2019年採用市場から考える今後の課題
2019年の採用市場は、消費税の増税といった短期的に市場に変化をもたらす出来事があったものの、全体的には売り手優位だった。経済全体を見ると、サービスやハイテクの分野で需要が増加している一方で、ローテクの製造分野では経済の減速に直面しているようだ。自動車など一部の分野では、採用に関して保守化が進んでおり、投資を遅らせるといった反応を見せている。しかし、依然として続く人材不足の影響から採用は困難を極め、企業は働き方改革への取り組みや、柔軟な雇用形態などを積極的に導入することが求められた。このような採用市場の現状から、働き手は多くの転職を経験することや、柔軟性を持ちながら働き続けられるという恩恵を受けることができるようになったともいえる。高い専門スキルを持つ候補者は、より良い条件での交渉ができる状況にある。
注目される先端技術分野と、採用市場の動向
日本では今後も、サービスとハイテク分野の人材需要が増えることが予測されている。金融、工業など日本の伝統的な産業とITによる最先端テクノロジーを組み合わせることで、新しいソリューションが生まれることも期待されている。特に、国内で高い需要を保っているヘルスケア領域での最先端医療技術分野と、IoTやAI、インターネットセキュリティなどのIT分野では継続的に人材が求められるだろう。労働人口の減少、定年退職の年齢引き上げなど、日本の労働市場は大きな変換点を迎えようとしているが、それらを打開する方法としてダイバーシティ(国籍や性別の多様性)の推進を積極的に行っていく必要があるだろう。また、柔軟な労働環境やギグエコノミーを好む働き手に対し、どのようなアプローチができるのかを考え、素早く対策を取ることが重要な鍵となる。
転職市場は、来年以降も引き続き売り手市場が続くだろうと目されている。多くの企業で、採用コスト軽減のためHRテクノロジーの導入や、採用チームへの資源投入など、採用過程の改善に向けて動き始めているようだ。より優秀な人材を確保して定着率を高めるために、企業は従業員エンゲージメントやリテンションを意識した取り組みを、大きな戦略ベースで行っていく必要がある。