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ワークスアプリケーションズが主催する日本最大級のビジネスカンファレンス 『COMPANY Forum 2017』 講演録

知の探策が日本を変える 〜「イノベーションを生めない日本企業」から脱するために〜

早稲田大学ビジネススクール 早稲田大学大学院経営管理研究科 准教授 入山 章栄
2018/01/30

いま、自社からイノベーションが生まれないことに危機感を感じる日本企業が増えている。しかしそもそもイノベーションの本質はどこにあるのか。それを阻んでいる日本の企業文化や体質とはどういったものなのか。そしてその中で個人はどのように動き、価値を発揮すればよいのか。ベストセラーとなった『世界の経営学者はいま何を考えているのか』の出版以降、ハーバード・ビジネス・レビュー、NewsPicks、Forbes Japanなどで連載を持つ注目の経営学者 入山章栄氏が、世界最先端のイノベーション理論を語った。

企業のイノベーションとは人間の認知科学を突き詰めたもの

圧倒的に変化と競争が激しい時代に入りました。人工知能やIoT、量子コンピュータなど、新しいテクノロジーもどんどん出てきています。これまで平穏だった業界が、いきなりなくなってしまうことも起こりえる時代。何もしないでぼーっとしていると、会社はなくなってしまいます。だからこそこれからの企業には、新しいこと=イノベーションが必要になりました。

まず、本日お話しするイノベーションについてですが、これはグーグルやアップルがやっているような大きなイノベーションのことではありません。新規事業や新規プロジェクトの企画、実行から、日々の細かい業務まで含め、会社を少しでも改善し、前に進めることをまとめて、イノベーションと考えて、お話を進めていきます。

新しいアイデアとは「既存の知」×「既存の知」

イノベーションの第一歩は、当然ながら新しいアイデア、新しい知を生み出すことです。新しいアイデア=新しい知とは、今ある「既存の知」と別の「既存の知」との、新しい組み合わせです。人間は、ゼロからは何も生み出せません。なぜ、知を作ることが難しいのか? それは、人間の認知に限界があり、認知できるものだけを組み合わせる傾向にあるからです。

何十年も同じ業界、会社にいる人だけでは、既存の知しか生まれず、目の前の既存の知同士でしか組み合わせができません。ですから、そこから新しい知=イノベーションは生まれません。ではどうすればいいのか? それは、目の前ではなく、自分からなるべく遠く離れた知を幅広く探して、今自分が持っている知と組み合わせることです。私はこれを「知の探索」と呼んでいます。

トヨタ生産システムもTSUTAYAも、遠くの知を組み合わせて生まれた

イノベーションの第一歩というのは、知の探索から始まります。たとえば、「トヨタ生産システム」は、アメリカのスーパーマーケットのフォーマットを組み合わせました。TSUTAYAのCD・DVDのレンタルは、消費者金融のビジネスモデルを組み合わせました。どちらも、本体から遠く離れた知を組み合わせたのです。

様々な遠くの知を組み合わせて、これはいけると思った組み合わせがあれば、今度はそれを、徹底的に深掘りします。私はこれを「知の深化」と呼んでいます。

この「知の探索」と「知の深化」をバランスよく、高いレベルで行えば、イノベーションを起こせる確率が高くなります。

日本企業にイノベーションが生まれない理由

ところが企業や人は、「知の深化」に偏る傾向にあります。人は認知の限界のせいで、すでに目の前にあるものを深掘りする傾向があります。そして何より、知の探索は大変です。遠くを探すのに、時間もお金もかかるし、人も必要だからです。

ただ、「知の探索」をして遠くの知をたくさん仕入れ、組み合わせても、多くは失敗します。また企業の予算は限られており、売上を達成するため、目の前の儲かっているものの方から先に深掘りしてしまいがちです。だから、「知の深化」に偏ってしまうのです。

「成功か・失敗か」の評価制度ではイノベーションは生まれない

では、どうやったら企業が「知の探索」に力を注げるようになるのでしょうか?それは、企業が社員に「失敗」を認める風土をつくることです。たとえば、天才といわれるアップルのスティーブ・ジョブズは、成功したiPhoneやiMacの影に、膨大な数の失敗作があります。

ジョブズは、典型的な「知の探索」型人間です。アップルはデザインに定評があり、特にフォントが美しいとされていますが、これはジョブズが学生時代に学んだカリグラフィー(西洋書道)がルーツです。ジョブズは、自分の本業から遠く離れたことにいろいろ関心を持っていて、それをたくさん組み合わせていました。だから、それだけ失敗の数も膨大になったのです。

ここで皆さんに考えていただきたいのは、「どうやって組織に失敗を取り込むか」です。
そのために見直していただきたいのは評価制度です。

「成功か」「失敗か」の紋切り型評価では、イノベーションは生まれません。日本企業では、たとえばサイバーエージェントは、成功か失敗かではなく、チャレンジの数や失敗の数を評価軸にしています。

「彼は今回こけたけど、その分事業の種をまいたよね」とか「彼女はあそこで失敗したけど、部下をうまくモチベートしたよね」といったように、定性的な評価を行うことが大切なのです。

プロフィール

早稲田大学ビジネススクール 早稲田大学大学院経営管理研究科 准教授 入山 章栄

早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授。
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。
三菱総合研究所で、主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。
同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年より現職。「Strategic Management Journal」「Journal of International Business Studies」など国際的な主要経営学術誌に論文を多数発表。
―著書:『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社) 他

