近年、「社内イベント」の効果に注目が集まっている。もともと、「社内イベント」は社員の帰属意識を高める、社員同士の関係性を形成するなどの効果があるといわれていた。コロナ禍で実施を一時的に控えていた企業もあるが、テレワークなどニューノーマルな働き方が広がり、社員同士の関係性が希薄になりがちであるだけに、改めてその目的や意義を見直し、コミュニケーション活性化のきっかけとして導入してみてはどうだろうか。本稿では、エンゲージメントやモチベーション向上、また企業理念の浸透など、目的別の「社内イベント」の企画や、効果を高めるためのポイントなどを解説する。
モチベーション向上につながる「社内イベント」の企画とは?  オンラインの事例や簡単なゲームを紹介

「社内イベント」の目的とは?

「社内イベント」とは、自社内で企画・運営したイベントを意味する。参加者も原則は社員だが、ファミリーデーのように社員の家族が招待されるケースもある。

◆「社内イベント」の目的

・コミュニケーションの円滑化
「社内イベント」の最大の目的は、社員間のコミュニケーションの円滑化だといえる。会社の規模が大きくなればなるほど、仕事で関連がない社員同士が言葉を交わす機会も少なくなる。日頃接点がない社員同士が交流する場を創出することで、コミュニケーションの活性化につながるとともに、チームワークの向上も期待できる。

・モチベーション、エンゲージメントの向上
社員のモチベーションやエンゲージメントの向上も、「社内イベント」を行う大きな目的となる。「社内イベント」をきっかけに、他部署のメンバーがどんな業務をしているのか、仕事に対しどのような価値観や目的意識を持っているのかなどを知ることで刺激を受け、意識の変革に影響を及ぼすといえる。また、日常的に接点がない社員に対しても、部署は異なっていても同じ企業で働く仲間だという一体感を持つことができる。

・企業理念(MVV)の浸透
企業理念の浸透は、企業にとって生産性やエンゲージメントの向上にも大きく影響する重要な課題だ。内定式や新入社員歓迎会などの「社内イベント」は、企業理念を浸透させる絶好の機会といえる。新入社員を含め、日頃接点のない社員にも、トップ自らが企業理念に込めた想いやその背景を語る機会となり、理解・共感を得やすくなる。形式は、オンラインであっても構わない。共有の機会を定期的に持つことが重要である。

懇親ランチ会などで、経営層と社員が会話する機会を作っている企業もある。経営層から経営理念やビジョンについてダイレクトに話を聞くことができれば、イメージもしやすく、理解が深まるだろう。

・離職防止
「社内イベント」を通じて、社内の人間関係の良好化や、社員のエンゲージメント向上も期待できることから、離職防止を目的として「社内イベント」を実施する企業も多い。さまざまな部署の社員と接すると仕事に対する視野が広がり、姿勢にも変化が生まれると考えられる。

「社内イベント」で使える企画やゲームの事例

次に、「社内イベント」の企画やゲームを、目的ごとに紹介していこう。

【コミュニケーション活性化向けの社内イベント】

・歓送迎会
新たに入社した社員の歓迎会を行う企業は多い。新入社員の緊張感をほぐし、コミュニケーションを取りやすくするためにも良い機会となる。

・新年会、忘年会
忘年会や新年会も、従来から社内交流の機会として多くの企業が実施している。近年はコロナ禍から開催を自粛する企業もあるほか、飲み会に対する意識の世代間ギャップがあることも多いため、社員全員が快く参加できる形式を改めて検討するのがいいだろう。

・シャッフルランチ
日頃関わりがない社員同士を無作為に抽出し、一緒にランチを楽しんでもらう機会を設けている企業もある。部署を越えて社員が一緒に食事をしながら、相互理解を深めることが狙いだ。

・クイズ大会、謎解きゲーム
クイズ大会や謎解きゲームも、盛り上がりが期待できる「社内イベント」だ。オンラインでもオフラインでも実施しやすく、気軽に参加できる。演出次第で参加者の満足度も上がるため、企画・運営を外部に委託する企業も増えている。

