三重県子ども・福祉部子育て支援課は2022年6月2日、「令和3年度不妊治療と仕事の両立に関するアンケート」の調査報告書を発表した。本調査は、同県が不妊治療と仕事の両立における課題を明らかにするために実施したもので、調査期間は2022年1月上旬~3月末日。「特定不妊治療費助成申請」のために自治体窓口に来所した人などから、計555件の回答を得ている。調査結果からは、不妊治療中の女性の働き方や職場のサポート体制の実態がわかった。
約9割が不妊治療との両立のために「柔軟な勤務形態」を要望。「サポート制度」がある企業は昨年比約1割増

1割強が不妊治療のために退職を選択。雇用形態を変えた人も

不妊治療をする女性は、現在どのように働き職場の支援を受けているのだろうか。はじめに三重県子ども・福祉部子育て支援課が「現在の就労状況」を質問すると、「就労している」が77.3%、「治療のために辞めた」が14.1%、「していない」が8.6%となった。

「治療に専念するため仕事を辞めた」とした人の割合は、前年度調査(9%)と比べて5ポイント上昇。その理由として、「治療のために急な休みを取ることや遅刻・早退することに対して、上司や同僚に後ろめたい気持ちや申し訳なさを感じた」という声が多く聞かれた。中には、上司から心ない言葉をかけられたという人もいるようだ。

また、現在就労中の人からは、「正社員からパートに変えた」や「就労日数を減らした」、「本当はフルタイムで働きたい」といった声も聞かれ、中には希望通りに働けていない人もいることがうかがえる。

このことについて、同課では「不妊治療では、決まった時間に注射を打たなければならないことや、採卵日が指定されることから、急な欠勤や遅刻・早退は避けられない。そういった治療に関する知識や理解が職場に浸透していないことが背景にあるのではないか」との見解を示している。
不妊治療をしている人の就労状況

就労している人のうち約7割は、「不妊治療をしていること」を職場の人へ伝えている

次に、同課が「不妊治療していることを職場の人に話しているか」を聞くと、「話している」が71.7%、「話していない」が19.3%、「その他」が9%だった。フリーコメントには、「上司にだけ話している」や「本当に仲が良い人にだけ話している」、「できる限り他の人には知られたくないので話していない」といった回答があった。
不妊治療していることを職場の人に話しているか

「治療中であることを職場に伝えるか」は職場の理解度が分かれ目に

次に、「勤務中の職場は、不妊治療について理解がある」と回答した人の割合を、「職場に話している」層と「話していない」層で比較した。その結果、「職場に話している」層では「理解がある」が64.9%だったのに対し、「職場に話していない」層では同割合が12.1%となっており、両者には52.8ポイントもの差があった。同課は、「職場に話しやすいかどうかは、不妊治療について理解があると感じられるかに直結していると考えられる」と推察している。
職場の理解度(治療のことを話しているか否かでの比較)

「不妊治療のサポート制度」があるのは3社中1社で、昨年よりも増加

次に、「職場に不妊治療をサポートする制度はあるか」を尋ねると、「ある」が34.4%、「ない」が51.3%となった。サポート制度の導入率は、前年度調査(約25%)から約10ポイント上昇しているようだ。
職場に不妊治療のサポート制度はあるか
また、「職場に治療のサポート制度がある」とした回答者に、「その内容」を聞くと、「柔軟な勤務形態」が49.7%で最も多かった。以下、「休暇制度」が40.1%、「その他」が7.5%、「助成金制度」が2.7%と続いた。フリーコメントからは、「休暇制度はあるが、休んだ分の仕事が同僚の負担になるため、なかなか取得しづらい」という声も聞かれた。
職場における不妊治療のサポート制度の内容

今後に向けて「社員や管理職の理解促進」を求める声も

最後に、同課が「職場においてどのようなサポートが必要だと思うか」を複数回答で尋ねた結果では、「柔軟な勤務形態」(86.8%)や「休暇制度」(76.5%)に回答が多く集まった。その他、「社員や管理職への情報提供・啓発」(38.9%)という回答もあり、これについては、社員研修などで不妊治療に対する職場の理解を深める取り組みを求める声もあった。
職場においてどのようなサポートが必要だと思うか
本調査からは、「職場の理解がない」と感じて不妊治療について伝えていなかったり、やむを得ず退職を選んだりしている人もいることがわかった。政府による『少子化社会対策大綱の推進(※)』や各自治体の取り組みが進められる中で、社員が仕事と治療を両立しやすい環境を作れるように企業側もサポートを強化していくことがますます重要になるだろう。

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