日本企業の研修は、新入社員から始まる階層別研修と、テーマごとに設定される研修の大きく2本柱にわけられる。
 テーマ別研修には、コミュニケーションやモチベーションをテーマにするもの、営業力強化や各種のスキルを向上を目的とするもの、そして会社としてのあり方やモラルを向上させるためのコンプライアンスやメンタルヘルスなどの研修がある。
 近年はこうした社員の意識向上を目指す研修が増加していることが、今回の調査から判明した。

コンプライアンス研修の実施企業は6割、メンタルヘルスは5割弱

テーマ別研修でもっとも多く実施されているのは「コンプライアンス研修」で、60%の企業が実施している。昨年は55%であり、5%増加している。2位は「メンタルヘルス研修」で45%だが、昨年は38%であり、7%増加している。3位は「ハラスメント研修」で40%だが、昨年は31%で9%の増加。4位は「リーダーシップ研修」で28%から35%に7%の増加している。
 一方、「営業力強化研修」は昨年25%から今年22%とわずかに減少している。

 研修の実施理由をコメントしてもらったところ、コンプライアンス研修は不祥事を予防するビジネスマンの常識と位置づけられているようだ。また、メンタルヘルス研修はメンタル不調を予防するために実施されている。

「コンプライアンス研修・リーダーシップ研修:不祥事の再発を防止するため、リーダーを中心として危機管理意識の高揚を図る必要がある。」(メーカー、1001名以上)
「コンプライアンス研修・個人情報関連研修:コンプラ意識強化のため」(商社・流通、300名以下)
「コンプライアンス研修:社員の資質向上のため」(商社・流通、1001名以上)
「メンタルヘルス研修:ストレスチェック分析結果に基づく組織対応及び不調者増加傾向への対策」(サービス、301〜1000名)
「メンタルヘルス研修:業務拡大に伴う社員数の増加によって、良好な職場風土の維持とともに社員へのケア(セルフケアを含む)が必要。メンタル不調等による休職や退職をなくし、安定的な体制維持を図る」(サービス、301〜1000名)
「メンタルヘルス研修:ストレスチェック実施後の組織活性化を図るため」(情報・通信、301〜1000名)
「メンタルヘルス研修:メンタル面で作業効率が落ちないようにするため。メンタル面で病を発生させないよう、社員各自へストレスに対する考え方、ストレス対処法を理解させるため、および、管理者に部下のストレス状況を把握する力、病になる前に対処できる力を身につけさせるため。」(情報・通信、301〜1000名)
 

[図表1]実施している「テーマ別研修」(複数選択可)

「コンプライアンス」「メンタルヘルス」は38%が集合研修で実施

テーマ別研修の中で集合研修のスタイルで実施しているのは「コンプライアンス研修」と「メンタルヘルス研修」(ともに38%)のふたつか多い。特に1001名以上の大規模企業に限ると、どちらも約6割が集合研修で行っており、これらの研修に重きをおいていることがわかる。
 続くのは「ハラスメント研修」(33%)、「リーダーシップ研修」(31%)、「コミュニケーション研修」(27%)である。

[図表2]集合研修のスタイルで実施している「テーマ別研修」(複数選択可)

eラーニングは「コンプライアンス」「個人情報関連」の研修で活用されている

eラーニング形式の研修でもトップは「コンプライアンス研修」で、55%と圧倒的に多い。以下に「個人情報関連研修」(43%)、「メンタルヘルス研修」(28%)、「ハラスメント研修」(30%)、「語学研修」(5%)が続いている。

[図表3]eラーニング形式で実施しているテーマ別研修(複数回答化)

もっとも強化すべき課題は次世代リーダーの養成

今後強化する予定の研修は何だろうか。もっとも多いのは「リーダーシップ研修」で30%だ。昨年は27%で、今年は3%増えている。2位は「メンタルヘルス研修」で昨年19%から微増して20%、3位は「コンプライアンス研修」と「ハラスメント研修」でともに19%だ。この2つの研修は昨年も同率16%の3位だった。
 以下は「キャリア研修」(16%)、「コーチング研修」(12%)、「コミュニケーション研修」(12%)、「モチベーション向上研修」(12%)、「グローバルリーダーシップ研修」(10%)、「営業力強化研修」(10%)という順だ。

 30%の企業が強化する「リーダーシップ研修」を行う理由について、以下のようなコメントがあった。

「次世代・次々世代のリーダーを早期に育成するため」(メーカー、1001名以上)
「自分より年齢に高い方の能力をいかにうまく引き出していくかが求められると思うから」(メーカー、1001名以上)
「次世代型の経営課題を解決するためのリーダー育成に重点を置くため」(運輸・不動産・エネルギー、1001名以上)
「組織を力強くリードできる人材を早期育成するため」(メーカー、300名以下)

 成長戦略を担う人材育成のためにリーダーシップ研修を行っている様子が伺える。

[図表4]今後強化する予定の研修(複数選択可)

リーダーシップ研修の課題は「リーダーとしての在り方・姿勢・役割意識」

リーダーシップ研修の対象者に対して抱いている課題を聞いたところ、「リーダーとしての在り方・姿勢・役割意識」が75%ともっとも多く、「部下育成力」(65%)、「人間関係構築力/コミュニケーション」(50%)が続いている。

