「人事の課題に関するアンケート」調査結果最重要課題は今年も「次世代リーダー育成」

HR総研では、恒例の「人事の課題に関するアンケート」を2016年2月17日〜2月25日に実施した。人事課題を俯瞰するために、「採用・退職・人材育成・配置・人材ポートフォリオ」という人的資源管理の軸と、「組織・制度・仕組み・システム」という組織管理の軸の2つの切り口に分けて、昨年との違いを見てみることにする。それぞれを「現状」と「将来(3〜5年後)」に分けて課題を問うてみた。

人的資源管理での最多課題は「中途採用」

「現状の採用・退職・人材育成・配置・人材ポートフォリオ面での課題」を聞いたところ、全体の最多は昨年3位の「中途採用」で59%。次いで、「次世代リーダー育成」(56%)、「新卒採用」(55%)と続く。この3つの課題のみが半数以上の人事から選択されている。現在の「中途採用」の求人倍率はリーマン・ショック以前を超えており、昨年以上に企業にとっては採用難となっている。

[図表1]“現状”の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での課題(全体)
昨年の調査でもこの3項目がトップ3で、いずれも半数以上の人事に選択された。順番は「次世代リーダー育成」(64%)、「新卒採用」(60%)、「中途採用」(52%)の順で、「次世代リーダー育成」と「新卒採用」は6割以上の人事に選択されていた。

[図表2]“現状”の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での課題(2015年調査)

企業規模によって課題感が大きく異なる「グローバル人材育成」

「新卒採用」を人事課題として挙げる企業の割合は、企業規模による差異がほとんどない。それに対して、全体でトップだった「中途採用」は、中小企業と中堅企業では60%を超えるものの、大企業では51%にとどまる。一方、大企業で最も課題感が高いのは、「次世代リーダー育成」(65%)となっている。
 企業規模による差異が最も大きかったのは「グローバル人材育成」で、大企業では47%と半数近い人事が課題と感じているのに対して、中堅企業では27%、中小企業ではわずか7%に過ぎない。同様に、「ダイバーシティ対応」も大企業の36%に対して、中小企業では12%とその差は大きい。

[図表3]“現状”の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での課題(企業規模別)

最重要課題は、昨年に引き続き「次世代リーダー育成」

上記は複数選択方式で回答してもらった結果であるが、最重要課題を択一で回答してもらった結果では、上位の順位に変動が見られた。最重要課題でトップとなったのは、昨年に引き続き「次世代リーダー育成」(18%)となった。ただし、昨年は28%の企業が選択していたことを考えると、他の課題とのポイント差はほとんどなくなっている。
 その他、ポイントが高かったのは、「新卒採用」(17%)、「中途採用」(15%)、「マネジメントスキル向上」(11%)となっており、昨年11%で3位だった「若手育成」は5%にとどまった。

[図表4]“現状”の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での最重要課題(全体)

3〜5 年後の課題も「次世代リーダー育成」がトップ

「今後3〜5年の人事課題」について聞いてみたところ、「次世代リーダー育成」(47%)、「新卒採用」(42%)、「中途採用」(35%)の3つが依然としてトップ3を占めた。次いで、「マネジメントスキル向上」を抑えて「女性活用、登用」が4番目に入った。ただし、「女性活用、登用」と回答した企業割合は企業規模による違いが大きく、大企業では42%もあるものの、中小企業では16%だけである。今年4月1日に施行される女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)では、301人以上の企業に義務を課しているのに対して、300人以下の中小企業には努力義務でとどまることも影響している。

[図表5]“今後3〜5年”の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での課題(全体)

3〜5 年後の最重要課題は「次世代リーダー育成」が続伸、「中途採用」はポイント下げる

「今後3〜5年の人事の最重要課題」を択一で回答してもらったところ、「次世代リーダー育成」が現在の18%から24%に伸び、「中途採用」は現在の15%から8%へと半減する。現在の売り手市場の需給バランスは改善しているとみているのだろうか。「新卒採用」は現在とほぼ同じ16%となっている。

