HR総研:テレワークの実態に関するアンケート 結果報告(1)テレワーク廃止しない企業は7割近く、好調な企業では「会社からの情報発信」を重要視

これまでも大企業を中心に、育児や介護などの理由によりテレワークを可能とする企業はあったが、実際にテレワークを活用する社員は少数派であった。また、首都圏を中心に東京オリンピック・パラリンピック期間の交通混雑回避を目的とした、テレワーク推進の動きも出てきたが、それでもテレワークを積極的に実施する企業は少数派であり、実際の利用者も一部の社員に限られていた。しかし、今年2月からの新型コロナウイルス感染拡大の影響が高まり、さらには4月7日の緊急事態宣言発令に伴う「外出自粛」により、わずか2ヶ月程度の間に、半強制的にテレワークを実施する企業が激増する事態となった。このような中、企業におけるテレワークの運用状況はどのようになっているのだろうか。
HR総研では、Withコロナ・Afterコロナ時代における、より効果的なテレワークの在り方を探るため、緊急事態宣言解除後の5月27日〜6月3日に実施した「テレワークの実態」調査の結果を2回に分けて報告する。今回は、「テレワーク実施の目的と課題」、「テレワーク中の研修方法と運営状況」、「テレワークの留意点と今後の方針」等である。

<概要>
●現在テレワークを実施している企業は9割近く、中小企業でも7割以上
●新型コロナ対応として緊急的に開始した企業が半数以上
●「在宅勤務」が98%、以前から実施する企業では「モバイルワーク」や「サテライトオフィス勤務」も活用可能
●テレワークを実施する目的は「新型コロナ対応」が9割
●以前から実施する企業では「上手く運用できている」が100%、事前準備とノウハウが活かされる
●目的達成率は「社員の移動時間の短縮」と「新型コロナ対応」が9割近く
●直面した課題も懸念事項と同様に「労働実態を把握しにくい」が最多ながら、半数未満に減少
●テレワーク社員に対するOFF-JT研修、「オンライン対応」が明暗を分ける
●好調な企業では「社内ルールやメッセージの発信」を重要視
●テレワーク推進派は2割、働き方の選択肢に定着するか

現在テレワークを実施している企業は9割近く、中小企業でも7割以上

企業におけるテレワークの実施状況については、「一部社員を対象に実施している」が最多で46%、次いで「全社的に実施している」が40%、「実施予定はない」が10%などとなっている。この結果より、9割の企業でテレワークを実施した経験があることが分かる(図表1-1)。
今年2月末に実施した「働き方改革に関するアンケート」の結果では、47%の企業が「導入予定はない」としていたが、その後3ヶ月間でテレワーク導入の流れは大きく広がっている。この要因は言うまでもなく新型コロナウイルス感染拡大の影響であり、皮肉にも、人々の働き方の変化に著しく寄与することとなった。
企業規模別に見ると、従業員数1,001名以上の大企業と301〜1,000名の中堅企業では9割以上が「全社的に/一部社員を対象に実施している」としており、「実施予定はない」とする企業の割合はわずか4%となっている。一方、300名以下の中小企業では、「全社的に/一部社員を対象に実施している」は75%で、「実施予定はない」は16%となっており、これまでの実施状況と比べると十分に高い割合であるものの、大企業や中堅企業と比べると、実施率が低い状況にある。(図表1-2)。

【図表1-1】テレワークの実施状況
【図表1-2】企業規模別 テレワークの実施状況

新型コロナ対応として緊急的に開始した企業が半数以上

テレワークを実施している企業が大半を占めているが、現在の形での実施の契機となった時期としては、「新型コロナの影響により対象者を拡大して実施」が37%で最多で、「新型コロナの影響により導入・実施」が34%、「緊急事態宣言により導入・実施」が18%、「新型コロナは関係なく、以前から実施」が11%となっている(図表2-1)。
「新型コロナの影響により導入・実施」と「緊急事態宣言により導入・実施」を合計した「新型コロナの影響/緊急事態宣言により導入・実施」が52%と過半数を占めており、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、事前準備が十分に整わない中で緊急的かつ半強制的にテレワークを導入・実施せざるを得なかった企業が多いことがうかがえる。
企業規模別に見ると、大企業では「新型コロナは関係なく/対象者を拡大して実施」が77%と、8割近い企業が新型コロナ以前から実施していたことが分かる。ただし、「対象者を拡大して実施」の企業が62%となっており、これまでのテレワーク利用者は限定的であった企業が大多数を占めている。一方、中小企業では「新型コロナは関係なく/対象者を拡大して実施」は28%にとどまり、7割以上が新型コロナ対応として緊急的に実施していることが分かる(図表2-2)。