 課題に関する具体的なコメントとしては、
「中間管理職として、経営幹部としてのリーダーシップを習得させたい」(サービス、1001名以上)
「部下とのコミュニケーションが全体に不足している(日常からの声掛け、面談方法、傾聴・受容)」(メーカー、1001名以上)
「管理者としての「部下との接し方」「仕事の与え方」」(商社・流通、1001名以上)
「部下とのコミュニケーションは比較的できてはいるが、そこから判明した課題・問題に対する対処能力と対象者への指導力が不足がち」(情報・通信、301〜1000名)
「部下の育成・教を自分の仕事と認識している人が少ない」(商社・流通、300名以下)
などが挙がっている。

[図表5]リーダーシップ研修対象者に対して抱えているの課題(複数回答可)

リーダーシップ研修内容の最多は「リーダーとしての在り方」

リーダーシップ研修の内容について聞いたところ、「リーダーとしての在り方・姿勢・役割意識」が81%ともっとも多かった。これは「対象者に対し抱えている課題」でもっとも多かった項目だから当然の結果だろう。続いて「部下育成」(56%)、「人間関係構築/コミュニケーション」(44%)、「組織マネジメント」(36%)が続いている。昨年と比較すると増えた項目は「リーダーとしての在り方・姿勢・役割意識」、「部下育成」であり、「人間関係構築/コミュニケーション」と「組織マネジメント」が低下している。

 具体的な研修の内容としては
「組織における自分の立ち位置の確認、フォロワーシップ等」(サービス、1001名以上)
「他者との違いを認識し、相手に応じたコミュニケーションを取ることに気づかせるトレーニングを実施中」(メーカー、1001名以上)
「・組織メンバーからの評価を見て、自身のリーダーシップを振り返る。・自身の略歴を棚卸する。・組織マネジメントの基本的な考え方を学ぶ。・イノベーションの原理原則を学ぶ(実例を踏まえ)。・新しい価値を創出するために必要なエッセンスを習得する」(情報・通信、1001名以上)
「経営感覚とマネジメントに重点」(サービス、300名以下)
「部下へのコミュニケーション、チームの目標達成のためのけん引力の養成」(メーカー、300名以下)
「部下の面談、目標管理、評価を通じた部下育成」(商社・流通、300名以下)といったコメントが見られた。

[図表6]リーダーシップ研修の内容(複数回答化)

コミュニケーション研修の課題は「上司との関係構築」「部下との関係構築」「傾聴力」

コミュニケーション研修において、対象者に対して抱えている課題でもっとも多かったのは「上司との関係構築」(60%)、続いて「部下との関係構築」(54%)、第3位が「傾聴力(聴く力)」(48%)、第4位が「同僚との関係構築」(42%)だ。

 課題に対する具体的なコメントとしては、
「部下とのコミュニケーションを中心に研修を行う」(メーカー、1001名以上)
「上司・部下の信頼関係の構築をどのように行うか」(商社・流通、1001名以上)
「部下への指導が一方通行になる」(サービス、301〜1000名)
などの意見が寄せられた。

 「人間関係に悩む若い社員が多い」(マスコミ・コンサル、300名以下)
「若手社員とのコミュニケーションに悩む上司が近年増えている」(メーカー、301〜1000名)
という声もあった。若い社員も上司も人間関係に悩んでいる。世代や立場を超えて、よりスムーズなコミュニケーションを取るためのスキルが必要とされているようだ。

[図表7]コミュニケーション研修対象者が抱える課題(複数回答化)

コミュニケーション研修の内容は「傾聴力(聴く力)」と「人間関係・信頼関係の構築」

コミュニケーション研修の内容では、「傾聴力(聴く力)」(70%)と「人間関係・信頼関係の構築」(66%)のふたつが圧倒的に多い。「伝える力」(46%)、「質問力」(44%)がふたつに続いた。
 昔のコミュニケーションスキルは「内容を伝わるように整理すること」「うまく話すこと」に重点が置かれていたが、現在は「相手を理解する」傾聴力が重視されている。

 コミュニケーション研修の具体的な内容としては、
「ビジネスゲームを通じたコミュニケーション力育成」(メーカー、1001名以上)
「日本人社員・外国人社員のコミュニケーション力強化(異文化理解を含む)」(メーカー、1001名以上)
「傾聴力がもっとも重要と考えている。」(メーカー、301〜1000名)
「人前で、自分の思いを伝えることを、繰り返し行い、講師・参加者からの質問や指摘を受け伝える力をつけさせると同時に、質問者の質問力も養う」(情報・通信、301〜1000名)
「まわりとのかかわり方について、ゲームやロープレ、ケーススタディを行い疑似体験をすることで、必要性やご自身の改善点などに気づいていただく研修を行っております」(商社・流通、300名以下)
などのコメントが寄せられた。

[図表8]コミュニケーション研修の内容(複数回答可)

【調査概要】

調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年3月8日〜3月21日
有効回答:195件(1001名以上:28%、301〜1000名:28%、300名以下:44%)

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