外国籍者に対する新在留資格「特定技能」に必須の“年金保険料の納付要件”とは

本年4月から、外国籍者に対する新しい在留資格として、「特定技能」という資格が認められるようになった。この在留資格を認める要件の一つに、社会保険法令の遵守を求める“公的年金保険料の納付要件”が定められている。今回はこの要件について考えてみよう。

単純労働分野で外国籍者の雇用が可能に

これまで、わが国で、「外国籍者の国内就労は高度人材に限定する」という立場を原則としてきた。そのため、単純労働分野を対象とした在留資格は設けられていなかった。

ところが、少子高齢化の影響による深刻な人手不足に対応するため、平成30年12月8日に「出入国管理及び難民認定法」、いわゆる“入管法”が改正され、本年4月1日から外国人労働者に対して、わが国での単純労働分野における就労の道が開かれることになった。そのために新設されたのが、「特定技能」という在留資格である。

「特定技能」の在留資格を持つ外国籍者について、政府では今年度の制度開始から、5年間で約34万人の受け入れを見込んでいる。「特定技能」が認められるのは、建設業や農業など、人手不足が顕著な次の14業種である。

【「特定技能」の対象となる14業種】
(01)建設業
(02)造船・舶用工業
(03)自動車整備業
(04)航空業
(05)宿泊業
(06)介護職
(07)ビルクリーニング業
(08)農業
(09)漁業
(10)飲食料品製造業
(11)外食業
(12)素形材産業
(13)産業機械製造業
(14)電気・電子情報関連産業

過去2年分の保険料納付状況の提出が義務化

今回、新設された「特定技能」はこれまでの在留資格とは異なり、申請時の提出書類の一つとして“公的年金保険料の納付状況”の分かる書類が定められている。これにより、申請者の社会保険法令の遵守状況を確認しようというものである。

具体的には、厚生年金保険に加入している事業所であれば、地方出入国在留管理官署に対して、「事業所の過去2年分の厚生年金保険料等の納付状況」を確認できる書類の提出が義務付けられた。

厚生年金保険に加入していない事業所の場合には、同署に対して「事業主個人の年金加入記録」と「事業主個人の過去2年分の国民年金保険料の納付状況」を確認できる書類の提出が必要となる。

また、外国籍者本人についても、厚生年金保険に加入していない事業所で働く場合には、同署に対して「外国籍者本人の年金加入記録」と「外国籍者本人の過去2年分の国民年金保険料の納付状況」を確認できる書類を提出しなければならない。

つまり、社会保険法令を遵守せず、公的年金保険料を正しく納付していない事業所や外国籍者には利用を認めないというのが、今回新設された「特定技能」という在留資格の大きな特徴の一つと言える。

「特定技能」の申請に必要な“公的年金保険料の納付状況”が分かる書類は、日本年金機構が交付している。日本年金機構中央年金センターに郵送で申し込むと、後日同センターから必要な書類が送られてくる仕組みだ。

「厚生年金の加入を不正に逃れている事業所」をどうチェックする

実は、本手続きによる法令遵守の確認の実効性には疑問が呈されている。なぜなら、「厚生年金保険の加入を不正に逃れている事業所」に対する確認が十分とは言えないためである。

たとえば、法人の場合は、必ず厚生年金保険に加入しなければならない「強制適用事業所」とされている。しかしながら、厚生年金保険の「強制適用事業所」であるにもかかわらず、加入手続きを行っていない法人事業所が多数存在するという現実がある。そのような事業所は、本来負担すべき厚生年金保険料を免れているのだから、社会保険法令を遵守していない典型的なケースといえる。

今回、“公的年金保険料の納付状況”が分かる書類を入手するための手続きでは、厚生年金保険に加入していない事業所の場合、『社会保険適用外事業所用』という専用の申請書を用い、事業主の個人名で日本年金機構に申し込むことになっている。

ところが、この申請書は『〜事業所用』という名称であるにもかかわらず、事業所の情報を記載する欄が一切設けられていない。そのため、日本年金機構では『社会保険適用外事業所用』の申請書を提出した事業所に対して「強制適用事業所」かどうかの確認を行うことなく、機械的に事業主個人の年金関係書類を交付することになると思われる。

従って、不正に厚生年金保険の加入を逃れている法人事業所も、『社会保険適用外事業所用』の申請書を用いて事業主の個人名で申し込むことにより、「事業主個人の年金加入記録」と「事業主個人の過去2年分の国民年金保険料の納付状況」を確認できる書類が、日本年金機構から交付されることになる。

その結果、他の要件を満たすのであれば、社会保険法令を遵守していなくても、「特定技能」の在留資格を持つ外国籍者を雇うことが可能になりかねないのである。

「特定技能」の在留資格を認めるに当たり、法務省の出入国在留管理庁が現在指定する年金関係書類が形式的に揃っているだけで、本当に社会保険法令が遵守されていると判断をしてよいのだろうか。関係各所の今後の動きを、注意深く見守りたい。
コンサルティングハウス プライオ
代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

著者プロフィール

HRプロ編集部

採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。