゲージメントの平均値をそれぞれ算出したところ、人事の所感(※1)と従業員の所感(※2)ともに、タイプEの状態で最も高く、人事の所感では3.71、従業員の所感では3.94となっている。一方、最も従業員エンゲージメント平均値が低いのは、タイプAで人事の所感で2.69、従業員の所感で2.40となっている(図表9-3)。

※1「人事の所感」とは、人事向け調査における従業員全体の「従業員エンゲージメント」の傾向。
※2「従業員の所感」とは、従業員向け調査における本人の「従業員エンゲージメント」。

この結果から、多様な働き方の重視度、社内コミュニケーションの適合度(取りやすさ)、人事評価制度の適合度(満足度)が高いほど、従業員エンゲージメントが高いことが分かる。特に、従業員の所感で、企業の状態による差異が顕著である。

【図表9-3】企業の状態タイプ別 従業員エンゲージメントの状態

今後、社員の働き方の多様化を推進する方針の企業が6割以上

前述したとおり、社員の働き方の多様化を重視し、その他の人事制度や就業環境を働き方の多様さに適合させることで、従業員エンゲージメントが向上し、さらなる企業の発展に繋がる傾向が見られる。
このような中、「社員の働き方の多様化」に関する今後の企業方針は、「多様化をやや推進する」が最も多く47%、「多様化を大きく推進する」と合計すると63%で、6割を超える企業が「社員の働き方の多様化を推進する方針」としている(図表10)。

【図表10】「社員の働き方の多様化」に関する今後の企業方針

「社員の働き方の多様化」に関する自由意見

最後に、「社員の働き方の多様化」についてのフリーコメントによる意見を、一部抜粋して以下に紹介する(図表11)。

【図表11】「社員の働き方の多様化」についての自由意見(一部抜粋)
外国人採用に関する自由意見従業員規模業種
業務を考慮したときに、社員の一方的な希望を採用することはできないが、一部社員からは「権利の主張」が強くなされており、会社の考えるあるべき姿を徹底することが難しい(面がある)1,001名以上情報・通信
保守的な企業のため、社会的にかなり浸透・安定してからでないと働き方の多様化に向けた施策が実施されない。制度を時代に合わせていくにはスピードも大変大事で、早く多様性を取り入れ変化に適応できる企業が残ると考える。この点で最近、より不安を覚えている1,001名以上メーカー
経営層の意識改革が重要1,001名以上サービス
SDGsと関連し、益々重要な取組となる301〜1,000名商社・流通
計画的・戦略的に進める多様化とコロナ禍の影響で無理やり進んだ多様化は分けて考えるべき。今の状態では何がどの効果で影響なのかが判断が難しい状況301〜1,000名メーカー
ホテル・飲食業のため多様な働き方と言っても対応に限界があり、フルタイムで働く人にしわ寄せがくることになり現場の理解が得られにくい301〜1,000名サービス
マネジメント能力が低い管理職では、多様化と業務進捗管理を両立するのが難しいので、マネジメント層に対する意識とスキル向上が必須と思う300名以下メーカー
志望動機で、リモートワークを理由にする若手が見受けられるが、会社側はリモートワークでの育成には課題を感じているため、リモートワークをするには一定の経験やスキルがないと会社側と従業員側はどちらもストレス、きついと思う。リモートワークのメリットばかりが取り上げられ、若手は成長につながりづらいということがもう少し広まるといいと思う300名以下メーカー
答えのない現代において、様々な視点から課題に挑戦する上で多様性は必要不可欠300名以下金融
多様性が求められる風潮は感じるが、多様性の推進により問題が起こることはあっても、生産性を高めるとは思えない300名以下マスコミ・コンサル

【調査概要】

<人事向けアンケート>
アンケート名称:【日経リサーチ×HR総研】「企業の発展と社員の幸せを実現する、ニューノーマルな働き方」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2021年5月19日〜26日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、担当者
有効回答:200件

<従業員向けアンケート>
アンケート名称:【日経リサーチ×HR総研】「企業の発展と社員の幸せを実現する、ニューノーマルな働き方」に関するアンケート
調査主体:株式会社日経リサーチ
調査期間:2021年5月27日〜6月3日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:日経リサーチ保有のWEBモニターで以下条件該当者
      ・20代〜60代の 民間企業勤務の正社員
有効回答:1,104件(管理職以上:650件、一般社員:454件)

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当ページのURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
  ・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
  ・引用先名称(URL) と引用項目(図表No)
  ・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp

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