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企業不祥事の増加にみる「クレーム対応教育」の必要性

2014/02/18

先日、群馬県の食品工場で冷凍食品に農薬が混入されるという事件が発生した。工場で働く契約社員が容疑者とされ、自身の処遇に不満を持つことが犯行の原因と報じられている。

 今や企業は、常に不祥事発生のリスクにさらされている。いつ、自分の会社がテレビや新聞で報じられているような企業不祥事の当事者にならないとも限らない。企業が不祥事を起こすと、必ず増加するものがある。「クレーム電話」と「クレーム対応に疲弊する社員たちの姿」である。

 一昔前までは、「クレーム電話」の対応といえばお客様相談室など特定の社員の仕事と相場が決まっていた。しかし、高度なサービスレベルが求められる現代では、顧客の権利意識向上と相まって、すべての社員がいつクレーム対応の最前線に駆り出されてもおかしくない状態にある。「クレーム電話」に適切に対応することは、重要なビジネススキルのひとつであり、全社員へのクレーム対応教育の徹底が必須といえる。

 「クレーム電話」では、電話応対の序盤で適切な対応ができるかどうかが、対応の成否を分けるといわれる。この時点では、一般的に顧客は感情的になっているだけではなく、頭の隅に「どのような社員が対応をするのだろう?」という思いがあるものだ。このような心理状態を踏まえたときに重要なことは、「誠意をもって対応してくれそうな社員が出てきた」という第一印象を顧客に与えることである。言い換えれば、いかにして「不誠実な社員が出てきた」という印象を与えないかがカギになる。

 一般的に「クレーム電話」だと分かると、社員の側に「やっかいだ」という思いが生じる。すると、「やっかいだ」と思っていることが「口調」や「話し方の雰囲気」の端々にあらわれてしまうものである。声が暗くなる、声が小さくなる、相槌が単調になる、無口になる、不満げな口調になる、機械的な口調になるなどがその例である。

 クレームを申し出る顧客は、対応者のこのような「マイナスの感情」に極めて敏感に反応する。こちらが「嫌だな」と感じている雰囲気をあっという間に察知し、怒りが余計に収まらないという状況に陥ってしまう。クレーム対応が長期化する典型的なケースである。

 「クレーム電話」に対しては、対応の序盤で顧客に対して一生懸命さ、誠実さなどの「プラスの印象」をいかにして伝えるかが大切である。そのために必要なことの一つが、感情を込めた口調で話す技術である。「ご迷惑をかけて本当に申し訳ない」という気持ちを、可能な限り前面に出して話をすることが大切になる。多少大げさにでも、「申し訳ない、何とかしてあげたい」という一生懸命な気持ちを表現したい。あからさまに怒りをぶつけてくる顧客に対して、しっかりとこのような対応をできることが、クレーム対応の最初のポイントになる。「クレーム対応の仕組み」を理解していないと、これができない。

 このように、クレーム対応を社員に指導する場合には、クレームを申し出る顧客の心理状態を踏まえたうえで「何をすべきか」を教育することが大切になる。応対の序盤以外にも、「クレーム対応の中盤ではどうすべきか」「対応の終盤に差し掛かったら何に注意をするか」「個人攻撃を受けたとき、捨て台詞を吐かれたときには何を考えるか」など、教育すべき事項は少なくない。

 クレーム対応教育を受けていない社員が「クレーム電話」を受けている姿は、あたかも嵐が過ぎ去るのを、身を潜めてじっと待ち続けているかのようである。このような対応を繰り返していては、心への負担があまりに大きく、体調不良、休職、離職の原因になりかねない。不祥事を起こした結果、貴重な人材までも失うことのないよう、「クレーム対応には方法がある」ということを教育で伝えたいものである。


コンサルティングハウス プライオ 代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

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