「人生100年時代」を背景にシニア層の求職活動が活発化している。一つの会社でキャリアを完結させる従来型の発想は大きく変化しつつあり、定年後までも見据えながらセカンドキャリア、サードキャリアを求める動きは盛り上がりを見せている状況だ。これは何も民間企業に勤める人材に限った話ではない。国家公務員もまた、培った経験やスキルを広く社会で活かすために外の世界に目を向け始めている。

こうした状況の中で、内閣府官民人材交流センターでは、転職を希望する国家公務員の情報と、民間企業の求人情報を相互に提供する「官民ジョブサイト」をスタートさせた。現在、サイトには約2400人の国家公務員と、民間企業など約1300社が登録。完全無料で求人・求職活動が行えることもあり、活用は広がりを見せている。

今回、シニアの再就職などを支援する、一般社団法人シニアセカンドキャリア推進協会代表理事 髙平ゆかり氏と、内閣府官民人材交流センター審議官 坂本雅彦氏の対談を企画した。両者の話題はシニアの転職市場の動向や実態、国家公務員の持つ経験やスキル、民間企業への採用事例などにおよんだ。以下に対談の内容をレポートする。


プロフィール


  • 髙平 ゆかり氏

    髙平 ゆかり氏
    一般社団法人シニアセカンドキャリア推進協会 代表理事/株式会社事業承継機構 人材担当ディレクター/東京セカンドキャリア塾 講師/一般社団法人中高年齢者雇用福祉協会専任講師/上級生涯生活設計コンサルタント

    産業能率大学大学院経営情報学専攻経営情報学修了(MBA)。1986年商社系の人材会社入社。長年中高年齢層の人材ビジネスや就労支援に携わる。2011年シニア専門の人材会社常務取締役を経て2018年よりシニアセカンドキャリア推進協会 代表理事に就任。これまでに2,000名を超えるシニアのセカンドキャリア支援の実績を有する。そのほか、シニア人材の研修事業、事業承継による後継者不足にシニア人材の活用を進めるなど幅広く活動している。

  • 坂本 雅彦

    坂本 雅彦
    内閣府官民人材交流センター 審議官

    1988年、オフィス家具・文房具の大手製造販売メーカーに入社。入社時から約20年間法人営業として活躍。その経験を活かし、販売マーケティング職にキャリアチェンジ。流通チャネル活性化のための販売施策立案と推進に取り組む。2014年より約9年間、公共空間市場(官公庁・医療・教育)に向けたオフィス家具の製造・販売をおこなう事業の責任者に就任。事業戦略の策定と推進する役割を担った。2023年8月に内閣府官民人材交流センター 審議官に着任。国家公務員の再就職支援と官民の人材交流の支援のため、日々尽力している。

髙平様・坂本様

シニア層の求職活動が活発化。一方で、シニアの経験・知識を活かしきれない現状も

坂本氏:シニア世代の国家公務員の中にも、チャンスがあれば公務外に転職したいという人は結構います。シニアのセカンドキャリア、再就職支援など多く手がける髙平先生に、まずシニア世代、特に50歳以上の転職市場の動向をお伺いできればと思います。

髙平氏:求職者は右肩上がりで増えている状況です。50代に差し掛かると、役職定年や定年退職が見えてきますので、その時に備えて求職活動や、転職の準備を始めるケースも少なくありません。定年後の再雇用が満了する65歳以上でも、職を求める動きが増えています。シニアになっても働きたい、あるいは働かざるを得ない。働く理由はさまざまありますが、労働意欲が高いのは間違いないことです。

他方、社会全体の人手不足も顕在化していますので、求人数も非常に伸びています。ただ、求人の内容を見ると、職種が限定的です。具体的には、介護、マンション管理、建設、軽作業、ドライバーなどが多く、自身の経験や知識が活かせるとは限りません。求職者の希望とニーズにアンマッチがあり、シニア世代にとっては求人が増えていると実感しにくいでしょう。
髙平様
坂本氏:アンマッチを解消するには、何が必要でしょうか。

髙平氏:根深い問題で、採用に関するエイジズム(年齢差別)が課題だと思います。日本では年齢が上がるに従って採用されにくくなる傾向があります。ところが、高齢者をなぜ採用しないのか、理由を尋ねるとはっきりしないことが多いのです。何となく年齢の高い方を敬遠し、経験や知識、能力以外のところで採用の合否が決定されています。体力や人柄も含め個人差の大きなことですので、「シニア層」と一括りにせず、一人ひとりとしっかりと向き合うことが本来は求められることです。

坂本氏:私自身もシニアですので、自ら口にするのは面映ゆいところもありますが、シニアの経験や知識が活かせる場面は多々あると感じています。同時に、シニアも常にスキル向上に努め、視野を広げるために外の世界を見ることも必要不可欠でしょう。

髙平氏:おっしゃる通りです。知らず知らずのうちに「井の中の蛙」になってしまいますので、時間を見つけて社会活動やボランティア、副業などを行うのが良いのではないでしょうか。自身の専門性を活かすボランティア、「プロボノ」活動は特に公務員の方におすすめです。

坂本氏:資格の勉強を始めるのも一つの選択肢だと思います。私の周りでも、50代で勉強を始め、取得した資格を活かして転職した人が多くいます。

髙平氏:土日などに資格の勉強を始めるのは有効な手段です。最近はリスキリングが注目され、学びやすい環境が整っています。転職ではこれまでの経験が評価されることもあれば、直近3~5年の経験や学びが重視されるケースも少なくありません。

スペシャリストにもゼネラリストにも活躍の場はある

坂本氏:これまでシニアの採用に目を向けてきましたが、企業によっては自社のシニア層の活性化で精一杯ということもあります。外部のシニアに目を向ける必要性やメリットはあるでしょうか。
坂本様
髙平氏:自社のシニアの活性化と、外部のシニアの採用は異なる話だと捉えられます。外部から人材を求めるのは、自社では持ちえなかった経験や知識を獲得するためです。最近では、新規事業の創出、組織の再構築、あるいは既存事業の収束などが頻繁に行われるようになり、こうしたことは自社の人材だけではなかなかやり切れないことです。

その際、外部に人材を求める必要が生じます。場合によっては・・・

協力:内閣府官民人材交流センター



この後、下記のトピックが続きます。
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●企業とシニア人材がwin-winになる、多様な働き方のカタチとは
●必ずしも数値化できるものだけが能力ではない。シニア人材が企業にフィットし、長く活躍してもらうために必要なもの
●国家公務員として培った経験や能力を外部で活かすプラットフォームが企業の新たな力となる
●「官民ジョブサイト」がもたらず、採用ツールとしての可能性

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