昨今、研修のオンライン化がどんどん進んでいます。HRテクノロジー業界では、オンライン上で研修が完了するツールや、OJTをオンラインでできるツールが次々と登場。企業側でもテレワークに対応するため、Zoomを活用したリアルタイム研修だけではなく、ラーニングマネジメントシステムを導入して動画配信による学習を強化しています。従来の対面型の集合研修が姿を消す中、人材育成部門の担当者は、試行錯誤を重ねながら社員教育のオンラインコンテンツを準備しているのではないでしょうか。そこで今回は、「オンライン学習時代のコンテンツづくり」について考えてみます。

教育研修は「オンラインコンテンツ」の時代へ

HR総研が昨年8月末に実施した調査(※)によると、2020年は「オンライン講座」、「eラーニング」の割合が前年比2割増しになったそうです。また、最近の大手企業の求人動向を見てみると、「デジタル学習コンテンツ企画」や「eラーニング担当」といった、デジタルを活用した人材育成を担う人材を募集しているのを見かけます。自治体でも、こうしたオンライン学習コンテンツの企画担当者を積極的に募集しており、今後はどんどん「人材育成の在り方がデジタル化する」という流れがきていると感じています。

こうした企業や自治体の「eラーニング担当」の求人票を読んでみると、単なる研修企画能力だけではなく、学習管理システムの導入やデジタルコンテンツの企画・作成能力も求められているものが多いようです。つまり、「企業内部で社員向けのデジタルコンテンツを積極的につくろう」という動きが始まっていると考えられます。

従来のeラーニングは、外部のベンダーにコンテンツ作成を依頼、あるいは、ある程度の量のデジタルコンテンツをパッケージ化したものを購入してきました。実際にグロービスの「学び放題」は、グロービス大学院で教えているMBA関連のコンテンツが充実しており、株式会社ニトリなどの大手企業で導入が進んでいます。

一方で、外部のコンテンツに頼っていると、社員の社内知識が身につかないだけではなく、社内に教材作成のノウハウが溜まっていかないというデメリットがあります。また、既製品よりも、社風や会社の習慣に合わせたオリジナル学習コンテンツの方が学習効果は高いと言えるため、対面での研修が難しくなってきたいま、大企業では自社独自の学習コンテンツづくりに取り組んでいるのです。


※ HR総研:人材育成「新入社員研修」に関するアンケート調査 結果報告(2020年)

動画には「面白さ」が求められる時代

現代は、世の中のすべてのものがコンテンツ化する「コンテンツ社会」と言えます。戦争が終わり、物質的にも精神的にも豊かになった平和な現代では、人々は生存欲求や物質的欲求よりも、質の高い情報や体験を求めています。SNSでも、コンテンツ性が高い「面白さがあり興味を引く投稿」が人々の注目を集めています。

これに伴い、会社での働き方も「コンテンツ化」しつつあります。働き手には、より働きがいがあり、働くことで自己成長や達成感が得られる「ストーリー」を持った会社が選ばれています。こうしたコンテンツ性は、いまやあらゆるシーンで求められているのです。

オンライン学習にしても、以前は「eラーニング」と言えばあまり興味を持てないものが中心で、講師が2時間もひたすら話し続ける映像を、ずっと椅子に座って見続けなければいけませんでした。しかし現代では、YouTubeやNetflixが普及し、動画は「手軽で面白いもの」というイメージが定着しているため、企業内の学習コンテンツも「面白さ」がなければすぐに飽きられてしまいます。ましてやテレワークの時代では、企業が用意する学習コンテンツが魅力的でなければ、社員は「流し見」して完了させてしまうでしょう。

企業が人材育成部門に、デジタル学習コンテンツに専門性のある人材を雇い入れる理由がここにあります。つまりオンライン学習においては「面白さ」と学習効果を両立しながら、社員が必要な時に必要な知識やスキルを学べる設計をしなければならないのです。高度な人材育成の知識に加えて、デジタルの知識、さらに動画コンテンツの作成知識を持った人材育成担当者が強く求められています。

これからの人事担当者は「コンテンツ力」を磨くべき

そうはいっても、なかなかこうした条件に当てはまる人材はいません。そのため「デジタル学習担当者」の人件費相場は高めに設定されており、年収700万円以上で募集をかけている企業も見かけます。そうなると、やはり今後は社内でも「デジタル学習時代に対応した人材育成担当者」を育成するしかありません。

デジタル学習の担当者は、まず基本的な人材育成の企画スキルを持ち合わせているべきでしょう。最低でも2〜3年以上の研修企画経験が必要だと言えます。その上で、映像制作の知識も必要です。しかし「映像制作の知識を持った人材育成担当者」はなかなかいませんので、まずは社内で動画配信にチャレンジしてみて、少しずつ知識を身に着けていくのがよいと考えます。最近では、社内に動画教材作成用の専用スタジオを設ける人材育成部門も多いそうです。撮影はプロに任せるとしても、プロデューサーとして、学習コンテンツを動画化する一連の流れはマスターしておくべきでしょう。

よいコンテンツをつくるには、インストラクショナルデザインなどの基本の学習理論を学んだうえで、YouTubeでヒットしている作品を見てセンスを磨くことが求められます。同時に、自分自身でもブログやSNS等で発信をしながらコンテンツ力を磨かなければなりません。現代の社員は、YouTubeなどの動画コンテンツを大量に目にしています。こうしたものと比べても遜色ない学習コンテンツをつくることが理想です。なるべく短時間で、必要な情報が詰まっていて飽きさせない。そんな学習コンテンツづくりができれば、社員が積極的に学習に取り組むようになるかもしれません。

これまでの人事担当者は、どちらかと地味なイメージでした。人材育成担当者も、研修を外部ベンダーに依頼して、研修を運用するという仕事だったのではないでしょうか。しかし、全てがコンテンツ化していくこれからの時代は、高い企画力に加えて、コンテンツ制作力が必要です。人材育成担当者に限らず、採用PRでもコンテンツ性は求められますし、社内の「働きがい」や「やりがい」づくりでも、「会社」というコンテンツづくりが求められるでしょう。

エンプロイーエクスペリエンスと言われるように、従業員体験を追求するにはコンテンツ性が不可欠です。人事担当者は、会社の中に閉じこもらず、積極的に社外の物事に触れ、コンテンツ力を高めていきましょう。社員の学習や会社づくりに「面白さ」を取り入れることができるようになれば、会社はもっと魅力的になると言えます。
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