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      唐池 恒二氏

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      島村 公俊氏

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      株式会社ファンケル ファンケル大学 教育企画部 教育企画運営グループ 課長

      2007年 株式会社ファンケルに入社。電話窓口部門への配属を経て、人事企画部門に3年半従事。 2013年 社内教育部門(ファンケル大学)の設立とともに、新入社員から役員層までの研修を行う部署の課長として、社内研修の内製化に積極的に取り組む。 2014年度1,000名を超える従業員を対象に実施した理念研修をきっかけに、従業員の特徴や傾向を把握。 その後、従業員の傾向に合わせた社内研修の構築を行い、2016年度は80%以上の研修を社内講師で実施し、年間のべ2,900名が受講。 また、反転教育の導入においても、企画から構築まで全て社内で完結させ、従業員の研修転移に貢献。 現在は、店舗・窓口部門共通の社内資格制度と教育プログラムの再構築に取り組む。

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      原田 謙太郎 氏

      株式会社ビームス 人事本部 人材開発部 係長

      1998年に日本電信電話株式会社(NTT)​へ新卒入社。2000年に株式会社ビームスへ転職。販売職から店舗マネジメントを経て、2011年に人材開発部へ異動。現場での育成実績を活かし、キャリア自律とリーダーシップ開発をリンクさせた年次研修制度や、経験学習に紐づいた5者面談の仕組みなどを構築。2015年には青山学院大学のワークショップデザイナー育成プログラムを修了し専門性を高める。現在は人材開発部の責任者として、大学や他組織との連携など、これまでの研修施策だけにとらわれない、新しい人材育成の可能性にチャレンジしている。

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      加藤 雄一郎氏

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      東京工業大学大学院 博士課程 価値システム専攻修了。博士(学術)。食品会社、広告会社を経て、2003年に名古屋工業大学大学院 産業戦略工学専攻に着任。2015年10月から現職。専門はマーケティング、競争戦略、組織開発、事業創造人財育成。建機、電子機器、自動車、トイレタリ、食品など企業を対象にした事業価値創造プロジェクトや人財育成研修など企業指導多数。主な著書として、『JSQC選書9 ブランドマネジメント:究極的なありたい姿が組織能力を更に高める』(日本規格協会)、『理想追求型QCストーリー:未来の顧客価値を起点にしたコンセプト主導型の新製品・サービス開発手法』(日科技連出版社)がある。2015年よりデミング賞審査委員会委員。

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      江上 茂樹氏

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      1995年に東京大学経済学部卒業後、三菱自動車工業株式会社に入社し、川崎工場の人事・労務部門に配属。2003年のトラック・バス部門分社に伴い、三菱ふそうトラック・バス株式会社へ移籍し、人事・採用・教育を担当。途中、CEOアシスタントを経て、2007年人事・総務本部組織戦略部長、2008年開発本部開発管理部長、2010年人事担当常務人事・総務本部長(兼ダイムラートラックス・アジア人事責任者)を歴任し、独ダイムラー傘下となった同社の人事制度のグローバルスタンダードへの転換を図った。2015年11月サトーホールディングス株式会社最高人財責任者(CHRO)に就任。2016年7月同社執行役員。2017年4月北上事業所長を兼務。

    • 山下 茂樹氏

      山下 茂樹氏

      武田薬品工業株式会社 グローバルHR 人材開発・組織開発(日本)ヘッド

      1985年立教大学社会学部卒業。キヤノン、モービル石油(現エクソンモービル)にてセールス&マーケティング業務に従事。1998年よりGE横河メディカルシステム(GEYMS)でサービスマーケティングマネジャーとして画像診断装置のサービスビジネスに従事。2000年南カリフォルニア大学MBA取得を節目に、キヤリアをセールス&マーケティングから人事、人材開発に転換。GEYMS、メリルリンチHRリーダーシッププログラムを経て、2002年より、日本イーライリリーにおいて幅広い事業領域でのHRビジネスパートナー及び人材開発、組織開発、社内広報を歴任。シーメンスでのHRビジネスパートナーを経て、2012年より、MSDにて次世代リーダーの採用、育成、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、後継者育成計画等のタレントマネジメント業務を歴任。2017年7月より現職。MBTI認定ユーザー(2007)、CTI認定コーアクティブコーチ(2012)、立教大学GLP兼任講師(2017)

    • 須東 朋広氏

      須東 朋広氏

      多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授

      2003年、最高人事責任者の在り方を研究する日本CHO協会の立ち上げに従事し、事務局長として8年半務める。 2011年7月からはインテリジェンスHITO総研リサーチ部主席研究員として日本的雇用システムの在り方の研究から中高年の雇用やキャリア、女性躍進、障がい者雇用、転職者、正社員の研究活動を行ってきた。 2016年7月から、今までの研究活動から組織内でなんらかの理由で声を上げられない社員が、イキイキ働くために、一般社団法人組織内サイレントマイノリティを立ち上げる。 同社代表理事として現在に至る。そのほか、専修大学 非常勤講師、HR総研 客員研究員を兼任。

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    講師

    • 井上 陽介

      井上 陽介氏

      株式会社グロービス グロービス・デジタル・プラットフォーム マネジング・ディレクター

      消費財メーカーに従事後、グロービスにて企業向け人材コンサルティング、名古屋オフィス新規開設リーダー、法人部門マネジング・ディレクターを経て、デジタル・テクノロジーで人材育成にイノベーションを興すことを目的としたグロービス・デジタル・プラットフォーム部門を立ち上げ責任者として組織をリードする。