・スポーツ大会、バーベキュー
スポーツ大会としては、バスケットボールやバレーボール、サッカーなどチーム単位で競う球技大会が目立つ。また、専用施設も増え、食材の手配も手軽になっているため、バーベキュー大会も人気の企画だ。家族ぐるみで参加できる機会を作っている企業もある。

・ファミリーイベント
父親や母親がどんな職場で働いているのかを見てもらおうと、家族向けにファミリーイベントを実施している企業もある。職場の雰囲気を知ってもらえれば、仕事に対する家族の理解が深まり、社員のモチベーションも高まるだろう。

【エンゲージメント・モチベーション向上に役立つイベント】

・社内表彰式
社内表彰式を設けるほか、社員総会や朝礼など、多くの社員が集う場で高い成果を導いた社員を表彰している企業も多い。社員のモチベーションが高まり、生産性向上につながる効果が期待できる。

・ワーケーション
ワ―ケーションとは、「work(仕事)」と「vacation(休暇)」を組み合わせた造語だ。観光地やリゾート地などで、休暇を楽しみながら仕事もするという、新たな働き方である。これを「社内イベント」として全社員一斉に実施しようという試みが見られる。

・新規事業や新制度の社内コンペ
全社レベルで新規事業や新制度のアイデアを募集し、選考を通過したチームによる最終プレゼン審査会を実施するという企業もある。選ばれた事業案を事業化する権利をチームに与え、参加者のモチベーションを高めている。

【企業理念浸透に役立つイベント】

・周年記念イベント
企業では社内で節目となる年を祝う周年イベントを行うことがある。企業理念に基づく歩みを振り返る場であると同時に、新たな時代に向けた取り組みを発表する場として位置づけられている。

・決起会・キックオフミーティング
年度始めやプロジェクト立ち上げの際などに決起会やキックオフミーティング(キックオフイベントと称するケースもある)を開催する企業も見られる。一つの区切りとして行われ、定期的に企業理念やビジョンを共有する場として機能していることが多い。

・ボランティア活動
企業理念の実現の一環として、地域の課題解決に向け、全社員が一丸となってボランティア活動に参加するという企業もある。参加者同士で意見を交わしたり、協力しあったりすることで、地域貢献とともに、自発性のあるチームづくりを推進していくことができる。

◆「社内イベント」の企業事例

・サイボウズ株式会社
サイボウズは、活動のシェアや社内のつながりの場の提供などを目的に、さまざまな「社内イベント」を開催している。例えば、6月にはサイボウズ製品のサポートを担当しているメンバーに感謝を伝える「サポート感謝祭」を、12月には社内で「ありがとう」の投票を行い、多く感謝を集めた上位者を表彰する「サイボウズオブザイヤー」を行うなど、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上に効果的な独自イベントが多数存在する。

・楽天グループ株式会社
楽天グループでは、従業員同士のコミュニケーション促進を担う「楽天スマイルプロジェクトチーム」が中心となり、ファミリーデーやハロウィン仮装イベントなどの「社内イベント」を企画・運営している。ファミリーデーではプログラミング体験や楽器体験、ハロウィンイベントではフォトコンテストや影絵の専門劇団によるパフォーマンスの上演など、社員の満足度を高める工夫がされた企画が行われている。

「社内イベント」の企画・運営の手順

実際に「社内イベント」を企画・運営する際に、どのようなステップを踏めばよいか解説する。

(1)実施の目的を明確化する

最初に「社内イベント」を実施する目的を明確にしよう。目的に応じて企画内容が変わるため、目的を運営メンバーで共有することによって意見のずれがなくなる。「なんのために社内イベントを行うのか」、「社内イベントを通じて何を実現したいのか」を明確化することで、「社内イベント」の意義が増すだろう。

(2)運営メンバーをアサインする

「社内イベント」は一人で準備するのが困難なため、実施するにあたっては運営メンバーをアサインし、チームとして取り組んでいく必要がある。アサインしたメンバーには、イベント開催の目的や熱意をメンバーに伝えるようにしたい。

