株式会社パーソル総合研究所は2022年5月23日、「企業の新規事業開発における組織・人材要因に関する調査」の結果を発表した。調査期間は2021年10月28日~11月4日、従業員数300名以上の企業で、自社の新規事業開発担当を務める1,800名から回答を得た。これにより、新規事業開発の担当者自身が感じる実態や課題が浮き彫りとなった。
新規事業開発が「成功している」と答えた担当者は全体の3割。課題は「担い手や専門知識の不足」など

大企業における新規事業開発の成功度は

新規事業開発担当者は、プロジェクト推進においてどのような課題を感じているのだろうか。

パーソル総合研究所が、「自社の新規事業開発の成功度」を質問すると、「成功している」(「非常に成功している」と「どちらかと言うと成功している」の合計)が30.6%であったのに対し、「成功に至っていない」(「全く成功に至っていない」と「あまり成功に至っていない」の合計)は36.4%だった。なお、この結果には、企業規模や売上高による成功度の差異は見られなかったという。
新規事業開発の成功度

4割が新規事業開発で「有望な事業が生まれている」と評価

次に、同研究所は「自社の新規事業開発の発展度」について聞いた。その結果、取り組み中の新規事業開発案件のうち、「将来、自社の主力事業になりそうな有望な事業が多数生まれている」(5.4%)および「数件生まれている」(34.7%)の合計は40.1%となった。一方で、「新規事業はまだ生まれておらず、取り組みが難航している」は14%だった。
新規事業開発の発展度

組織マネジメントの課題は「担い手の確保」や「知識不足」

続いて、同社は「新規事業開発を進める上での組織マネジメントの課題」を尋ねた。回答数が多く“課題感が強い要素”となったのは、「担い手となる人材の確保」(38.9%)、「知識・ノウハウ不足」(38.6%)、「意思決定の遅さ」(30.7%)、「評価制度の不適合」(30.5%)であることがわかった。他方で、「経営層の関与」や「社外との連携」、「担当者の士気」はそれぞれ1割程度の回答率で、“課題感が弱い要素”となった。
新規事業開発担当者が感じる、組織マネジメント上の課題

“プロジェクトの形態”によって最終決裁者が異なる場合も

次に同研究所は、「新規事業開発の最終決裁者」を尋ね、その結果を「自社単独で開発を行う場合」と、社外組織と連携する「オープンイノベーション型で行う場合」に分けて集計した。すると、自社単独で行う場合では、最終決裁者は「社長/CEO」が44%で最も多かった。一方、オープンイノベーション型で行う場合は、「新規事業開発担当役員」が40.8%で最多となった。このように、自社開発とオープンイノベーション型の開発とで、最終決裁者が異なるケースもあることが判明した。
新規事業開発の最終決裁者

新規事業開発に「人事部が関与」は3割強。うち、7割が「効果」を実感

「新規事業開発に対する人事部の関与」について質問すると、「積極的に関与している」(「積極的」と「どちらかと言うと積極的」の合計)が33.2%だった。一方で、「積極的でない」(「積極的でない」と「どちらかというと積極的でない」の合計)は37.5%だった。
新規事業開発に対する人事部の関与
また、「新規事業開発に人事部が積極的に関与している」と回答した担当者に対し、「その取り組みを効果的と捉えているか」を聞くと、「効果的」(「効果的」と「どちらかと言うと効果的」の合計)が70.7%と、7割にのぼった。
人事部の関与する取り組みは効果的と捉えているか
本調査で新記事事業開発の担当者が挙げた「組織マネジメントの課題」を解決することが、プロジェクトを成功に導くポイントとなりそうだ。「人事部の関与が効果につながった」との担当者の回答も多くあったことから、人事部は新規事業開発を積極的に支援していきたい。

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