新型コロナウイルスの感染拡大により、一気に定着したテレワーク。クラスターの発生を防ぐとともに、移動時間も削減できるなど従業員にはおおむね好評だ。その一方では、社員同士が顔を会わせてコミュニケーションする機会がなくなったことで、チームとしての結束力・一体感の低下も懸念されている。そこで、今回は「チームワーク」にフォーカスし、その意味やもたらすメリット、高めるうえでのポイントなどを解説していきたい。
「チームワーク」の意味とは? 高めるうえで大切なこと、コミュニケーションや仕事に影響する課題なども解説

「チームワーク」の意味や重要性とは何か

「チームワーク」とは、組織に属するメンバーが共通の目標を達成するために、お互いに協力・連携しながら、相乗的効果を導く共同作業を指す。チームが同じであっても、メンバーの特性は全く異なるものだ。リーダーシップを発揮する人もいれば、フォロワーシップを発揮する人もいる。それぞれが自分の役割・能力を認識し、どうしたらチームに貢献できるかを考え組織としての力を最大化させていく。そうしたチームを作り上げていくことが、重要となる。

●重要視されている背景

近年、ビジネスシーンにおいてチームワークの重要性が一段と高まっている。その背景には、「VUCA時代」と言われるように先行きが不透明で、予測が困難な状況にあることが挙げられる。環境の変化があまりにも激しく、もはや個人の能力だけに依存していられない。それだけに、専門性や強みの異なるメンバーを集め、チーム体制で経営課題に取り組んでいくことが求められている。

また、経済のグローバル化や技術革新により、年々ビジネスモデルの複雑化が進んでいる点も見逃せない。これに伴い、取り組むべき課題も従来の発想や視点ではとても解決できない複雑かつ高度なものが増えている。こうした変化を受けて、企業では部門・チーム横断のプロジェクトやタスクフォースが次々と生まれつつある。
もう1点は、さまざまな価値観を持った人材を採用し、企業価値を高めていくために「ダイバーシティ」という考え方が経営に取り入れられてきている点も指摘しておきたい。

●チームとグループとの違い

チームと似た言葉に、グループがある。組織行動学では、チームとグループは全く別のものとして区別されている。まず、グループとは特定の目的のために集まった単なる集団であり、集団としての目標があるかないかは問われない。そのため、リーダーが必要ではない時もある要らない。メンバーの協調関係があるからこそ成り立っているのだ。また、全体の成果は、メンバー一人ひとりが発揮した能力を合計したものと考えられている。

これに対して、チームではメンバー全員が共同体として、同一の目標を目指して活動する。リーダーのもと、メンバーは相互に刺激し合い、相乗効果を高めながら成果を導いていくことが特徴だ。個人の能力で解決できない課題も、チームの総合力で解決していけるといったメリットがある。

「チームワーク」がもたらすメリット

次に、「チームワーク」がどんなメリットをもたらすかを考察してみたい。

●一人では達成できない業務に取り組める

「チームワーク」が高いと、メンバーそれぞれの協力度合いが高まり、お互いを補いあえる。全員で同じ目標に向かって力を出し合うので、時には個人の能力を超越し、予想以上の成果を引き出すことができる。一人では達成できない大きな業務に取り組めるのもそのためだ。

●組織のパフォーマンス・生産性が向上する

「チームワーク」が良好だと、メンバー間の信頼関係が構築されやすい。自ずと、チームとしての結束力が高まったり、一体感が醸成されたりするので、組織のパフォーマンスや生産性を向上させることができる。

●モチベーションが向上する

お互いの能力を認め合ったり、切磋琢磨し合ったりすると、自分の存在や能力に自信を持てるようになり、仕事へのモチベーションが向上する。また、組織に対するロイヤリティや帰属意識も向上するので、定着率を高める利点もある。結果として、組織の目的達成に向けて今まで以上に貢献することができる。

●情報共有が盛んになる

情報共有が盛んになるのも「チームワーク」がもたらすメリットだ。打ち合わせやフィードバックなど、コミュニケーションを取る機会が増え、必要な情報も集まりやすくなる。

●メンバー同士での助け合いが増える

「チームワーク」が機能すると、メンバー間で良い関係が構築される。万が一、困難な状況に直面することがあっても、メンバー同士でフォローしあい、積極的な組織運営でその困難を乗り切っていくことができるはずだ。

●変化に対応しやすくなる

「チームワーク」が高い企業には、強固な結束力・信頼関係が構築されやすい。そのため、困難な状況に陥っても目標を見失わず、メンバー一人ひとりが今できることを地道に行動していける。そのため、周囲の環境変化にも対応しやすいだろう。

●新たなアイデアが生まれやすい

チームの中には、考え方や価値観、発想の仕方などが異なるメンバーは当然いるものだ。そうした違いが、チームに良い刺激を与え、新たなアイデアにつながることが多い。それを起点にしてメンバー同士で発想を広げ、斬新なプランを作り上げていけるのも「チームワーク」がもたらすメリットと言って良い。

