なぜ周りは動いてくれないのか 〜相手のタイプと状況に応じた説得の技術(前編)

人・組織にかかわる調査報告『人材開発白書』

成果をあげるために、ミドルマネジャーは何をすべきなのでしょうか。人を通じて成果をあげることがミドルの仕事です。ミドルが孤軍奮闘しても効果は望めません。しかも、働きかける相手は部下だけではありません。上司や他部門など、周囲のあらゆる人を巻き込まなければなりません。しかし、単に理路整然と説明するだけでは、相手は受け入れてはくれません。熱意だけでも相手は動かせません。周囲を動かすために、ミドルはどのような影響力を行使すべきなのか。国内のビジネスパーソン1,500人への定量調査結果をもとに説明します。
マネジメントを発明したといわれているピーター・ドラッカーは、このように述べています。

「長期にわたって有能だった人が、なぜ急に凡人になってしまうのか。彼らは新しい任務についても、前の任務で成功したこと、昇進をもたらしてくれたことをやり続ける。彼ら自身が無能になったからではなく、間違った仕事のやり方をしているからだ。」(注1)

部下を通して仕事をするのが、マネジャーです。マネジャーが自分で仕事をしてしまってはいけません。部下と一緒になって、個人では成し遂げられないような成果を上げることが期待されているのです。
そのために必要となるものが、相手を動かす影響力です。そしてそれは、部下に対するものだけではありません。部下を動かすために働きかける相手は、部下だけではないからです。組織目標を達成するために、他組織の協力を取り付けなければならないことは少なくありません。また、新たな取り組みを進めるために、上司から承認を得たり予算を引き出さなければならないこともあります。四方八方に対して影響力を発揮しながら、ものごとを進めていくのがマネジャーなのです。

それでは、部下、横の組織、上司それぞれを動かすには、何がポイントになるのでしょうか。こうした問題意識のもと、本人(マネジャー:課長クラス)を取り巻く部下、横の組織(課長クラス)、上司(部長・事業部長クラス)それぞれ500人に対する定量調査を実施しました。
調査では、図表 0-1に示す「影響力の源泉」、「相手の認知」、「相手の意向」、「行動」という4階層のフレームを用いました (注2)。分析目的が、相手の「行動」をもたらすミドルマネジャーの「影響力の源泉」を知ることだということを考えれば、右端と左端の2つだけで十分です。しかし、影響を与えるメカニズムを調べるために4階層にしました。
そして、項目間の関係性を分析することで、「影響力の源泉」から「行動」に到達するまでの、効果的なルートを抽出しました。分析方法の詳細は、『人材開発白書2014』もしくは『戦略の実行とミドルのマネジメント』(同文舘出版)をご参照ください。

注1:P. F. ドラッカー 『プロフェッショナルの条件』(ダイヤモンド社 、2000年)。
注2: Katz, D and Stotland, E. (1959) A preliminary statement to a theory of attitude structure and change. S. Koch (Ed.), Psychology: A study of a science, Vol. 3. McGraw-Hill, New York, pp.423-475.および予備調査結果をもとに作成。Kats and Stotland (1959)では、「態度」の定義を、認知的側面+評価的側面+行動的側面としている。

著者プロフィール

富士ゼロックス総合教育研究所 研究室長/首都大学東京 大学院ビジネススクール 非常勤講師 坂本 雅明

1969生まれ。1992年にNEC入社。NEC総研を経て2006年より現職。戦略策定・実行プロセスの研究に従事。また、戦略策定の研修・コンサルティング、戦略策定合宿の企画・ファシリテーションを担当。一部上場企業の顧問として中計策定や新事業開発、子会社の経営支援にも携わる。首都大学東京では社会人学生向けに戦略策定コースを担当。一橋大学大学院修了(MBA)、東京工業大学大学院博士後期過程修了(博士(技術経営))。
主要著書に『戦略の実行とミドルのマネジメント』(同文舘出版、2015)、『事業戦略策定ガイドブック:理論と事例で学ぶ戦略策定の技術』(同文舘出版、2016)
富士ゼロックス総合教育研究所『人材開発白書』

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