「不定愁訴」とは、医療機関で検査をしても本人が訴えるような症状の原因となる病気が見つからず、明確な診断を下せない状態を指す臨床用語です。

「頭が重い」「イライラする」「よく眠れない」「体がだるい」「何となく体調が悪い」などが代表的な症状ですが、その他にも頭痛、動悸、食欲不振、皮膚のかゆみ、耳鳴り、めまい、味覚異常、便秘、下痢、手足のしびれ、冷え、ひん尿、血尿、月経不順など、症状は多岐に渡ります。本人からの訴えは強いものの、症状は主観的で、客観的所見に乏しいのが特徴です。自覚症状がすぐに変わったり、何種類もの不調を同時に訴えたりすることもあります。

精神的なストレスや環境変化、不規則な生活習慣など、さまざまな要因が絡み合って引き起こされると考えられていますが、何らかの病気の初期症状や軽度のうつ病や適応障害、全般性不安障害などの可能性もあります。また、不定愁訴は更年期の女性の60~70%は経験しているともいわれ、ホルモンバランスの乱れが要因のこともあります。

本人の自覚症状は強いものの、原因がはっきりしないため、周囲の理解を得られないことが少なくありません。特に職場では、「我儘を言っている」「怠けている」などの誤解を生み、適切な対応が取られないケースもあるようです。原因がメンタルヘルスにある場合、さらに症状を悪化させる可能性がありますので、社内の理解を促す活動などが必要となります。