「チームワーク」が欠けることによるデメリットとは

「チームワーク」が欠けると、どのようなデメリットが生じてくるのかも解説したい。

●生産性が低下する

「チームワーク」に問題があると、コミュニケーションが円滑ではなくなり、情報が伝達されにくくなってしまう。結果的に、メンバーは本来のパフォーマンスを発揮できなくなり、チームとしての生産性も著しく低下することとなる。

●モチベーションの低下やぶら下がり社員が増える

「チームワーク」が悪いと、コミュニケーションが減ってしまい、意思疎通が上手くいかなくなる。そのため、チームの士気やメンバーのモチベーションがどうしても低下してしまう。発言を控える社員や、仕事をしているふりをするぶらさがり社員が増えることもあるので、チーム全体の業務効率がダウンせざるを得なくなってしまうだろう。

●他責が増える

「チームワーク」が機能しないと、責任を他人に押しつけ合うなど、他責が増えてしまう。自ずとチーム内の人間関係が悪化しがちだ。

●意見のぶつかり合いが増える

「チームワーク」が悪化するとどうしても意見の対立、ぶつかりあいが起こりやすくなる。本来であれば、お互いに協調して目的の達成に向けて動かなければならない。メンバー間に禍根を残すようなことがあれば、どのような結果になるかは目に見えているだろう。

●目標達成に時間がかかる

「チームワーク」に問題があると、メンバー同士の協力が円滑に進まなくなってしまう。なかには、「仲間に相談しても意味がない」と考え、自分一人で課題解決にあたろうとするケースも見られるだろう。それでは、たとえ簡単に解決できることであっても、思った以上に時間がかかってしまう。劇的に変化していく顧客のニーズや市場の動きにスピーディに対応することは、難しくなっていく。

「チームワーク」を高めるうえで大切なポイント

最後に、「チームワーク」を高めていくために心がけたいポイントを整理しよう。

●ビジョンの共有と役割の明確化

「チームワーク」を向上させるには、チームとしてのビジョンを共有した上で、メンバー一人ひとりが果たすべき役割を明確化することが重要だ。「どんな目標に向けて行動すれば良いのか?」、「それを実現するために、どんな役割を果たせば良いか?」「メンバーには何が期待されているのか?」。これらを、しっかりと理解する必要がある。それができれば、全員が同じベクトルに向かって責任ある行動ができるはずだ。同時に、メンバー同士がそれぞれの役割分担を理解するため、チーム全体の視点から捉えた業務調整などを行うのも得策である。

●心理的安全性を高める

「チームワーク」を発揮する上で円滑なコミュニケーションは欠かせない。そのためにも、誰もが忌憚なく発言できるよう、心理的安全性の高い職場環境を構築する必要がある。

●メンバー同士のコミュニケーションに気を配る

「チームワーク」には、活発なコミュニケーションが欠かせない。当然ながら、誰もが対等に意見を述べられる環境を構築する必要がある。もちろん、単に自己主張すれば良いというわけではない。お互いの意見や考えの違いを認めた上で、チームとしての協調性を大切にしていくことが重要となる。

●個性を尊重する

メンバーの個性や能力を尊重することも重要だ。それぞれに違いがあっても良い。むしろ、その違いを前提に役割を与え、それを十分に果たせるよう支援していくことが重要になる。

●メンバーそれぞれに違う役割を持たせる

「チームワーク」を高めるには、メンバーそれぞれに役割を設定する必要がある。相互補完というメリットを活かすことができるとともに、メンバー間の競争を避けるという意味合いも含まれている。その際には、各自に備わる能力や特性などを理解したうえで、最適なメンバーを選出する必要がある。さらには、活発に意見交換できる雰囲気作りも心がけたい。

●リーダーシップやフォロワーシップの発揮

メンバーの自主性を尊重し、個性を活かしながら、個人のパフォーマンスを最大化させていくためにも、チームリーダーの役割が大きい。強いリーダーシップはもちろんのこと、日頃からコミュニケーションを図り、メンバーのサポートを適切に行うことも重要だ。また、メンバーは自分の意見を述べるだけでなく、決定事項に対して全力を尽くすフォロワーシップを持つ必要がある。

まとめ

そもそも、どんなに優秀であっても一人の人間ができることには限界がある。しかし、チームとして結束できると、人数分以上の成果を上げることもあり得る。企業が最高のチームを作ろうとするのも、容易に理解できるのではないだろうか。今回は、そうしたチームづくりに不可欠となるポイントをいくつか取り上げたが、まずはリーダーやメンバーを問わず、自分自身のことを理解できているかどうかを問い直してみてほしい。チームのなかで求められている役割、チームの状況などを認識できる人は「チームワーク」のレベルが高い。人事担当者やマネージャーも、目標の達成に向けて、チームに欠けている役割は何か、それを補うために自分には何ができるかを瞬時に把握し、行動に落とし込んでいける人材を育てていってもらいたい。
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