テレワーク・DX・ジョブ型雇用〜2020年の3大トピックを振り返る〜【43】
2020年も気づけば年の瀬。今年は新型コロナウイルスの影響で、身も心も落ち着かず、あっという間の1年だったのではないでしょうか。私たちはいま、1年前には誰もが予想もしていなかった状況にいます。日々の暮らし、働き方、企業の在り方など、すべてがすっかり変わってしまいました。そして、人事面でも大きな変化のある1年でした。12月のInside HRは、人事担当者の視点から激動の2020年を振り返ってみます。

世間も人事も大きく変化した2020年

2020年はみなさんにとって、どのような1年でしたか? 日々新型コロナウイルスのニュースを追いかけながら、気づけば年末を迎えていた。そんな方も多いのではないでしょうか。海外渡航禁止や外出自粛ムードの中、日本の良さや家族とのつながりの大切さを、改めて感じた方もいらっしゃると思います。まさに中国の太陰太極図のように、陽が陰に転じて陰中に陽が現れる、そんな1年だったように感じます。

そのような状況下で、人事の仕事にも大きな変化が生まれた年となりました。そこで、独断と偏見で選んだ「2020年3大トピック」について考えてみます。

新しい生活様式とテレワーク
政府が2020年4月に緊急事態宣言を発出し、日本は一気に外出が制限される事態となりました。3月の「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)」改正から、1ヵ月程度の出来事でした。

その間、各企業の人事部では、テレワークの整備が急ピッチで進んでいきました。一方で、業務特性の都合や、思い切ったIT投資ができないといった事情で、テレワークが導入できない企業も現れます。はんこをひとつ押すためだけにわざわざ出社する「はんこ出社」が揶揄されたのも、この頃だったのではないでしょうか。また、「3密」や「ソーシャル・ディスタンス」という新しい言葉も誕生し、企業内部でも消毒用アルコールの設置、会議室のドア解放、大人数での会合禁止といったルール整備が進んでいきました。

余談ですが、以前受講したマーケティングの講義で、「言葉で市場が生まれる」ことを習いました。例をあげると、ある雑誌が大人の女性に対して「女子」という言葉を使ったことで、「大人女子」や「女子会」という言葉が生まれ、さらに市場が生まれました。同じように、今年は「新しい生活様式」あるいは「ニューノーマル」という言葉から、新しい働き方や生活が発展しました。企業も人も言葉に動かされる、そんな年だったのではないでしょうか。

人事のDX
テレワークの急速な普及から、人事界隈でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に浸透していきました。HRIS(人事情報システム)の整備に加え、Zoomなどのツールを用い、教育研修や採用活動のオンライン化が進んでいます。DXは単なるデジタル活用ではなく、業務プロセスそのものものが変わる取り組みです。例えば研修であれば、オンライン化することで、全員がリアルタイムに受講する必要がなくなります。また、長時間のオンライン講義は集中力が途切れるため、短時間かつ多頻度の講義構成になるでしょう。多くの人事担当者は、急に訪れたDX時代に「本当に効果的な施策は何か」を考え続けた1年だったのではないでしょうか。

ジョブ型雇用元年
今年は日立を中心に、大手企業が「ジョブ型雇用」へと一気にシフトしました。日本の労働文化ともいうべき「メンバーシップ型雇用」が終焉を迎え、新たな雇用制度の時代がスタートしたのです。ですが、課題も残されています。欧米と比べて日本ではまだまだ労働市場が発達していないため、ジョブに最適な人材を簡単には調達できません。また、日本では法律により雇用が守られているため、欧米企業のように人材を入れ替え、社会全体で適材適所を生み出す仕組みが整っていないのです。雇用の流動性が低い日本では、当面は社内でジョブに合う人材を育成する「日本版ジョブ型雇用」が中心になるのではないでしょうか。

2020年は「企業の本質」が見えた年

2020年は企業にとってまさに陰と陽、明暗が分かれる1年でした。変化の激しい現代の性質をとらえ、以前からテレワークなどの柔軟な働き方を採用してきた企業と、伝統的な働き方を維持する企業の間で対応が分かれました。以前からテレワークに積極的に取り組んできたリコーやカルビーでは、緊急事態宣言の際にも全く問題なくスムーズに仕事ができたそうです。一方でもともとIT化が遅れていた製造業や飲食業では、対応が遅れ、業務が一時的にストップする企業もありました。

また、業績面でも明暗が分かれました。飲食業では、回転寿司のスシローが過去最高の売上高を達成。アプリを活用した「お持ち帰り」のデジタル化を早期に進めたことが勝因になったといいます。製造業でも、シャープのマスク製造のように、コロナ禍の新しい需要を捉えて、売上の大幅減少を抑えた企業が生まれました。反対に、人海戦術で営業活動を行ってきた企業では、顧客先への訪問ができなくなり、一気に売上がなくなることも。まさに企業の「先を読む力」や「レジリエンス」が垣間見えた年だったのではないでしょうか。何かが起きた時こそ、企業の真の力が試されるのだと、身をもって理解できました。

「人事が価値創造する時代」の本格到来

2020年も年末を迎え、人事の在り方も年初とはかなり違ってきています。テレワークに戸惑っていた年初と比べ、すっかり「新しい働き方」や「新しい生活様式」が当たり前になりました。インターネットさえつながっていれば、どこでも誰とでも働ける時代の到来。「会社に行くこと」自体が仕事ではない、そう多くの方が実感を持って理解されたのではないでしょうか。

従来の人事は、物理的な会社、あるいは事業所を起点に人員配置を考えていました。採用にしても会社への通勤圏内の方が対象となり、会社の中ではいかに生産性を上げられるかを考え、職場のフリーアドレス化を進めました。しかしこれからは、物理的な場所ではなく、バーチャル空間でつながる「場」が職場になります。実際にVRでつながる職場をつくった企業も現れました。物理的なつながりがなくなる中で、いかに新たな形式の会社をつくるのか。そして物理的な制約がなくなる中で、いかにこれまでの考え方にとらわれず、組織のパフォーマンスを上げることができるのか。まさに人事が積極的に動き、「社会と会社に対して価値創造する時代」が本格的に訪れようとしています。

次回は2021年の人事について予測をお送りいたします。どうぞお楽しみに!
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