様々な業務システムの広告を見る機会が増えてきていますが、最近は“業務のシステム化”に興味を持つ企業が増えてきました。企業がシステム導入を検討する場合に、そのきっかけになることが多いのが「人事労務管理システム」です。本稿では、人事労務管理システムを導入する際のポイントについて、【導入検討時】、【導入時】に分けてご説明します。
「人事労務管理システム」で人事担当者の業務効率化を。システム導入のポイントを検討段階別に解説

【導入検討時】現在自社が利用している「人事労務管理システム」を確認

新たな業務システムを導入する前に、まず現状を確認してみましょう。例えば、「WEB明細は○○会社のシステム、勤怠管理は××会社のシステム……」など、すでに導入しているシステムを確認します。それらについて、「使いやすさ」や「導入の難易度」、「導入するメリットやデメリット」などを改めて整理したうえで、“メインとして今後も利用したいシステムの提供会社”で関連した商品が発売されていないかをご確認ください。

このように、まずは“既に自社で利用しているサービスに関連した商品”から検討することをお勧めします。なぜなら、従業員の入社時に個人情報を一度登録すれば、関連したシステムにもその情報が共有されるからです。システム同士で情報が連携されない場合、システムごとに各従業員の情報を登録することになるため、運用が困難に感じてしまう可能性があります。

ただし、システム会社にもそれぞれ得意・不得意な分野があります。例えば、人事労務管理システムに特化している会社には経理システムがなかったり、逆に経理システムに特化している会社には人事労務管理システムがなかったりします。そのため、自社に必要なシステムを精査して選ぶことも必要でしょう。

個人的な印象ですが、「人事労務管理システム」と「経理システム」は提供会社が異なってもそこまで支障はないように思います。ただし、「人事労務管理システム」の各システムについては、一般的に社員の個人情報を登録する必要があるため、同一の会社が提供するシステムに揃えることをお勧めします。

次に、現在自社で業務システムにかけられる予算をご検討ください。その上で、「システムを導入することでどれほどの工数が削減されるのか」といった部分も考慮し、予算と比較して最適なシステムを検討する必要があります。

以上が「人事労務管理システム導入前の確認事項」となります。導入にあたってのポイントは、“最初から100点の活用を目指さず、まずは60点の活用から少しずつ増やしていくこと”です。

【導入時】各「人事労務管理システム」導入のポイント

人事労務管理システムには、「勤怠管理」、「WEB明細」、「給与計算」、「社員台帳」、「人事評価」など様々な種類がありますが、その中でも「WEB明細」や「勤怠管理」などは導入希望が多いシステムの一つと言えるのではないでしょうか。

コロナ禍の影響でテレワーク(在宅勤務)が増えたことにより、最も需要が高まった人事労務管理システムに「WEB明細」があります。給与明細書を一人ひとり手渡ししていた企業は、一斉にWEB明細の導入を検討しました。給与計算システムからWEB明細データを作成し、登録、閲覧開始日の設定等をすることで、従業員はいつでも自分の給与明細書をPCやスマートフォンから閲覧可能になりました。年末調整が終了すれば「源泉徴収票」の閲覧も可能で、確定申告をする方は、それを印刷して活用することになります。

続いて需要が高まったのは「給与計算システム」です。WEB明細に明細項目や金額を登録するために、関連した給与計算システムを導入するのが便利でしょう。給与明細書を印刷する代わりにシステムに登録することでペーパーレスにもなりますし、給与明細書や源泉徴収票の再発行も不要で、従業員が自ら何度でもWEB明細からプリントアウトをすることが可能になります。

また「勤怠管理システム」については、自社の制度をシステムに反映させることができれば、労働時間や休憩時間の管理、有給休暇の付与・申請・承認等、日々の業務の効率化につながります。ただし、勤怠管理システムには「自社の制度をそのまま反映できない」場合や「希望するような休暇の管理等ができない」という場合があり、導入時に苦戦する企業も見られます。そのようなケースでは、システム会社にカスタマイズを依頼して、自社の制度を反映させる企業もあるようですが、カスタマイズ費用やその後のメンテナンスなどが必要になります。

そこで、システム導入をする際に“何を優先するのか“を事前に検討することをお勧めします。パッケージ型の人事管理システムの場合は、「そのパッケージが自社の制度をどの程度カバーできるのか」、「カバーできない場合に、制度を変更することができるのか」といったことを検討しましょう。「カスタマイズ費用はいくらでも支払う」ということが可能であればよいですが、「カスタマイズ費用をかけずに制度を変更する」ということも選択肢の一つになるかと思います。

その他にも、「社員台帳」、「人事評価」などのシステムもあります。例えば社員台帳に様々な情報が登録できれば、平均勤続年数、入社からの異動や昇格の履歴、保有資格などの管理が可能となり、人材の有効活用ができるでしょう。また、毎年の目標管理、人事考課、自己管理、キャリアプランなどを登録することで、業務の簡素化も可能になります。

人事労務管理システムを導入の際は、自社に合ったシステムを選ぶことが大切です。そして導入後は、自社の制度をシステムに合わせることで、導入による業務の効率化を最大限に活かしてみてはいかがでしょうか。
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