[図表6]“今後3〜5年”の【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での最重要課題

組織管理での最多課題は「従業員のモチベーション維持・向上」

「現状の組織・制度・仕組み・システム面での課題」を聞いたところ、半数以上の企業が選択した課題はひとつもなく、企業により課題が分散していることがわかった。そんな中でも最多回答は「従業員のモチベーション維持・向上」の43%で、昨年の51%からポイントは落としたものの最重要課題の位置は変わっていない。
 その他、上位に挙げられた課題は、「人事制度の改定」「教育体系・能力開発の導入・改定」(ともに39%)、「評価の定着、評価者スキルの向上」(36%)と、昨年とほぼ同じ顔ぶれとなった。

[図表7]“現状”の【組織・制度・仕組み・システム】面での課題(全体)
[図表8]“現状”の【組織・制度・仕組み・システム】面での課題(2015年調査)

企業規模によって課題感が大きく異なる「タレントマネジメント」

企業規模別に見てみると、多くの課題において中堅企業のポイントが他の規模の企業よりも高くなっている。「従業員のモチベーション維持・向上」「人事制度の改定」は、中堅企業ではいずれも49%とほぼ半数の企業が課題としてとらえている。
 一方、大企業と他の規模の企業で違いがみられたのが「タレントマネジメント」である。大企業では38%なのに対して、中堅企業、中小企業ともに15%と大企業の4割程度しかない。従業員数が多くなればなるほど、一人ひとりのスキルや履歴を把握し、適材適所を実現することは困難であり、当然と言えば当然か。

[図表9]“現状”の【組織・制度・仕組み・システム】面での課題(企業規模別)

最重要課題では「人事制度の改定」がトップ

最重要課題を択一で回答してもらった結果では、「人事制度の改定」が15%で、14%だった「従業員のモチベーション維持・向上」を僅差ではあるが上回った。「人事制度の改定」を挙げたのは特に中堅企業で多く22%に達したのに対して、中小企業ではわずか9%にとどまった。「従業員のモチベーション維持・向上」は、大企業では9%と少なかったが、中堅企業15%、中小企業18%と、企業規模が小さくなるほど課題感が強くなっている。

[図表10]“現状”の【組織・制度・仕組み・システム】面での最重要課題(全体)

3〜5 年後の課題も「従業員のモチベーション維持・向上」

「今後3〜5年の人事課題」について聞いてみたところ、「従業員のモチベーション維持・向上」が現状に引き続き39%でトップとなった。続いて現状と同じく「人事制度の改定」(29%)が2位となったが、3位には現状では5位だった「組織開発・組織風土改革」(28%)が入った。トップの「従業員のモチベーション維持・向上」と2位以下の項目には10ポイント以上の開きがあり、「モチベーション維持・向上」の課題感は根が深いと言えそうである。

[図表11]“今後3〜5年”の【組織・制度・仕組み・システム】面での課題(全体)

3〜5 年後の最重要課題では「組織開発・組織風土改革」が躍進

今後3〜5年の人事課題」について最重要課題を択一式で選択してもらったところ、トップは現状と同様「人事制度の改定」(13%)となったが、2位には「組織開発・組織風土改革」と「従業員のモチベーション維持・向上」がともに12%で並んだ。「人事制度の改定」は中堅企業で、「従業員のモチベーション維持・向上」は中小企業でポイントが高く、そのために全体のポイントが引き上げられているのに対して、「組織開発・組織風土改革」はどの企業規模でも12〜13%と同程度のポイントとなっているのが特徴である。

[図表11]“今後3〜5年”の【組織・制度・仕組み・システム】面での最重要課題(全体)

【調査概要】

調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2016年2月17日〜2月25日
有効回答:195社(1001名以上:55社、301〜1000名:55社、300名以下:85社)