同社は今回、「従業員の働きがいに関する企業内の実態調査2021」として「テレワーク環境下における縦・横コミュニケーションの実態調査」を実施。結果をオンラインセミナーで解説するとともに、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授 前野隆司氏による講演や、前野氏とGPTWジャパン代表 荒川陽子氏の対談も実施し、「テレワーク環境下における働きがい向上」に迫った。本記事で同セミナーの内容を紹介する。
コミュニケーションの実態調査から読み解く、テレワーク環境下でも「働きがい」の高い組織の条件とは――調査結果発表
【分析・解説】GPTWジャパン シニアコンサルタント 今野敦子氏
最初に、GPTWジャパンシニアコンサルタント 今野敦子氏による調査分析報告を、サマリーで紹介する。日本国内では新型コロナウイルスの感染拡大は落ち着いたものの、依然としてその脅威は続いている。社会活動もWithコロナを前提とした「新たな生活様式」が取り入れられており、その波は働き方にも及んでいる。そこで一気に浸透したのが「テレワーク」だ。数年前、テレワークは働き方改革において、DX化や健康経営の観点から注目されていたが、なかなか企業には受け入れられていなかった。これが、コロナ禍で一変。感染拡大を防ぐべく導入し、そのまま続けている企業は多く、今では、「多様な働き方」の有力な選択肢の一つとなっている。そこでGPTWジャパンは、「テレワークにありがちな組織課題を回避しながら、働きがいの高い組織であるための条件」を分析しようと、「テレワーク環境下における縦・横コミュニケーションの実態調査」を実施した。概要は図表1の通りだ。図表1:調査概要
図表2:分析した手法の紹介
テレワークの成果実感をもたらす要因とは
テレワークを導入している企業にテレワークの成果実感を尋ねたところ、「期待通りの成果が出ている」が37.2%、「ほぼ期待通りの成果が出ている」が49.4%と、合計86.6%が成果実感を持っているという結果だったという。一方、「あまり期待通りの成果が出ていない」が5.5%、「期待通りの成果は出ていない」が0%、無回答が7.9%と、一部、成果が出ていないと感じている人もいたそうだ。では、テレワークにおいてどのような変化があれば、テレワークの成果実感が上がるのだろうか。「生産性」と「ワークライフバランス」の2つの指標で分析したところ、「テレワークで生産性が上がった」と感じている群では、「テレワークの成果実感」において統計的な有意差がみられ、「テレワークでワークライフバランスが向上した」と感じている群では、成果実感の有意差が見られなかった(図表3)。この結果を踏まえ、今野氏は「つまり、『生産性の向上』が確認できなければ、たとえ『ワークライフバランスの向上』の実感があったとしても、テレワークの成果実感は得にくいことが推測される」と考察した。
図表3:テレワークの成果実感に影響する職場の変化
テレワークの成果実感と、コミュニケーションの実態の関係
「縦・横のコミュニケーション」が「テレワークの成果実感」にどう影響するのだろうか。結果では、成果実感が得られている群ほど「縦のコミュニケーション」と「横のコミュニケーション」の両方の得点が高かった(図表4)。今野氏はこれを「縦・横のコミュニケーションが良好であることは、テレワークの成否と関係していると考えられる」と分析。さらに、テレワークの成果実感が高い群では、総合設問によって数値化した「働きがい」のスコアも高い結果になったという。図表4:テレワーク実施企業とコミュニケーションの関係
コミュニケーションの経年変化から紐解く、テレワークで重視すべきポイント
加えて、テレワークの成果実感別に、コミュニケーションの経年変化を調べている。「縦のコミュニケーション」の得点は、成果実感について「期待通りの成果が出ている」と回答した群と、「ほぼ期待通りの成果が出ている」と回答した群で、2020年度から2021年度にかけて統計的に有意に上昇。なかでも「期待通りの成果が出ている」と回答した群では、70%(2020年版調査)から74.7%(2021年版調査)と、最も上昇した(+4.7ポイント)。さらに2020年版調査、2021年版調査の両方において、成果実感の群間に統計的な有意差が確認されたという(図表5)。今野氏はこれを「コロナ禍前から『縦のコミュニケーション』が活発な企業ほど、コロナ禍で『テレワークの成果実感』が高くなる可能性が考えられる」と解説する。図表5:「縦のコミュニケーション」の経年変化
図表6:テレワークの成果実感と横のコミュニケーションの関係