「ノーワーク・ノーペイの原則(労働基準法24条)」とは、労務者が「労務」を提供していない場合、つまり働いていない場合、使用者はその部分についての賃金を支払う義務はないという、給与計算の基本原則のこと。

例えば、欠勤や遅刻といった不就業があった場合、社員はその時間働いていないため、ノーワーク・ノーペイの原則により、会社はこの部分について給料を支払う義務はありません。1日欠勤した社員が1日分の給料を引かれることは違法ではなく、社員には引かれた分の賃金の請求権はありません。

また、休日についても、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。法定休暇制度として、産前産後休暇、育児休業などさまざまなものがありますが、これらは休暇を取得することが認められるのみの制度であり、休暇を取得した日の賃金については無給が原則です。さらに、慶弔休暇、結婚休暇といった法定外休暇がありますが、これらは制度を設ける義務がない休暇であり、やはり無給が原則です。

しかし、これらの休暇について無給とするか有給とするかは企業ごとの考えで決めてよく、就業規則などで賃金を支給すると規定してあれば、賃金を支払う義務が生じます。例えば、慶弔休暇は、親や配偶者、子の死亡時は有給、それ以外は無給としている企業が比較的多いようです。

ノーワーク・ノーペイの原則には2つの例外があります。1つ目は年次有給休暇です。年次有給休暇は、ノーワークであっても法律によりノーペイにはならず、賃金が保障される制度です。2つ目は休業手当です。部品の調達ができず製造ラインの一部が止まったというような、会社側の都合で従業員を休ませた場合には、賃金を保障しなければなりません。その場合、平均賃金の6割以上の手当を支払わなければならないことが、労働基準法26条で定められています。

企業の人事担当者としては、ノーワーク・ノーペイの原則を理解した上で、法を遵守しつつ、従業員や求職者にとって魅力ある賃金や休暇の制度を構築・運用していく必要があるでしょう。