【図表2-1】テレワーク実施の開始時期
【図表2-2】企業規模別 テレワークの実施の開始時期

在宅勤務が98%、以前から実施する企業では「モバイルワーク」や「サテライトオフィス勤務」も活用可能

テレワークの実施経験がある企業における、実施している(していた)テレワークのタイプについては、「在宅勤務」が98%とほとんどの企業で実施されているのに対して、移動先や移動中でPC等を使う働き方である「モバイルワーク」は34%、「サテライトオフィス勤務」は17%にとどまっている。本調査の実施期間が全国的な緊急事態宣言の解除直後の時期であったため、主に、新型コロナウイルス感染予防のため外出自粛を前提としたテレワークを実施している企業が多く、「在宅勤務」が100%に近い割合で実施されていたのに対し、外出を伴う「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」が低調にとどまったのは理にかなっているといえる。(図表3-1)。
企業規模別に見ると、いずれの企業規模においても「在宅勤務」は100%に近い割合で実施されており、それに追加する形で、大企業では「モバイルワーク」が46%と半数近い企業で実施されており、「サテライトオフィス勤務」31%と3割で実施されている。一方、中堅企業や中小企業では、「モバイルワーク」や「サテライトオフィス勤務」の実施率は低く、新型コロナウイルスの影響で新たにテレワークを実施し始めた企業が半数以上であることからも、「在宅勤務」を前提としたテレワークを緊急的に導入していることがうかがえる(図表3-2)。
実際に、テレワーク開始時期と実施するテレワークのタイプの関係を見ると、「新型コロナは関係なく、以前から実施」とする企業では「モバイルワーク」の実施率は60%で、「サテライトオフィス勤務」の実施率は40%と、「新型コロナの影響により/緊急事態宣言により導入・実施」の企業より顕著に高い傾向にある(図表3-3)。

【図表3-1】実施している(した)テレワークのタイプ
【図表3-2】企業規模別 実施している(した)テレワークのタイプ
【図表3-3】実施開始の時期別 実施している(した)テレワークのタイプ

テレワークを実施する目的は「新型コロナ対応」が9割

テレワークを実施している企業のその目的として最も多いのは、もちろん「新型コロナ対応」で91%となり圧倒的である。大きく離れて「BCP対策」と「社員の移動時間の短縮」がともに38%となり、次いで「通勤弱者への対応」が31%などとなっている(図表4-1)。
企業規模別に見ると、大企業では、「新型コロナ対応」(93%)、「社員の移動時間の短縮」(50%)に次いで、「業務の生産性向上」が46%と半数近くになっており、テレワークを社員の安全確保手段だけでなく生産性向上の手段として積極的に活用することで、企業の業績向上に繋げようとする意思がうかがえる(図表4-2)。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない時期での結果としては、「新型コロナ対応」が圧倒的に多いのは当然の結果であるが、今後、テレワークを継続的に実施していく企業において、その目的がどのように変化していくか注目していきたい。

【図表4-1】テレワークを実施する目的
【図表4-2】企業規模別 テレワークを実施する目的

以前から実施する企業では「上手く運用できている」が100%、事前準備とノウハウが活かされる

新型コロナウイルス感染拡大への対応としてテレワークを実施している企業が大半の中、その運用状況はどのようになっているのだろうか。
「まあまあ上手く運用できている」が58%で最も多く、次いで「どちらとも言えない」が25%、「あまり上手く運用されていない」が10%などとなっており、「非常に上手く運用できている」はわずか5%にとどまる。「非常に/まあまあ上手く運用できている」は63%と6割を超えているものの、「非常に上手く」の割合が低いことが気になる。(図表5-1)。
企業規模別に見ると、大企業では、「非常に/まあまあ上手く運用できている」が76%、中堅企業では58%、中小企業では56%となっており、企業規模が大きいほど上手く運用できている企業が多い状況にある(図表5-2)。
また、テレワーク開始時期と運用状況の関係を見ると、「新型コロナは関係なく、以前から実施」とする企業では「非常に/まあまあ上手く運用できている」が100%で、一方、「緊急事態宣言により導入・実施」とする企業では「非常に/まあまあ上手く運用できている」が42%と半数未満となっており、開始時期により運用状況に大きな差が生じている。そして、中小企業で上手く運用できている企業の割合が比較的低いのは、「新型コロナの影響により/緊急事態宣言により導入・実施」の企業の割合が高いことが影響しており、今回は緊急措置のため致し方ないが、テレワークを上手く運用していくためには、事前の準備やノウハウ等の蓄積が必要となることがうかがえる(図表5-3)。

【図表5-1】テレワークの運用状況
【図表5-2】企業規模別 テレワークの運用状況
【図表5-3】導入開始時期別 テレワークの運用状況

目的達成率は「社員の移動時間の短縮」と「新型コロナ対応」が9割近く

テレワークを実施することによる目的達成率については、「社員の移動時間の短縮」が最多で87%となっており、次いで「新型コロナ対応」が86%、「BCP対策」が70%などとなっている(図表6)。
効果を定量評価しやすい項目が上位に挙がり、上位5項目はほぼ6割以上と高い達成率となっている一方、「社員エンゲージメントの向上」や「社員満足度の向上」、「業務の生産性向上」等の定性的な要素が多い項目の達成率は半数以下となり、目的達成の実感には至らない企業が多い傾向にある。

