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高齢社員の「在職老齢年金」はこう計算する

2015/05/29

60歳以降の高齢社員を雇用していると、働いたことによって、本人が国から受け取る年金額を減額されてしまうことがある。このような年金を在職老齢年金という。1月26日付コラム「60歳以降働いて年金をカットされない方法」(ページ下部関連リンク参照)では、この在職老齢年金の年金減額を回避する方法を解説したが、今回は「在職老齢年金では減額される金額はどのように決まるのか」を考えてみる。

在職老齢年金の計算式
在職老齢年金の制度では、老齢厚生年金の権利を持つ方が厚生年金に加入しながら企業で勤務をしている場合、会社から受け取る給料やボーナスと、国から受け取る年金額の合計額がいくらかにより、年金が減額されることがある。具体的には、「年金の1ヵ月分」「給料の1ヵ月分」「過去1年間に受け取ったボーナスを12で割った額」の3つの金額を足し、基準となる額を超えると年金の減額が行われる。この基準額は65歳未満の場合には28万円、65歳以上の場合には47万円とされ、基準額を超えた金額の半分の額が1ヵ月分の年金から差し引かれる。

たとえば、65歳未満の方で「年金の1ヵ月分:10万円」「給料の1ヵ月分:16万円」「過去1年間にもらったボーナスを12で割った額:4万円」というケースを考える。この場合、減額される年金額の計算は次のような段取りで行われる。

・【年金】10万円+【給料】16万円+【ボーナス】4万円=30万円
  →3つの金額を足すと「30万円」になった。
・30万円-【65歳未満の基準額】28万円=2万円
  →「30万円」は基準額を「2万円」オーバーしている。
・2万円×2分の1=1万円
  →オーバーした額の半額の「1万円」を1ヵ月分の年金から差し引く。


このケースでは1ヵ月の年金が1万円減額され、10万円から9万円になる。年間では、本来ならば120万円(=1ヵ月10万円×12ヵ月)もらえるはずの年金が12万円(=1万円×12ヵ月)少なくなり、108万円になってしまう。

 この方の給料の金額が「16万円」よりも高い場合にはどうなるであろうか。先ほどのケースで給料が「30万円」であったらどうなるかを考えてみる。この場合、減額される年金額の計算は次のような段取りで行われる。

・【年金】10万円+【給料】30万円+【ボーナス】4万円=44万円
  →3つの金額を足すと「44万円」になった。
・44万円-【65歳未満の基準額】28万円=16万円
  →「44万円」は基準額を「16万円」オーバーしている。
・16万円×2分の1=8万円
  →オーバーした額の半額の「8万円」が1ヵ月分の年金から差し引かれる。


この場合には、1ヵ月の年金が8万円減額され、10万円もらえるはずの年金がわずか2万円になってしまう。年間では、本来ならば120万円(=1ヵ月10万円×12ヵ月)もらえるはずの年金が、96万円(=8万円×12ヵ月)少ない24万円になる。60歳以降、高額の給料で雇用契約を結ぶほど、受け取れる年金額が少なくなってしまうわけである。

年齢が65歳以上の場合には、「年金の1ヵ月分」「給料の1ヵ月分」「過去1年間に受け取ったボーナスを12で割った額」の3つの金額を足して47万円までは年金の減額が行われない。65歳未満よりも65歳以上のほうが、年金が減額されづらい仕組みといえる。
簡単そうで実は複雑な計算式
在職老齢年金の計算は、比較的簡単そうに見えるという特徴がある。しかしながら、計算に使用される「年金の1ヵ月分」「給料の1ヵ月分」「過去1年間にもらったボーナスを12で割った額」には、それぞれに法律上の詳細な定義があり、実際の計算はもっと複雑になる。そのため、年金の減額がないように給料額を決定したつもりが計算を誤ってしまい、実際には年金が減額されるというトラブルも少なくない。高齢社員の雇用条件を策定する際は、専門家のサポートを仰ぎながら慎重なシミュレーションを行うことが大切である。

コンサルティングハウス プライオ
代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)
高齢社員,再雇用,在職老齢年金
60歳以降の高齢社員を雇用していると、働いたことによって、本人が国から受け取る年金額を減額されてしまうことがある。このような年金を在職老齢年金という。1月26日付コラム「60歳以降働いて年金をカットされない方法」では、この在職老齢年金の年金減額を回避する方法を解説したが、今回は「在職老齢年金では減額される金額はどのように決まるのか」を考えてみる。

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