(3)企画内容を決める

「社内イベント」の目的を明確にした後、企画内容を決めていく。まずは運営メンバーで自由にアイデアを出し合い、その中から条件面を鑑みて内容を具体化させていくとよい。さまざまなイベントがあるが、企画内容は、目的に沿ったものであるかどうかを軸に考える必要がある。

(4)会場と日程を決める

企画内容が確定したら、実施する会場と日程を決めていく。社外で行うイベントの場合は、希望の日程に会場を確保できるかをまず確認しよう。実施日程は目的や企画内容によっても変わるが、多くの参加者を募るためにも繁忙期は避けた方がよい。

(5)社内へ実施を告知する

イベントの詳細が決定したら、なるべく早く、忘れずに告知しよう。社内掲示板やメール、社内SNSなど、告知の方法はいろいろ考えられる。日程が近くなると改めてリマインドを行うなど、社員全員にもれなく伝わるよう呼びかけたい。

(6)開催後の振り返りを行う

「社内イベント」の開催後には、その内容を運営メンバーで振り返り、達成できたことと反省すべき点を含め報告書にまとめておけば、次回以降の改善がしやすくなる。また、参加者へのアンケートを実施することで、参加者視点の意見も次回のイベントに反映できる。

「社内イベント」の効果を高めるポイント

最後に、「社内イベント」の効果を高めるためのポイントを説明しよう。

●社員が参加に意欲を持てる企画内容にする

「社内イベント」には、できる限り多くの社員に参加してもらうことが望ましい。社員の参加を促す方法はさまざまだが、まずは企画内容に魅力があるかどうかがポイントとなる。事前のアンケートや、過去に実施した際に反応が良かった企画などから、参加したいと思われるイベントの要素がなんなのかリストアップしてみるとよい。候補となっている企画案に対する意見を何名かの社員に聞いてみるのも一つの方法だ。

●参加の負担を少なくする

たとえ「社内イベント」に積極的に参加したいと思っている社員であっても、参加の負担が大きいと断念してしまう可能性がある。オフィス周辺またはオンラインでの実施にする、社員が使い慣れているツールを使った企画にするなど、なるべく参加の負担が少ない内容にすると参加率が上がり、本来の目的を達成しやすくなるだろう。

●さまざまな部署から運営メンバーを選出する

イベントの参加者を増やすためには、部署や年齢層などさまざまなコミュニティから運営メンバーを選出することが有効だ。それぞれの関係者が、「自部署の○○さんが運営しているから参加してみよう」というようにイベントに興味を持ちやすくなる。

●プログラム・マニュアルを作成し、トラブルを防ぐ

イベントのプログラムを作っておけば、運営メンバーはもちろん、参加者も当日の流れを把握でき、スムーズな進行がしやすい。また、イベントの中ではさまざまなトラブルが起きることもある。想定しうるトラブルの対処方法をまとめておくだけでも、混乱に陥る可能性が少なくなる。プログラムやマニュアルは、一度作成しておけば次回以降も活用できるため、会社のナレッジとしてストックしておきたい。

●オンラインツールは使いやすいものを選ぶ

コロナ禍から、オンライン上で「社内イベント」を実施する企業が増えている。その際に、利用されるのがWeb会議ツールをはじめとするオンラインツールだ。ツールによって、使いやすさが多少違ってくるので事前にどれが社員に受け入れられやすいかを確認しておくとよい。

●告知は複数回行う

日常業務の中で、運営サイドからの情報を見落としてしまう社員もいるため、イベントの告知は期間をあけて何度か行うとよい。リマインドになり参加率も高まる。毎回同じ告知をするよりも、回数を重ねる度にイベントのより詳細な内容を伝えるなどの工夫をすると、より興味を誘いやすい。


「社内イベント」には、コミュニケーションの円滑化・活性化やモチベーションの向上、経営理念の共有など、さまざまな効果がある。さらに、定期的に実施することでイベントの運営もブラッシュアップでき、目標も達成しやすくなる。社員一人ひとりが生き生きと働く一方、チームとして、そして組織としての一体感も持つことができる職場を作り上げていくためにも、「社内イベント」をチームビルディングに活用したい。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!