最近、「DX時代の人材育成」により積極的に取り組むが企業や自治体が増えてきています。「DXに取り組んでみたものの、なぜかうまくいかない」あるいは「DXに取り組むには、デジタルを活用する人間側のスキルアップが必要だと気づいたけれど……」。そんなご相談をよくいただくようになりました。そもそもDX時代に求められるスキルは、どのようなものがあるのでしょうか。どんなスキルアップ・リスキルをすることで、DX時代に対応していけるのでしょうか。
DX時代に活躍できる人を育てる(2)求められるスキルセットを“D人材”と“X人材”に分けて整理する【76】

DX時代は「D」人材と「X」人材が求められる

「DX」という言葉がかなり浸透してきたと感じます。ニュースやテレビCMでもDXというキーワードを目にする機会が増えてきたのではないでしょうか。

DXとは言わずもがな「デジタルトランスフォーメーション」のことです。デジタルトランスフォーメーションは、単なるデジタル化ではなく、デジタルによって社会構造や企業のあり方や事業そのものを変える取り組みと定義されています。

その背景には、世界的なデジタル社会への移行だけではなく、日本の人口減少という大きな問題があります。特に15〜64歳までの生産年齢人口は、2010年の約8,000万人から、2030年は6,773万人まで減少すると予測されています(※1)。この20年で約1,300万人もの生産年齢人口が失われるのです。

こうした人口減少の中では、かつての高度経済成長期のような人手に頼った事業展開は不可能です。デジタルツールによる自動化やロボット活用による業務プロセスの再設計や、事業構造の転換は、もはや避けられない企業の重要な経営課題です。

しかし、かつての取り組みを破壊して再定義するためには、DXを推進する人材が必要です。デジタルトランスフォーメーションは「デジタル」と「トランスフォーメーション」に分けられます。同様にDX推進に求められる人材も大きく2種類に分かれます。それは、デジタルを活用して業務プロセスの効率化やコスト削減を進める“D人材”と、デジタルへの深い知識とスキルを持ちながら、新規事業開発などの「トランスフォーメーション」を推進する“X人材”です。

単にDX人材といっても、デジタルを活用するだけの人材なのか、トランスフォーメーションを推進する人材なのかで、大きくスキルセットが変わってきます。

DX時代に求められるスキルとは?

DX人材には当然ながらデジタルやITに関する知識が求められます。ただし、その程度は人材タイプによって異なるでしょう。デジタルにより既存業務の変革や効率化を行う“D人材”であれば、AIやロボットを活用できる程度の知識が必要です。これからの時代、プログラミングはノーコード、ローコード化していくため、プログラミングに関する知識はそこまでは求められないでしょう。

一方で、破壊的なトランスフォーメーションをゼロイチで生み出す“X人材”には、高度なデジタルスキルが求められます。今後の社会においては、デジタルスキルなくしては、新たな事業を考えることさえできなくなります。また、“X人材”には高度なデジタルスキルだけでなく、社会や企業そのものを変革していくための「高いビジネススキル」と「チェンジマネジメント力」も必要になるでしょう。さらには失敗を繰り返しながらも、「トライアンドエラーで成長していく力」も必要です。

DX時代は、ゼロイチを生み出す“D人材”と、既存のビジネスをデジタルで変革する“X人材”の2種類の人材が必要であり、どちらのタイプの人材を求めるのかによって、スキルセットが変わるのです。

また、DX人材のスキルについて大きく誤解されている点があります。それは、デジタルスキルよりも重要なスキルがあることです。

DXの成功には、根本にある「恐れ」と「不安」を受け入れること

【図表】デジタル時代に求められるスキル

デジタル時代に求められるスキル

参考:IBM Japan Newsroom - ニュースリリース(※2) よりコロニー社作成
IBM「The enterprise guide to closing the skills gap」

デジタルスキルを向上させれば、DX時代に対応できるわけではありません。IBMが2018年に調査した結果によると、企業がDX時代に求めるスキルの1位と2位は日米ともに「時間管理と優先付け」、「変化に柔軟に対応する力」の2つでした(※2)。

現代社会では、変化に柔軟に対応しながら、目まぐるしく変わる状況の中で「物事の優先順位」を決定していかなければなりません。高度な意思決定力と、変革の推進力が求められるのです。

こうしたVUCA時代の変化の中で、確固たる意志をもってデジタルトランスフォーメーションを成功させるためには強い意志が必要不可欠です。DXというと、どこか機械的で無機質なイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし、その実態は変革を推進し、実行する「人」によって行われるのです。

変革を進めるためには、自分自身の「変わりたくない」という思いと、変わることへの「恐れ」と「不安」に向き合う必要があります。そうでなければ、これまでのやり方や在り方にとらわれ、“コンフォートゾーン”にとどまったままになってしまうでしょう。

人は誰もが変わることを恐れます。先の見えない状況に対して、不安を抱くこともあるでしょう。こうした恐れと不安を乗り越えていくことがデジタルトランスフォーメーションでは必ず必要になるのです。しかし、企業のなかには、組織にある、変わることへの恐れと不安を乗り越えることができずにDXに失敗するケースもあります。

乗り越えるためには一度、自分自身の中にあるネガティブな感情を否定せずにすべて受け入れるべきです。そこから変革に向けて、自分自身の志を見つけ、強い思いで変革を成功へと導いていく必要があります。デジタルトランスフォーメーションは、社会の「機械化」ではありません。地球人類が、仕事をデジタル化することにより、より人間らしさを取り戻していく試みなのです。

ではこれから人間は、どのように変わっていくべきなのでしょうか。次回からはDX時代における人間の創造的な在り方について解説します。


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