【図表6】テレワークの実施による目的達成率

テレワークを実施する前に懸念された課題は「労働実態を把握しにくい」が6割

テレワーク導入・実施の前に懸念された課題としては、「労働実態を把握しにくい」が最多で65%、次いで「社内コミュニケーションが取りづらい」が53%、「テレワークで対応しづらい業務が発生する」が49%などとなっている(図表7)。
オフィス勤務の際は目の前で管理できた部下の様子が見えなくなり、同僚とのコミュニケーションにも不自由するという状況が起こることを想定すると、社員の業務管理や労務管理に懸念を持つ企業が多いことは当然だろう。また、日本独特のハンコ文化により、決裁権限を持つ管理職は決裁書類にハンコを押すために出社しなくてはならないなど、事前に対応すれば解決し得る課題ではあるが、事前準備やノウハウなしでは、管理職ほどテレワークに移行することへの不安感が大きいと推測される。

【図表7】テレワークを導入・実施する前に懸念された課題

テレワーク実施後に直面した課題も「労働実態を把握しにくい」が最多も半数未満に減少

一方、テレワークを実施して直面した課題としては、「労働実態を把握しにくい」が46%で最多となり、次いで「社内コミュニケーションが取りづらい」が43%、「テレワークで対応しづらい業務が発生する」が43%などと、実施前に懸念された項目と同じ項目が上位3項目に並んでいる。ただし、その割合は懸念していた企業の割合より低下しており、すべて半数未満となっている(図表8)。
テレワークでは様々な情報がオンラインで共有・管理されるとともに、家族がいる中での在宅勤務も多く、「情報漏洩のリスク」を41%の企業が懸念していたが、実施後に「情報漏洩のリスク」に直面した企業は17%となり、テレワーク実施前後で24ポイントも減少していることが分かる。「情報漏洩のリスク」は対策を取りさえすれば、回避可能な課題と言えそうである。

【図表8】テレワークを導入・実施して直面した課題

テレワークを導入・実施して直面している(した)具体的な課題

具体的な課題としては、「生産性が低下している」、「気軽なコミュニケーションの減少」、「オンライン環境の整備不足」など、数多く挙げられており、その一部を抜粋して以下に紹介する(図表9)。

【図表9】テレワークを導入・実施して直面している具体的な課題(一部抜粋)
直面した課題の内容従業員規模業種
管理職が従来の時間による管理から意識を脱し切れておらず、社員の管理がきつくなっている。また、コロナ対応として在宅勤務を開始したため、必ずしもIT環境が整備されておらず、効率化に大きな課題を抱えている1,001名以上メーカー
コミュニケーションについては課題に感じている社員が多い。ちょっとした質問や雑談がしにくくなる1,001名以上メーカー
業務へのモチベーションの保持。コロナだからしょうがない...と全てネガティブに考えてしまう1,001名以上メーカー
集合研修など人材育成方法のオンライン化はすぐに構築できない事。また全ての社員のIT環境が整っていない為一部対象のみ実施となっている1,001名以上メーカー
ITツールなどが後付けで整備されたので生産性が低かったし、ITツールの使い方がわからないという課題が発生した1,001名以上商社・流通
十分な準備期間を設けることが出来ず、全て直前のアナウンスとなった。また個人情報保護に力を入れ過ぎるあまり、出社せざるを得ない社員が多数出ている1,001名以上サービス
業務実態が見れない。正規、非正規社員で機器の導入に差があった。モバイルWi-fiが手に入りづらくなった301〜1,000名メーカー
顕在化したものは、在宅時のWiFi環境、社内アクセスのVPNの不足。潜在化するものは、OJT教育の不足による人材育成の遅れ301〜1,000名メーカー
テレワークは善、出社は悪のイメージ301〜1,000名メーカー
チームを分けて在宅、出社勤務を一日交替でおこなったが、配送人数の不足で出社日の配送に負荷がかかった。また、全ての内勤業務を在宅ではこなせるようなシステムになっていなかったため、出社日の業務量が増加した301〜1,000名商社・流通
ちょっとした打ち合わせや、一言で済むコミュニケーションが取りにくくなった。301〜1,000名サービス
コミュニケーション不足と、出社しなければできない業務の生産性低下による顧客満足度低下300名以下メーカー
新入社員の研修が全く対応できない(特に実務面について)300名以下メーカー
web会議を利用しているが、通信環境の問題も多々あり、ストレスを感じる事が良くある。また、非言語表現を読み取れない300名以下情報・通信
在宅勤務者と出勤者とのエンゲージメントをどう確保するかが不明(検討テーマにすらならない)300名以下情報・通信
Teams やSkype、Zoomなどは非常に上手く使われる一方で、社員一人ひとりの家庭環境の問題がプライバシー侵害にあたる危険性を孕むと感じています300名以下サービス
特に生産性の低下が大きい300名以下サービス
ITリテラシーの不足もさることながら在宅勤務環境を整えないうちにテレワークを導入してしまったため、導入後の問い合わせ対応が増え、実業務を圧迫した300名以下サービス

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】テレワーク実態に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2020年5月27日〜6月3日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、人事担当者
有効回答:294件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当ページのURL記載、またはリンク設定
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  ・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
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Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
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