衛生委員会で何をやったらよいかわからないという悩みを多くの担当者が持っている。50人以上の会社では業種を問わず衛生委員会の設置しなければならない(安全にかかわる業種では安全衛生委員会)。1ヶ月に1回産業医も参加して委員会を開催する必要がある。衛生委員会の設置、開催については労働基準監督署の調査も多い。また、50人未満の会社でも安全面や衛生面に関する事項について「関係労働者の意見を聴く機会」を設けるようにしなければならないとされているので、安全・健康管理については企業規模を問わず取り上げていくべき課題だ。
 衛生委員会では、職場の安全、衛生面はもちろん、過重労働の対策の現状把握と防止、メンタルヘルス対策などは、どの企業もまず初めに検討しているテーマである。過重労働による精神疾患や心臓・脳血管疾患などの健康障害を防止する対策を立て、会社と労働者が情報を共有し、協力して実施していける衛生委員会はうってつけの場だ。

 そうした重いテーマから、職場を快適にする安全・健康管理といった気軽に実行できて社内が活性化するような楽しいテーマまで、自由に常識にとらわれずに取り上げてはいかがだろう。新入社員を対象にした、「職場の人間関係について、ストレス対処法など」といった社内セミナーなどをタイムリーに企画するのもおすすめだ。

 以下に、従業員も感心を持ちやすい、よく取り上げられているテーマの一部を紹介する。
[職場の病気予防についての例]
・職場の風邪予防
・花粉症について
・インフルエンザの予防
・熱中症対策
[室内環境等の例]
・禁煙と分煙
・梅雨の快適な過ごし方
・机の上、周辺の整理整頓
・地震対策と防災
[肥満予防]
・生活習慣病について
・メタボリックシンドロームについて
などほんの一例だが、このように考えていくとテーマは無限で、話し合いたい話題がいっぱいである。

 特に肥満予防は健康増進に直結するといわれている。食生活の欧米化と言われて久しいが、若者にも中性脂肪の多い人が目立つ。成人病はもはや中年のおじさんの独壇場ではない。
 暖かくなり体を動かしやすい季節にもなったので、衛生委員会から健康増進とダイエット&運動といったテーマをとりあげてはいかがだろうか。先日テレビ番組でとりあげられていた、日立健康管理センターの「はらすまダイエット」の例を以下に紹介する。

 日立健康管理センターの中川徹先生が産業医としての立場からの研究考案した、内臓脂肪撃退プロジェクトが「はらすまダイエット」(腹をスマートにする、の略)である。「100kcalカード」を使って食事の量を減らしたり、食べてしまったらその分運動したりといった減量メニューを100kcal単位に小分けして無理なくダイエットができるものだ。100kcalカードはHPからも一部ダウンロードできるので、参考にして実際に取り組むのもいいだろう。

 他にも、肥満対策として社員に万歩計を配り、歩数と体重減を競わせたところ、「あいつには負けたくない」という意識が働き、効果を上げた例などもある。お金をかけなくても、気楽に楽しく取り組めるユニークな健康管理を衛生委員会で取り上げて話し合い、社内の活性化につなげていただきたい。また、ひょっとすると考案した健康管理方法が本業以外のところで評価され、会社の名声を高めることも期待できるかもしれない。

 従業員の健康管理にはお金がかかる。会社は入社時の健康診断や年に1回の定期健康診断が義務なっており、これだけでも負担が重い。健康診断が利益を圧迫すると、嘆く企業も多い。しかし、「企業は人なり」とはよく言われる言葉だ。安全と健康を確保し、社員が健康でイキイキと働いて能力を発揮して成果を上げ、会社の業績が上がる、さらに健康管理の施策を充実させる、といった良い循環を生むための発想の転換を図るためにも、衛生委員会ぜひ活用しよう。

HRプロスクール 講師 富山節子
(株式会社ブレインコンサルティングオフィス 取締役)

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