令和3年3月に民間企業の「障害者法定雇用率」が2.3%に引き上げられ、令和3年度の雇用障がい者数、実雇用率は、ともに過去最高を更新しました。一方で、令和2年度のハローワークにおける障がい者新規求職申込件数、就職件数は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、減少が見られました。このような状況を照らし合わせながら、令和4年度の厚生労働省予算概算要求と、障がい者雇用に関する助成金の変更点について見ていきます。
【令和4年度版】厚生労働省の予算要求から見た「障がい者雇用施策」と「キャリアアップ助成金」の変更点

中小企業での障がい者雇用促進や、新型コロナ影響対策が今後の課題に

「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」を見ると、雇用障がい者数、実雇用率ともに過去最高を更新しており、雇用障がい者数は59 万 7,786人、対前年比3.4%上昇で、1万 9,494人増加しています。雇用者数は18年連続で過去最高となりました。また、実雇用率は2.2%となり、対前年比0.05ポイント上昇しています。一方で、令和2年度のハローワークにおける障がい者新規求職申込件数、就職件数は、新型コロナの影響を受けて減少しました。

全体的に見れば、新規の求職や就職件数は減少したものの、雇用障がい者数、実雇用率ともに過去最高となっていることから、企業が積極的に障がい者を雇用しようとしている様子がうかがえます。一方、全体の障がい者雇用は進み、大企業の多くは法定雇用率を達成しているものの、中小企業では厳しい状況が見られています。また、働く障がい者も多様化しており、希望や能力に応じた働き方ができるような取り組みが求められています。

このような中で、「令和4年度厚生労働省予算概算要求」における重点要求では、次の点に力を注ぐことが示されています。
(1)中小企業をはじめとした障がい者の雇入れ支援等
(2)精神障がい者、発達障がい者、難病患者等の多様な障がい特性に対応した就労支援
(3)障がい者の雇用を促進するためのテレワークの支援
(4)官公庁等における障がい者の雇用促進・定着支援
(5)雇用施策と福祉施策の連携による重度障がい者等の就労支援

これらについて、具体的に見ていきます。

(1)中小企業をはじめとした障がい者の雇入れ支援等


「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」で実雇用率を見ると、1,000人以上規模の企業は2.42%、500〜1,000人未満の企業では2.2%となっていますが、企業規模が小さくなるほど障がい者雇用の状況が厳しくなっていることがわかります。

【令和3年 企業規模別の障がい者実雇用率】
1,000人以上:2.42%
500〜1,000人未満:2.2%
300〜500人未満:2.08%
100〜300人未満:2.02%
45.5〜100人未満:1.81%
43.5〜45.5人未満:1.77%

そのため、ハローワークと地域の関係機関が連携し、障がい者の雇用経験・雇用ノウハウが不足している企業や、雇用障がい者が0人の企業に対して、支援の強化を図ろうとしています。また、経営改善に役立つような障がい者雇用の取り組みを進めるための支援を実施して、対象企業の取り組みをモデル事例としてまとめることが予定されています。

全国に336か所設置されている障がい者就労支援機関「障害者就業・生活支援センター」は、地域支援機関のネットワーク拠点として障がい者の就業面と生活面の一体的な相談・支援のさらなる推進を図っており、未設置圏域にセンターの設置を進めています。

(2)精神障がい者、発達障がい者、難病患者等の多様な障がい特性に対応した就労支援


障がい者雇用の中でも、精神障がい者、発達障がい者、難病患者である求職者が増えています。このような障がいのある求職者に対応できるように、ハローワークに専門の担当者を配置して、多様な障がい特性に対応できる就労支援を行うことが盛り込まれています。

大学等の高等教育を受ける発達障がい者を含め、障がいのある学生が就職活動をする際に必要な支援が受けられるよう、大学等と連携して早期に支援対象者の状況を把握し、就職準備から就職・職場定着までの一貫した支援を行う体制づくりが、昨年度に引き続き進められる予定です。

また、精神障がい者の求職者が増えていることから、障がい者の職業訓練を行なっている「障害者職業能力開発校」では、精神保健福祉士などの専門職を配置し、精神障がい者の受入れや対応のレベルアップが図られていきます。「障害者職業能力開発校」は、障がい者の適性にあった「普通職業訓練」や「高度職業訓練」を行うための公共職業能力開発施設です。「職業能力開発促進法」の第16条に基づき、国および、都道府県が設置しています。「障害者職業能力開発校」の詳細については、参考記事をご参照ください。

(3)障がい者の雇用を促進するためのテレワークの支援


コロナ禍により、テレワークという働き方が社会でも広く受け入れられるようになりました。障がい者の雇用においてもテレワークの推進を図っていくことが求められています。このようなニーズに応えていくために、障がい者のテレワーク推進支援のための企業向けガイダンスや個別企業へのコンサルティング等が実施される予定です。

(4)官公庁等における障がい者の雇用促進・定着支援


官公庁等で雇用される障がい者の定着支援を推進していくために、ハローワーク等へのジョブコーチの配置や、障がい特性に応じた個別支援、障がいに対する理解促進のための研修等が予定されています。

(5)雇用施策と福祉施策の連携による重度障がい者等の就労支援


重度障がい者等の就労支援として、雇用施策と福祉施策の連携が求められます。企業が「障害者雇用納付金制度」に基づく助成金を活用しても支障が残る場合や、重度障がい者等が自営業者として働く場合等で、自治体が必要と認めたときには、地域生活支援促進事業により支援を行うことが検討されます。

令和4年度からの「キャリアアップ助成金」の変更点

「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ促進を目的とした助成金です。正社員化や処遇改善などの取り組みをおこなう事業主に対して支給されます。非正規雇用の障がい者のキャリアアップを後押しする「障害者正社員化コース」も設けられており、雇用障がい者を対象に次のいずれかの措置を継続的に講じた場合、助成を受けられます。

●有期雇用労働者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)または無期雇用労働者に転換すること
●無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換すること

令和4年4月以降、このキャリアアップ助成金における「正社員」と「非正規雇用労働者」の定義に以下のような変更が加えられました。

●正社員定義の変更(令和4年10月1日以降の正社員転換に適用)
「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員への転換が必要となります。

現在の定義:同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
改正後の定義: 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者 ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る

●非正規雇用労働者定義の変更
「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている非正規雇用労働者の正社員転換が必要となります。

現在の定義:6ヵ月以上雇用している有期または無期雇用労働者
改正後の定義:賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6ヵ月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者

なお、「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」の助成金額は以下の通りです。詳細については、労働局やハローワーク、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構等のホームページ等で確認してください。
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)支給額

出典:厚生労働省/キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内

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