労働人口の減少やグローバル化の加速、またAIやテクノロジーの進化など、企業を取り巻く環境は著しく変化している。そうしたなか、人事の役割りやあり方も大きく変化している。

HR総研では、これからの人事がどうなっていくべきなのか、あるべき姿を考えるために、次世代の人事について考える「NEXT HR」に関する調査を実施し、313名もの回答を得た。

その結果、「日本企業の人事はガラパゴスだと思う」という人は過半数の55%、「日本企業の人事は、今後大きく変化する必要がある」に対して「そう思う」と回答した人は57%と約6割に上った。
「人事が今後10年の間に対応しなければならない重要項目」のトップは「少子化による若年層の減少」となった。

詳しい調査結果や人事の皆様のコメントを、ぜひご覧ください。

過半数が「日本の人事はガラパゴスだと思う」と回答

HR総研:NEXT HR ~次世代の人事について考える~vol.1

よく「日本の人事は独特だ」「他国では通用しない」などと言われることがあるが、実際のところ人事の皆様はどのように感じているのだろうか。

アンケートの最初の設問は、「日本企業の人事は『ガラパゴス』だと思いますか」である。ここで言う「ガラパゴス」とは、限られた地域で独自に進化し、他では通用しにくい、という意味だ。
結果は、55%が「そう思う」と回答した。「そう思わない」は16%で少数派であり、残りは「どちらともいえない」で29%である。

ある日本のITグローバル企業が、人事のグローバル統合を進めたとき、最初は「海外の人事のやり方がおかしいと感じていた」が、やがて「日本の人事が特殊なのだ」と感じるようになった、という話を聞いたことがある。そうした感覚を実感値として、または情報を得ることで過半数の人事が「日本はガラパゴス」と認識するようになったのだろう。

多機能でボタンがたくさんついた日本の携帯電話機は、2000年代に日本市場で興隆を極めたが世界標準にはなれず、「ガラパゴス携帯=ガラケー」と呼ばれて縮小の一途を辿った。一括採用、終身雇用、年功序列を基本形とする日本型人事にも、ガラケーと同じ運命が待っているのだろうか。そんな危機感が露になった回答傾向である。

「日本の人事は大きく変化する必要がある」は57%

HR総研:NEXT HR ~次世代の人事について考える~vol.1

続いては、「日本企業の人事は、今後大きく変化する必要があると思いますか」である。これもガラパゴスとほぼ同様で、57%が「そう思う」と回答している。

では、「最も変えなければならないことは何か」について、自由記述にて回答してもらった。

■グローバルに関して
・グローバルな人事制度と互換性があり、海外のグローバル人材とグローバルポストを競える人材育成をしなければならない。年功や終身雇用で守られているだけでなく、グローバル基準で正当に評価すること、それに伴い、その評価に見合う報酬を支払っていくことが、グローバルで勝ち抜く条件になっていくと考えている。(1001名以上、サービス)
・グローバルな経営体制の構築(日本型経営体制からの転換)(1001名以上、メーカー)
・内外の調整と教育も含め、グローバルでダイバーシティーを意識した雇用創出。(1001名以上、情報通信)

■終身雇用に関して
・終身雇用を中心にした従来の仕組みを欧米(中国も)型の転職を前提とした形に変えていく必要がある。個人的には、就職でなく就社になっている現状(就業時間外でもその会社に縛られている、副業も認めていないなど)は文化も含めて変えるべきと思う(1001名以上、情報通信)
・労働形態。働き方改革も推進されており、人々の考え方、生き方も変わってきている。日本の人口も減となり、企業も今後すべて右肩上がりでの成長は見込めない可能性もあり、終身雇用、年功序列の形も崩れてきている。(301~1000名、メーカー)

■一括採用に関して
・画一的に「人」を判断する格好から、「個」がどのような状況で最大限のパフォーマンスを発揮するのかを、随時更新した情報をもとに見極める。また、職能として給与連動しがちな箇所を少なく、職務として給与連動させることを継続検討すべき。そのためには、新卒一括採用を見改める必要がある。(1001名以上、サービス)

■制度に関して
・人事評価制度(時間での評価から成果での評価へ)。(1001名以上、メーカー)
・職能資格制度から職務制度にし、行っているタスクによって報酬を支払う制度にしないとグローバルの観点からも遅れを取ると思慮する。(1001名以上、メーカー)
・雇用者の志向も縦軸でのスキルアップから、転社、転職による斜め軸でのスキルアップを志向しつつある。前例に拘泥せずに労働環境を真摯にとらえ、会社も雇用者もうれしく感じる新しい制度提案を出来る気概が必要だと思う。(301~1000名、情報通信)
・根本的に「人を大切にする」ことと「人の能力を最大限に発揮させる環境や土壌づくりを重要視する」という理念を教えていきたいと思っております。既成概念を壊していかない限り、この激動の社会に生き残れないと考えております。(301~1000名、運輸)

■タレントマネジメント/多様性に関して
・タレントマネジメント(女性、高齢者、多国籍人材、ダブルワーク、テレワーク、AI・ロボット等の活用含む)分野、評価方法等(300名以下、サービス)
・多様な人材、働き方への対応。(1001名以上、メーカー)
・人財の活用の仕方の柔軟性。多様な働き方の選択肢を増やすなど。関連して、その社員毎の価値創造のバリエーションを増やす工夫など。働き方改革へのテクノロジーの積極活用など。(1001名以上、商社・流通)

■IT、テクノロジー、AIなどの活用に関して
・自分自身もIT知識に明るくなり、IT知識を持った人とのつながりを深化させておく必要があると考える。(1001名以上、メーカー)
・AIを活用しデータ活用による、人事業務全般の見直し(1001名以上、メーカー)
・AIなどHRテクノロジーの進化について行き、惑わされずに判断し、適切な対応すること。(1001名以上、メーカー)
・新しいテクノロジーへの適応、それに伴う本来大事な部分となっている「人間味」を大事にすること。(301~1000名、サービス)

今後10年間で対応すべき最重要事項は「少子化による若年層の減少」

HR総研:NEXT HR ~次世代の人事について考える~vol.1

人事が今後10年程度の間に対応しなければならない最も重要事項を1つだけ選んでもらった。
その結果、最多となったのは「少子化による若年層の減少」(28%)だ。ここ数年実感されている新卒の採用難は、少子化によりさらに困難になるのは目に見えているので、対応必須だと認識されているのだろう。
2位は「労働生産性の向上」で18%。3位は「従業員との雇用関係の多様化」で16%である。長い時間働くことが評価されるのではなく、限られた時間内でいかに生産性を向上させるかが大きな課題だ。その解決のためにも多様な働き方を企業が提示でき、従業員が個々のパフォーマンスを最大に発揮できるようになっていかなければ、日本企業の競争力は維持・発展できないだろう。

【調査概要】

調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および非上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年7月26日~8月15日
有効回答:313件(1,001名以上:35%、301~1,000名:30%、300名以下:35%)

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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