うつ病で休職する従業員にどう対応したらよいかとの相談が増えている。目新しい問題ではないが、産業や企業規模を問わず、メンタルヘルス不調が拡がっている証左であろう。それでは、従業員がうつ病で休職に入る際や復職をするときに、人事労務担当者は、どのように対応し、休職中はどのように関わっていけばよいだろうか。前回に続き、休職中から復職時までの基礎知識を解説する。
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休職中の従業員の私用行為について

休職とは、従業員に、その期間中の労働義務を免除し、就業時間中の職務専念義務も免除するものである。しかし他方で、従業員は、「労働契約上の信義則(「労働契約法」3条4項)」から、休職期間中は療養に専念し、傷病の回復に努める義務を有すると考えられる。ただし、就業時間中に傷病を悪化させないような私用を行うことまで禁じられているとはいえない。

たとえば、病気休職期間中に大学院の修士論文について教授から面談を受け、修士論文を提出し、口頭試問を受け、さらに博士後期課程の入学試験を受けたというケースがある。裁判例では、「病気療養の趣旨に反するような態様であったとは認められない」として、懲戒解雇事由とはならない判断を下している。

うつ病休職についても、病気の回復を目的として旅行をしたとしても、就業時間中であるという理由だけで懲戒処分の対象にすることはできない。

ところが、休職者がその旅行を楽しんでいる写真等をSNSで公開することがある。休職者の穴埋めをしているほかの従業員のモチベーションに影響するので、うつ病で休職していることや、病気が回復済みであるかのような誤解を与えるたぐいの投稿を控えるよう求めることが必要だ。ただし、業務外のプライベートを制限することはできないので、就業規則に規定がないのであれば、理由を説明した上で本人の同意を得た方がよい。

そもそも休職に限らず、SNSが普及した現在では、その使用ルールを就業規則の服務規律に定めておいた方がよい。就業規則に規定があれば個別に同意を得なくてもよいが、実際には、きちんと説明した上で、内容を理解したとしてサインしてもらうことが無難である。

休職者の復職の準備とフォローアップ

休職者の同意が得られれば、休職当初からでも主治医と面談といった情報収集をする。本人に復職に向けた焦りの気持ちがあり、それが主治医の診断書に反映されることがあるので、主治医とコンタクトを取っておくと本人の意向や病状が理解しやすくなる。

主治医の診断書とともに復職申請が出されたら、復職の可否を検討することになる。決定する際は、休職者との面談で復職意思や回復状況を確認することはもちろん、管理職を含めて協議をし、休職中に得た情報を総合して慎重に検討しなければならない。

復職できるかどうかの判断基準は、休職前の職務について労務の提供が十分にできる程度に回復することを要する。この場合、一定の期間内に通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込める場合を含むというのが裁判例である。

休職者の業務遂行能力の回復が十分でなく、復職に関する主治医の診断書に疑問があるときは、産業医の意見を聞くほか、産業医から主治医に意見照会した方がよい。さらに、会社が指定する医師の診察を受けてもらうことも考えられ、これを義務づける条項も設けておくべきである。裁判例は主治医や専門医からの医学的な所見を重視しており、これを徴求せずに退職や解雇を決定しても無効になるケースが増えているので、留意しておいた方がよい。

また、復職時の勤務スケジュールのほか、業務の内容や量、責任、さらに職場環境なども検討しなければならない。特に新卒の従業員については、社会人としても未熟であり、会社の業務にも不慣れなので、ストレス耐性が低いばかりか、職場や仕事とのミスマッチを感じることがあり、会社側は新人特有の業務上のストレスがあることを認識すべきである。

新人に限らず、復職後のフォローアップは必要だ。うつ病が再燃・再発する可能性が高いことを前提に、管理監督者が定期的な面談をして状況確認とサポートをしていくことが望ましい。

以上の復職手続については、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(中央労働災害防止協会)が参考になる。この手引きは、大企業向けなので、「わが社ではそれほどメンタルヘルス不調が発生しないから必要ない」と考えている中小企業があるかもしれない。しかし、メンタル不調はいつ発生するかを予測することは困難なため、やはり事前の準備が必要だ。各企業の実情に応じた職場復帰支援プログラムを作成することが望まれる。



佐久間大輔
つまこい法律事務所 弁護士
企業のためのメンタルヘルス対策室
https://mentalhealth-tsumakoilaw.com/