2021年の人事はどうなる?:概論編〜キーワードは「2極化」〜【44】
前回、2020年の人事を表す3大キーワードは、「テレワーク」、「DX」、「ジョブ型雇用」だとお伝えしました(※1)。今年は本当に激変の1年でしたが、まだまだ新型コロナウイルスの影響が続く中、2021年の人事はどうなるのでしょうか。そこで、全体の流れを予測する「概論編」と、より実務的な対応を解説する「実務編」の2回に分けて、来年の予測をお送りいたします。今回は概論編です。

※1 テレワーク・DX・ジョブ型雇用〜新型コロナウイルスに見舞われた2020年の人事3大トピックを振り返る〜【43】

テレワークか出勤か。「働き方の2極化」が進む日本企業

2020年も年末を迎えましたが、世界中で再び新型コロナウイルスの影響がクローズアップされています。思い返せば、私たちは約1年もの間、先の見えない社会情勢の中で生活を続けてきました。この状況はいつまで続くのでしょうか。ワクチン開発の話題がニュースに出るものの、量産にはまだまだ時間がかかりそうです。つまり、2021年も新型コロナウイルスの影響が続くことは、皆さんも予測の通りでしょう。

最近感じるのは、夏ごろよりも通勤する方が増えていることです。緊急事態宣言が解除された7〜8月頃、ラッシュアワーの山手線は、座れるほど空いていました。しかしこの12月は、座れないどころか立っている方と肩がぶつかるほどの混雑具合です。それでも新型コロナウイルスの影響が始まる前の同時間帯と比べると80〜90%程度の乗車率だとは感じますが、7〜8月頃に比べると明らかに通勤する方が増えてきています。

私は普段、ほとんどの仕事をテレワークで行っています。慣れてしまえば、会社に出社するよりも効率的に仕事を進めることができ、とても助かっています。しかし友人の会社や、普段やりとりさせていただく取引先のベンダーでは、従来のような「出社するスタイル」の働き方をしている、また一部の大手企業では「テレワークは感染拡大防止に対応するための一時的な措置」として導入していたという企業も少なくありません。

もちろん、すべての企業がテレワークを実施できるわけではありません。しかし、「新しい働き方にすっかり慣れてしまった企業」と、「従来の働き方に戻ってしまった企業」の2極化が進んでいると感じます。

人事部も「現状維持派」と「変革派」の2極化が進む

この2極化の流れは、働き方だけではありません。前回ご紹介した「ジョブ型雇用」や「DX」などの新たな社会環境に対して、「対応が進む会社」と「そうではない会社」の2極化が進んでいると感じます。

新型コロナウイルスの影響による経済活動の停滞は深刻なものの、2008年のリーマンショックのような金融システムへの影響は少ないため、企業によっては2021年から業績が回復してくる可能性もあるでしょう。企業にとって重要なのは「いかに早く立ち直れるか」です。

リーマンショックからいち早く回復した企業の中には、「人事部が主導で組織風土改革を行った結果、売上高が増えた」という事例もあります。今回の新型コロナウイルスの影響から立ち直るためには、新しい時代の流れを読んで、組織づくりや人的資本の補強を行う取り組みが欠かせません。

人事部の中でも、「この状況はいつか回復するだろう」と消極的に考え、“従来の労務管理中心の人事部を続ける企業”と、「業績回復に向けて、いまこそ改革の時」ととらえて、人材獲得と組織パフォーマンス向上を推進する“戦略人事部にトランスフォーメーションする企業”の2つに分かれていくと考えられます。

加えて、人事部とIT部門の融合がさらに進むのではないでしょうか。テレワーク導入だけではなく、社員情報の管理やコミュニケーションツールの提供は、人事部とIT部門が共同で取り組むべき課題です。企業によっては、人事部内にDX専任担当者を置くケースも増えてくるでしょう。

なお、リーマンショックの際に採用を凍結した企業は、10年以上たった現在になって、「中間層の不足」による「管理職のプレーヤー化」という問題を引き起こしています。企業の中核を担う中間層の不足が、組織の生産性を低下させているのです。

新型コロナウイルスの影響を「いま何とかしのぐ」という視点で対応する企業と、「5年先や10年先を見据えて戦略的に動く」企業では、これから大きな差が開いてくると予測します。2021年は、この2極化の兆候が徐々に見られる年になるでしょう。

「人材版伊藤レポート」から今後の人事のあり方を読み解く

2020年9月、経済産業省は企業のこれからの人材戦略のあり方を説く「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書」を発表しました(※2)。この報告書は、2014年発表の「伊藤レポート」(経済産業省:「『持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築〜』プロジェクト」最終報告書の通称)をまとめた一橋大学 経営管理研究科の伊藤邦雄 名誉教授を座長として検討が行われたため、「人材版伊藤レポート」という通称がつけられています。

この報告書では、新型コロナウイルスの影響やテクノロジーの進化により、新たな仕事の進め方が求められる中で、企業はこれまでの成功体験にとらわれず、人材戦略を大きく変革する必要があるとしています。また、変化の激しい時代に、私たちは「事業が突然なくなる恐れ」があることも体験しました。事業変更を余儀なくされる中では、どんな状況でも対応できる人材の力が重要です。本レポートでは、人材を「人財」ととらえ、人件費を「コスト」ではなく「投資」として、積極的に人的資本を活用する重要性を訴えています。

さらには、世界的にSDGsやESGといった、社会環境に対する企業の取り組みも注目されています。これからの人事部は、企業の成長を推進するとともに、社会に対して責任を果たす部門になっていくと考えられます。日本でもやっとSDGsの取り組みが本格化してきましたが、世界ではすでに当たり前のこととして行われています。

来年は、「人財活用」と「社会課題への取り組み」が、人事部に問われる年になるのではないでしょうか。

次回は、2021年に人事は具体的に何に取り組むべきなのか、実務的視点から解説します。


※2 経済産業省:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 〜人材版伊藤レポート〜
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