「管理職研修」の実施率は、全体では69%であり、約7割だ。1001名以上の大規模企業では80%が実施しているが、300名以下の小規模企業では58%しか実施していない。小規模企業では管理職の育成まで手が回っていない様子が見受けられる。
研修の実施方法は、最多が「外部の研修会社を利用」で38%、「内製と外部の研修会社の組み合わせ」が29%で、「自社(グループ会社)で実施(内製)」は28%となっている。管理職研修で養成したい能力はリーダーシップ、マネジメント力なので、外部の専門企業への依頼が多いものの、内製化への方向性も見られる。
では管理職研修に関して、人事の皆様が課題だと感じていることは何か。詳細ログインしてぜひご覧ください。
管理職研修の実施率は大企業では80%、中小では58%
管理職研修を実施について聞いたところ、全体では69%が実施していると回答した。規模別に見ると、1001名以上規模の企業では80%が実施している。301~1000名規模では74%が実施しているが、300名以下になると58%しか実施していない。小規模ほど、管理職研修を実施していないという実態が判明した。
[図表1]管理職研修の実施(規模別)
内製化は28%と3割弱。したくともリソース不足のジレンマ。
実施方法は、最多が「外部の研修会社を利用」で38%、「自社(グループ会社)で実施(内製)」は28%、「内製と外部の研修会社の組み合わせ」が29%である。
管理職研修で要請したい能力はリーダーシップ、マネジメント力であり、外部の専門家に委託することが多いが、コスト面のメリットから内製化の志向もある。一方で、内製化を人事だけで行うには、下記にコメントにみられるように、リソースの限界もあるようだ。
「内部(人事課)で実施することの限界。外部講師によるものの場合、費用の負荷」(商社・流通、1001名以上)
[図表2]管理職社員研修の実施方法
管理職研修の運営課題トップは「実施効果の測定ができていない」
運営上の課題を聞いたところ、「実施効果の測定ができていない」が43%でトップとなった。続いて、「受講者の意識」(40%)、「研修メニューの構築・選択が困難」(31%)、「予算不足」(29%)の順で多い。
「実施効果の測定ができていない」状況では、研修がどのくらい役立っているのか判定できないし、適切な改善策も立てられない。だから効果測定を実施すべき、とわかっていても、なかなか手が付けられていないということなのだろう。悩ましい問題だ。コメントでは下記のような声があがった。
「実務能力が評価基準となっており、管理職としての役割・責任が明確になっていない。そのため、教育の必要性やそのコンテンツに対して、経営陣・現場ともに理解が進まない」(サービス、1001名以上)
「そもそもの研修のあり方から、効果検証の仕方までとにかく抜本的に検討要」(メーカー、301~1000名)
[図表3]管理職研修 運用にあたっての課題
管理職の育成の課題は「部下育成力・コーチング力」が72%でトップ
管理職研修の実施において、受講する管理職が抱えている課題とは何だろう?
課題で最多は「部下育成力・コーチング力」で78%だった。第2位は「管理職としての役割認識」52%、第3位は「リーダーシップ」で49%である。
自由記述で具体的な課題を聞いた。
「部下育成力・コーチング力」については、「過去の成功体験と現在の業務課題のギャップや、管理職としての人材育成の役割理解が当社では大きな課題。育てられた経験もないため人材育成をどうやればいいのかわからない方がまだ多い」(商社・流通、1001名以上)
「管理職ではなくプレイングマネージャーとなってしまっている」(メーカー、301~1000名)
「将来をけん引していく、管理職のマネジメント力の強化が重要。特にビジョンを以下に持ってもらい、それに向けて、部下を意識づけ、どう指導していくかという点」(情報・通信、1001名以上)
個人プレイヤーとして活躍してきて業績が良い人が管理職に抜擢されるのは、よくあることだ。管理職になって初めて、それまで行ってこなかった部下育成が重要な職務になる。しかし管理職に抜擢されたからといって、その時点で部下育成力が備わっているわけではないのが実情だ。管理職研修で部下育成力を身に着けさせる必要があるだろう。
人事としては、現場では身に付きにくい役割認識をどうやってつけていけばよいのか、研修内容やその後のフォローの仕組みで構築していく必要がある。
[図表4]管理職研修の実施において受講者が抱えている課題
管理職研修の内容は「マネジメント」「リーダーシップ」「目標管理」
管理職研修ではどのような内容を実施しているのだろうか?
第1位は「マネジメント」84%、第2位は「リーダーシップ」69%でこの2つが圧倒的に多い。続いて「目標管理」45%、「チームビルディング」41%、「コーチング」40%が並んでいる。
人事コメントを読むと、「プレイヤーからマネージャーへの移行の意識付け」(メーカー、301~1000名)が研修の目的であり、研修の内容は「マネジメント」「リーダーシップ」を軸にして、コミュニケーション、問題解決スキル、プレゼンテーション、財務会計・管理会計、ビジネス交渉、経営戦略と幅広い領域が含まれている。
「チームビルディング」「コーチング」は部下育成や組織運営に関わるもので、数割の企業で実施している。「メンタルヘルス」「ハラスメント」といった心理学やコンプライアンスの知識を要するものも管理職研修のファクターとして重要だ。
[図表5]管理職研修の内容
今後取り入れたいのは「意識改革」37%と「チームビルディング」32%
管理職研修に今後取り入れていきたい内容を聞いたところ、現状で実施している研修内容とかなり異なっていた。トップは「意識改革」37%だった。2位は「チームビルディング」32%。この2つが3割台である。
続いて「コーチング」と「ビジョン構築力」がともに28%、「マネジメント」と「リーダーシップ」がともに27%である。そして「モチベーション向上」は7位で23%である。
「意識改革」は、人材開発・組織開発技法として何か定まったものがあるわけではない。しかし人事は、外界の変化に対応するための社員の意識改革を管理職に推進してもらいたい、という考えを持っているのだろう。
「チームビルディング」「コーチング」「ビジョン構築力」などは組織運営に関わる能力であり、研修のニーズがあるということは管理職の組織運営力を強化したいと言うことだ。
[図表6]管理職研修に今後取り入れたい内容
調査概要
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年3月8日~3月21日
有効回答:195件(1001名以上:28%、301~1000名:28%、300名以下:44%)
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